外法の村 三 王都リンデルシア

 白城市と王都を結ぶ中央街道は、全道が石畳で舗装された王国で最も整備が進んだ主要道であり、往来する人の数も多い。


 さすがにこの道をオオカミたちに牽かせた牛車で通るのは騒ぎになりそうだった。

 オオカミたちには街道を外れて王都に向かうよう指示を出し、ユニとゴーマは乗合馬車で向かうことにした。


 ライガだけはついてきたがったが、馬が怯えるので却下となった。

 仕方なく彼も群れとともに街道を外れて並走することになった。

 王都までは馬車で一日の距離である。


「それにしてもアリストアの名前をそんなに簡単に出してよかったのか?」

 馬車の中でゴーマはユニに語りかける。昨夜の出来事は、すでに朝のうちに彼に話してある。


「そうでもしないとあいつら絶対に何かしでかすもの。

 自分たちの体面を守るためにはなりり構わない連中だから」

「それはそうだがな。

 それにしても、なんであそこまで腐っちまったんだろうなぁ……」


 周囲をはばかって二人とも神聖統一教の名前は出さない。

 宗教問題に首を突っ込むのは愚か者のすることだ。それはこの国の者にとって常識である。


「なんにせよ、あいつに会ったらちゃんと説明しとけよ」

「わかってるわ。

 もっとも、朝一番で報告書を送っておいたから、問題はないと思うけど」


 郵便馬車は多頭だての専用馬車で、旅客馬車の半分、およそ半日で王都に到着する。

 王都と四古都間の郵便事情は恵まれている。同じ距離でも辺境なら三、四日かかるだろう。


 二人はそこで会話を打ち切った。石畳を走る馬車の中は騒音が酷くてこれ以上話を続ける気にはならなかったのだ。

 ユニはほかにすることもないので、ぼんやりと窓の外の景色を眺めていた。


 木々の間から、遠くの岡を駆け抜けていくオオカミたちの影がちらちらと見えた。

「あんたは楽でいいわね」

 ユニは隣で寝ているゴーマの腹をあたりをつつく。

 彼のコートがそこだけが膨らんでいて、エルルが潜り込んでいると見たのだ。


 案の定、つつかれた膨らみはするりと肩の方へ移動し、コートの襟から蜥蜴の頭がひょっこり出てきた。

「あら、怒ってるの? ごめんね」

 ユニが謝ると、エルルはまたコートの中に姿を隠した。


 隣りで軽いイビキをかいている男は、あと一年もしないうちにこの世から消えてしまうのだ。

 死ぬわけじゃない、サラマンダーとして転生するのだと分かっていても、時々寂しくてたまらなくなる。


 自分だってあと十数年でライガたちの世界に行くのだ。

 ユニ・ドルイディアという人間が消え去り、一頭のオオカミになってしまうこと、それ自体はあまり嫌な気がしない。

 ライガを召喚して六年余り、オオカミの群れがだんだん家族と思えるようになってきた。


 幼いころに両親と引き離されたユニにとって、今ではヨミが本当の母親に思える。

 人間とかオオカミとかという区別が、もはやユニの中では崩壊していた。


 ライガはどうだろうか……。

 彼は父親というより、もっと別の存在……兄とか、友人とか、認めたくないが、ひょっとしたら恋人かもしれない。


 本当に自分たちは幻獣を召喚しているのだろうか。

 ユニは考える。


 ひょっとして、幻獣の方が自分たちの仲間になれそうな人間を見つけてやってくるのではないだろうか。

 その人間が十分に幻獣と同化できるまでこの世で寄り添い、準備が整ったと判断すれば連れて行く。

 最初から召喚能力などというものは関係ないのではないか、そんな気がしてならなかった。


 ふと気がつくと、馬車の乗客が降り支度でざわついている。いつの間にか眠ってしまったようだった。

 王都を囲む白亜の大城壁が眼前に迫り、目的地に到着しようとしていることがわかった。


 城門で警備兵に身分証とともに軍からの召喚状を提示し、参謀本部へ到着したことを連絡するように頼む。

 すでに軍の方から宿の指定がしてあるらしく、若い兵士が案内をしてくれることになっていた。


 ライガは中に入ることを許可され、驚いたことにほかのオオカミたちには、場外の柵に囲まれた広い宿営場(馬を調教するための馬場をあけてくれたらしい)が用意されていて、彼らの食事まで準備されていた。


