第120話『大仙高校訪問記・2』
せやさかい・120
『大仙高校訪問記・2』
大仙高校の旧館は中世のお城みたい。
屋上の縁は凸凸凸凸凸凸凸凸凸凸という感じで、凸五つ分ごとにモンスターの彫刻が載ってる。
三本足のカラス(八咫烏というらしい)やら羽根のある馬(天の斑駒(アメノフチコマ))やらワニやら兎やら。どれも古事記とかの神話に出てくるものらしい。
要所要所に彫刻とかレリーフとか、そのいずれも神話に出てくるキャラで、校名でも分かる通り仁徳天皇陵の側にある学校やいう意識が高い造りになってる。
日本銀行かというような入り口から入ると右側が階段。外側は重厚な作りだったけど、内部は、何度も手を加えれら、電気やら水道のパイプが剥き出しで這っている。階段を上がると鋲の付いた観音開きのドアで、開けると二階三階をぶち抜いたホール。
写真でしか見たことないけど、中之島の公会堂を思わせる重厚でクラシックな講堂。
『大阪府立大仙高校創立百周年記念交流会』の看板が舞台に掛けてある。
堺市内の中学校の代表がそろってて、うちら安泰中学と、もう一つ中学が来て始まった。
大仙高校からは生徒会と各学年から三十人くらいが出てて、みんなの視線が露骨にではないけど頼子さんに集まってる。
こいう式典にはありがちの挨拶が続いて、これは退屈かと思ったら、旧制中学のころからの制服のファッションショー。うちらは今の制服しか知らんけど、戦後だけでも四回モデルチェンジをやってる。
驚いたことに体操服や、体育祭のハッピとか盆踊りの浴衣まで出してる。
「やあ、ブルマ~(*ノωノ)」
留美ちゃんが恥ずかしがりながらもしっかり見てるのはおかしかった。さすがに水着は等身大のイラストにしてたけど、ビジュアルで見せようて面白がろうという姿勢は高校生やと感心した。
いちばん感心したのは、制服のシャツ。
大仙高校の生徒は、カッターシャツやらブラウスをぜったい外に出せへん。その秘密が分かった!
「じつは、こうなっています」
MCの指示で男女の生徒がシャツとブラウスを外に出して後ろを向いた。
アハハハハハハハ!
会場が笑いに包まれる。
なんとシャツの後ろ、ズボンやスカートの中に入る部分に大きく学校名と持ち主の名前が新聞の見出しかいうくらいの大きさでプリントしてある。
「な~るほど、笑っちゃうけどアイデアねえ!」
頼子さんが目を輝かせる。
これなら、恥ずかしくて外には出せない。同じ形の市販品を買っても裾を出したら制服のシャツでないことが丸わかりになる。
「では、最後にみなさんの感想などをうかがいたいのですが、全員に聞いていると時間がありませんので、くじ引きで決めたいと思います」
アシスタントが出してきたのは、ベニヤ板一枚分くらいのスマートボール台のようなもの。
「上から、小さな球を落として、その球の数が多い学校にお聞きしたいと思います。こんな具合ですねえ」
MCが落とすと、球はあちこちの釘にあたって、下にある中学校のポケットに入る仕組みになっているのが分かった。
「それでは、各学校十個ずつ球を持ってもらってやりたいと思います。それでは代表の方舞台に上がってください」
こういうゲームめいたものは、みんな好きや。
ジャンケンで安泰中学は留美ちゃんになった。人前に出ることは苦手留美ちゃんだけど、球を落とすだけなら簡単なものだ。真っ赤になりながら任務を果たす。
全員が終わって、いよいよ開票。ブラバンのドラムロールで雰囲気が盛り上がる。
「はい、総得票数五十三で、安泰中学お願いいたします!」
ファンファーレが鳴らして、合理的に急かせられる。
「わたしが行くわ」
頼子さんが立ち上がって会場の注目が集まった。
ご丁寧に照射されたピンスポットライトに照らされて、頼子さんはお姫さまみたい……って、王女様なんだけど。
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