 王都はさすがに賑わっている。

 ちょうど夕方の買い物時ということもあって、食料を売る屋台が広い道の両側で盛んに客を呼び込んでいる。


 案内の兵士は馴れているのか、雑踏の中をすいすいと進んでいく。

 ユニとゴーマは人にぶつかりながら、苦労してその後を追いかける。


 宿は石造りの大きな建物だった。

 中へ入ると従業員たちが一斉に笑顔で振り返り、歓迎の挨拶をしようとして、そしてその言葉を飲み込んだ。何人かは明らかに眉をひそめた。

 だが案内の兵士がフロントで何やら伝えると、受付係の男が満面の笑みをたたえ、必要以上の大声で「いらっしゃいませ!」と声を張り上げる。


 その声が合図になったようで、ほかの従業員たちも最初の笑顔を取り戻し、かいがいしく二人の世話をやく。

「あたしたち、場違いだったのかしら?」

 小声でユニが囁くと、ゴーマもうなずく。

「多分、ここは軍のお偉いさんが使う常宿なんじゃないのか?」

「だよねー。でも待遇が良すぎるのって、なんかヤバくない?」

「だな……。嫌な予感しかしないわな」


 部屋もそれほど広くはないが、調度品はいかにも上等そうで、ベッドもふかふかだった。

 荷物を置いてライガの様子を見にうまやへ行くと、彼はちょうど牛の骨付き肉の塊にかぶりついているところだった。


 ワラも乾いた新品で申し分ないと、ライガは上機嫌だった。

 これがせいの二級召喚士に対する扱いなのか?

 冗談じゃない、軍は自分たちに何をやらせようとしているのだろう。

 その内容はまったく見当がつかないが、ろくでもないことなのは間違いないだろう。


 ユニはこれまで経験したことがないくらい柔らかいベッドに身を投げてうめいた。

 体が半分以上ベッドの中に沈み込んでいる。きっとうつ伏せで寝てしまったら、そのまま窒息死してしまうに違いない。


 彼女は暗澹たる気分で明日起こるであろう、ありとあらゆる不幸を想像してみた。

 だが、頭の中に浮かんでくるのは、数時間前に宿が提供してくれた豪華な食事のことだった。


 彩り豊かな茹で野菜を円筒形に固めて、とろみをつけたコンソメスープをかけた前菜。

 すり潰して裏ごしした豆を使った鮮やかな緑色をしたスープ。

 脂身をていねいに取り除いた牛の赤身肉のソテーにオレンジソースをかけ、葉巻型に小さく切って甘く味付けたニンジンとポテトを添えたメインディッシュ。

 ウェハースにたっぷりの蜂蜜をかけたデザート。

 華の香りのする白ワイン。

 ぎりぎりまで塩味を抑えた上品な味付けと、絵画を思わせる美しい盛りつけ。


 まさしく貴族がこよなく愛する晩餐であった。

 もし、庶民がこんなご馳走にありつけたなら、涙を流して感激するだろう。

 だが、ユニにとっては人生最悪の食事だった。


「なんなの、なんなの、なんなの!」

 ユニは精一杯の自制を見せて小声で訴える。

「これは病人食?

 それとも塩を入れるのを忘れたのかしら?

 それにここの料理人はあたしを子どもだと思っているの?

 そうじゃなかったらこの肉の量は何かの冗談に違いないわ!」


 ゴーマは困惑して小声でいさめる。

「いや、俺もよく分からんが、これは多分〝高級料理〟って奴だぞ。

 いいからおとなしく食っとけ」

 しかしユニは納得しない。


 給仕を呼ぶと、精一杯の笑顔を顔に貼りつけて要求する。

「ごめんなさい、こちらのお宿ではビールはないのかしら?」

「いえ、ございますが。

 失礼しました。

 グラスが空いてございますね。

 すぐにお注ぎいたします」


「いえ、ワインは結構よ。

 私はビールが欲しいと言っているの」

 給仕の口元がひくひくと痙攣している。

 こっそりユニの服を引っ張って「おい、やめとけ」と囁くゴーマを無視してユニは追撃する。


「じゃあ、ビールを一杯お願いね。

 あ、それと〝塩〟を持ってきてくださる?」

「塩……でございますか?」

 給仕の全身がぷるぷると細かく震えている。

 ユニがそれ以上何も言わないでいると、給仕は黙って頭を下げ、厨房に引っ込んでいく。


 王都一番のサービスを誇りとする給仕は、すぐに塩の小瓶と細身の上品なグラスに注がれたビールを運んでくる。

 ユニが満面の笑顔でうなずくと、給仕はうやうやしくお辞儀をして去っていく。その背中には屈辱と怒りが滲み出ていた。


「嫌な女だなー、お前」

 ゴーマは呆れた顔でユニを見ている。

 ユニは付け合わせのポテトにたっぷりと塩をかけて口に放り込む。

 まったく、野菜を砂糖煮にするなんて、どこのバカが考えついたんだろう。


 続いてビールを一気に喉へ流し込む。上品なグラスは一瞬で空になった。

 それは昨夜、白城市で飲んだものと同じくペールエールではあったが、苦味の少ない香りを重視した種類のようだった。


 ビールを飲み干したユニは、がっくりと首を落とす。

 そのままピクリとも動かない。

「お、おい、どうした?」

 ゴーマが慌ててユニの肩を揺する。

 するとユニは、がばっと顔を上げた。その目には涙が滲んでいた。

「このビール……常温だわ」


      *       *


 ユニが高級宿屋で不作法の限りを尽くしていたのと同じ頃、参謀本部のアリストアの執務室をノックする者がいた。


「入りたまえ」

 アリストアは手にした書類の束から目を離さずに答える。

「失礼します」

 落ち着いたアルトの声が響き、マホガニーの分厚い扉を開けて女性が入ってきた。


「ん? 君か。とっくに勤務時間は終わっているはずだが、まだ帰らないのかね?」

「はい。少し書類の整理をしておりました」

 女性はアリストアの秘書官であるロゼッタ中尉だった。


 年齢は三十歳を少し超えたくらいだろうか。

 金色の髪をきちっと結い上げ、銀縁の眼鏡、はっきりした目鼻立ちに赤い唇。しっかりと化粧はしているが濃すぎることはない。

 背筋をきちんと伸ばし、身にまとうのはオリーブ色の女性用士官服。下はズボンではなく膝丈のタイトスカートを選択している。

 百科事典に「女性秘書」という項目があるのなら、是非とも挿絵として採用したいと思わせる姿だった。


「ガリウス祭司様が面会を求めておられます。火急の要件だとか」

「こんな時間にか。

 面会申請の肩書は何と?」

「神舎本庁の代表理事として」

「ならば断わるわけにはいかんか。

 よろしい。お通ししろ」


 神社本庁は神聖統一教の王国全土に広がる神舎を統べる組織である。

 名目上の総裁は王族が務めるがもちろん名誉職で、実際には五人の理事によって運営されている。


 理事は王都と四古都に一つずつある〝神宮じんぐう〟のトップである祭司が就任するのが慣例となっている。

 ガリウス祭司はその中でも序列一位、王都のリンデルシア神宮の祭司であった。


 それほど時間をおかず、ロゼッタに先導されてガリウス祭司が入ってきた。

 アリストアは礼を尽くした挨拶をかわし、応接用の椅子をすすめる。

 祭司は七十歳半ばくらいの老人で、小柄だが引き締まった体つきをしており、深いしわが刻まれた相貌に鋭い眼光が印象的だった。


「まずはこのような夜分に押しかけた無礼をお詫びしよう」

 老人はおだやかな口調で詫びを口にすると、軽く頭を下げる。

「およしください。このとおり私どもの仕事に昼夜の別はありません。

 どうかお気になさらずに。

 それで今日はどのようなご用件で?」


「実は先ほど白城市から報告がありましてな。

 昨夜、白城神宮に暴漢が押し入りまして、権祭ごんさいが負傷したとのことでした」


 権祭司とは祭司の補佐役で、祭司に次ぐ地位のことだ。

「それはいけませんな。

 それで暴漢は逮捕されたのですか」

「それが本来なら白城市の警衛隊に通報して処理すべき案件なのですが……」


 アリストアは「それで?」という顔で先を促す。

「その暴漢が、自らを二級召喚士ユニ・ドルイティアと名乗ったそうなのです。

 しかもアリストア殿の名を出した上に、軍の公務中だとも言ったとか。

 二級召喚士ごときの戯言たわごとをまともに受け取ることもないでしょうが、アリストア殿に迷惑がかかってはいけない。

 ……と、まぁそういうことで本庁に報告が入ったものですから、念のため確認しようと参ったわけです」


 老人はアリストアの反応を何一つ見逃さないといった視線を送っている。

「なるほど。

 して、なぜその召喚士は神宮に押し入り、暴行を働いたのですかな?」

「報告では、同日神宮でお祓いを受けていた少女が赤不浄の穢れを持ち込んだそうです。

 権祭司が別室で清めの儀式を行っていたところ、突然かの召喚士が押し入り、権祭司に暴行を加えたうえ少女を拉致したということですな。

 拉致された少女は自力で親元へ帰ったようで、まぁそれは不幸中の幸いと言うべきでしょうか」


「そうでしたか。

 いや、実は偶然にも私の方にも先ほど報告がありまして」

 アリストアは先ほどまで読んでいた書類を応接のテーブルに置くと、秘書官に声をかける。

「ロゼッタ、先ほどの品を持ってきてくれたまえ」

 秘書官は「かしこまりました」と応じると、軽くお辞儀をして部屋を退出する。


「これは二級召喚士ユニ・ドルイティアからの報告書です。

 それによると、昨夜神宮の近くを通りかかった時に少女の悲鳴を耳にした。

 何事かと思い駆けつけると、僧侶が少女に性的暴行を加えようとしているところだった。

 そのため少女を救出し、親元へ送り届けたということです。

 権祭司様への暴行については触れておりませんな」


 ガリウス祭司は愉快そうに笑う。

「ほほほ、聖職者、しかも高僧である権祭司が少女に性的な暴行ですと?

 そのようなこと、信じられるとお思いですかな」

「まったくです。

 ただ、この召喚士の報告書にはいろいろと添えられたものがありまして」


 アリストアは書類を留めているクリップを外し、一枚の書類を横に並べる。

「これが被害にあったという少女を治療した医師の診断書です。

 性的暴行は未遂ですが、かなりの暴力を受けたようですね」


 さらに一枚の書類をその上に重ねる。

「これは当該少女の両親の供述書ですな。

 むろん署名もあります。

 それによれば、事件発生の数時間前に神宮を訪ねて娘の安否を聞いたところ『少女は帰った』と言われたそうです」


 老人は表情を変えないものの、無言であった。

 そこにロゼッタが大きな箱と小さな箱の二つを抱えて戻ってきた。

 アリストアはテーブルの上の書類を脇に寄せ、箱を置いて大きい方のふたを取る。

 中にはボロボロに破られた子ども用のワンピースが入っていた。


「これは当日少女が着ていた衣類です。

 二級召喚士は仕事にそつがないですな。これも両親の保証付きです。

 ユニの報告書では、黄色い法服の繊維が付着しているはずだから詳しく鑑定するようにとあります。

 もちろん、聖職者がそのような不埒なことをするはずはありませんから、私の一存で鑑定はさせておりません」


 ふたを閉めると、今度は小さい方の箱のふたを取る。

 中には輪になった紐に不規則に破れた布が申し訳程度にぶら下がっている。一見してもこれが何なのか、さっぱりわかない。


「これは……。

 ああ、当該少女がその日にはいていた下着のようですな。

 あー、これも両親の……」


「もうよい!」

 不機嫌そうに老人が遮る。

「ふむ、その召喚士殿はおそらく清めの儀式を誤解をしたのではないかな。

 まぁ、結果として娘ごは親元に帰ったのだ。

 これは特に騒ぎ立てるほどのことはないかもしれませんの」


「ほう、権祭司様のお怪我はいかがなされますか?」

 ガリウス祭司は、いかにも今ふと思い出したかのように言葉をつなぐ。

「そうそう、あの者は先日六十歳を超したはずじゃ。

 もう足腰が弱ってくる年齢だというのに太り過ぎておる。

 あれではうっかり転びでもしたら骨を折りかねんと、わしは心配しておったのだ」


「左様でしたか」

「そうじゃな、怪我が治ったら辺境の神舎にでも廻してやるか。

 田舎で働いて汗でもかけば、少しは痩せるかもしれんだろう」

 そう言って老人はにやりと笑う。


「それはこちらも助かります。

 では今回の件は大した騒ぎではなかったということで……」

「そうなろうの」

「ですが、私どもとしても国家資格の召喚士が報告書を上げてきている以上、何も調べないというわけにもいきませんで……」


 祭司のしわの刻まれた顔で眉がぴくりと動く。

「……と、申されますと?」

「なに、事件に関わっているのは当該召喚士のほか、少女と両親、それに宿の者と医師、そんなところです。

 神舎の方は我々の出る幕ではありませんから、これらの者からは一応話を聞かないと……」


「それで?」

「事件といえるほどのものではありませんが、得てしてこうした騒ぎの後には、根も葉もない噂が流れたりするものです。

 神聖な神舎を愚弄するような噂が立った場合、関係者の誰かが犯人ということになりますからね。

 〝くれぐれも注意するように〟と釘を刺しておけばよろしいでしょう」


「ごもっともですな。

 いや、さすがは参謀本部にその人ありと言われるアリストア殿だ。

 実にそつがない」

「恐れ入ります」


 ガリウス祭司は腰を上げ、夜分の訪問を再度詫びるとアリストアと握手を交わす。

「これは一つ借りができてしまったようじゃの」

「お気になさらず。お互いさまです。

 いつか私の方からお願いごとを持ち込むこともあるかもしれませんから。

 いずれ軍としては神舎本庁とはよい関係を続けていきたいと思っております」

「まことにそのとおりじゃ」


 老人がアリストスの執務室を辞すと、すぐにロゼッタが茶器やテーブルの上のものを片付け始める。


「すまないねロゼッタ。思わぬ残業をさせてしまった」

「かまいませんのよ。

 それにしても……」


 彼女はテーブルの上に広げられていた女児用のパンツ(の残骸)を二本の指でつまみ上げると、美しい眉をひそめた。

「これはやりすぎではありませんか?」


「確かにデリカシーには欠けることは認めるがね。

 相手がこちらに貸しの一つでも作ろうと目論んできたんじゃ仕方あるまい?

 結果は逆になったがね」

 アリストアは肩をすくめる。


 ロゼッタがつまんでいる腰ひもの結び目には、小さなリボンが縫い付けられていて哀れをさそう。

 申し訳程度に残っている布切れには、濃い黄色に染められた細かな繊維くずがあちこちに付着していた。

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