第550話 魔王とは
ケビンの頑張りによって寝ることなく朝を迎えた3人は、気怠い体を起こしながら朝の挨拶をケビンにすると、ケビンはやった者のアフターケアとして3人を魔法で綺麗にしたり回復魔法をかけていく。
それにより普通に動けるようになった3人は身なりを整えていき、リベアとオリビアは朝食の準備を、オフェリアはケビンと一緒に朝食ができるのをテーブルにて待っていた。
「ご主人様、今日はどうされるのですか?」
「んー……この街を散策しようかな。魔族領のお店で何が売ってるのかも気になるし……」
ケビンがそのように今日の行動方針を立てていると、朝だと言うのに玄関のドアをノックする音が聞こえてくる。
「あら、朝早くからどなたかしら?」
それに反応したこの家の主であるリベアが応対するために、食事を中断し歩いていくと玄関のドアを開いて来訪者と喋り合っていたのだが、テーブルについているケビンの方を振り向いたら口を開いて手招きをする。
「ケビンさん、ちょっといいかしら?」
人族である自分がいることで何か問題でもあったのだろうかと、不安に駆られながらもケビンがリベアの所まで行くと、外にいた来訪者のサキュバスが目に入る。そのサキュバスはその辺にいるサキュバスとは違い、軽鎧に身を包んでいてしっかりとした出で立ちをしていた。
「そなたが昨日訪れた旅の者か?」
「はい。やはり人族なので街に入ってはいけなかったのでしょうか? もしそうなら申し訳ありません。なにぶん、ここへ訪れたのは昨日が初めてでして、この街のルールとかを知らなかったのです。リベアさんは私をただ泊めただけですので、リベアさんが受ける罰などは私が全て受けます」
ケビンがリベアに迷惑がかからないようにそう言うと、来訪者のサキュバスは厳しい顔つきから一変、柔らかい表情になるとケビンの言動を褒めたたえる。
「人族と聞いて警戒していたが、貴方は奴隷狩りをするような無作法者とは違うようだな。よもやサキュバスをかばう人族がいるとは、中々にできた御仁のようだ。ちなみに私がここへ来たのは別にリベア殿を罰しようとして来たのではなく、主が貴方との面会を希望しているのでそれを伝えに来ただけだ」
「面会……?」
「ああ、この街を治めているサキュバスの女王であるリリス様だ」
「じょ、女王様?!」
「まあ、そう構える必要はない。女王と言えど人族で言うところの1国の主というわけではないのだ。サキュバスの代表者という意味合いで受け取って欲しい。種族によって代表者の肩書きは変わるのでな」
「サキュバスの肩書きは女王と?」
「そういうことだ。仮に族長という肩書きだと、インキュバスの方も同じ淫魔族だからややこしいことになるのだ。だからサキュバスの代表者を務める者の肩書きはサキュバスクイーンということになる。サキュバスに男は当然のことながら存在しないからな」
「ほぉ……これは新しい発見です。サキュバスクイーンの由来がそうだとは知りませんでした。確かに族長を名乗ってしまうと、2種族の代表者みたいになってしまいますね」
「理解が早くて助かる。それで今から面会するためについてきて欲しいのだが……」
「あ、あの……朝食中なので食べる時間をいただけたりとかは……?」
「それくらいなら構わない。こちらも早くから出向いた無礼もあるしな。私はここで待っておくのでゆっくりと朝食を摂ってくれ」
「ありがとうございます」
それからケビンはただ待たせるだけでは悪いと思い、【無限収納】の中から簡易テーブルとイスを取り出し玄関先に配置して、次にティーセットを出したら来訪者に対して振る舞う。
「お待ちの間、こちらをどうぞ」
「すまない、いらぬ気を使わせてしまったようだ」
そしてその間にリベアと家の中へ戻っては朝食を再開していき、今日の予定が変わったことをオリビアに伝えていく。
「リリス様に会うなんて大丈夫でしょうか? もしや罰などが……」
「大丈夫だろ。迎えに来た人は特に何かを罰しようとはしてなかったから、ただ単に珍しいから会ってみたいとかそういうのじゃないか?」
「心配しなくても大丈夫よ。リリス様はお優しい方だからケビンさんを罰するために呼ぶわけじゃないと思うわよ。罰するのだったら有無を言わさず連行されているでしょうから」
ケビンがリリスに召還されるという話を聞いたオリビアは、サキュバスの女王に会うということで心配が後を絶たないが、楽観主義のケビンと長年リリスの下で暮らしてきたリベアによって諭されてしまうのだった。
そして、それから朝食を食べ終わったケビンが身支度を整え終わると、外で待たせていたサキュバスの元に向かいリリスの待つ家へと出発したのだが、その道中にケビンがキョロキョロとおのぼりさんになっていたら、案内役のサキュバスからクスリと笑われてしまう。
「珍しいのか?」
「す、すみません。魔族領の街に来たのは初めてでして……」
「人族の街からしてみれば大して発展もしていない街だ」
「たとえそうだとしても、初めて来た場所というものは心躍るものがありまして……」
そのようなことがありつつもやがて辿りついた場所はさすが代表者の家だけあって、他のサキュバスたちが暮らしている家とは一線を画しており、言うなれば一般民家と貴族屋敷くらいの違いがあった。
「凄い……」
ケビンがぽつりと呟いた言葉に反応したサキュバスは「代表者の家だから」と言って、そのままケビンを屋敷の中へと案内する。そして通された応接室らしき部屋でケビンが待たされていると、少ししてからリリスがその部屋に入室してきた。
その姿はサキュバスの女王だけあってか全く非の打ち所がないグラマラスボディをしており、接客のためなのかどうかはわからないが派手さを感じさせないドレスを着ていて、一般的なサキュバスのように男を誘う服装をしているわけではないのに、ケビンはリリスから目が離せずにしばらく呆けてしまっていた。
「……」
「そのように夢中になって見られてはドキドキしてしまいますわ」
そのリリスからの言葉でハッと我に返ったケビンは、慌てて不躾な視線を向けてしまっていたことを謝罪する。
「す、すみません! この世のものとは思えないほどにお綺麗なので、つい見蕩れてしまいました」
ケビンのそのような言葉にリリスはクスクスと上品に笑い、ソファに腰を下ろすと自己紹介を始め出した。
「もうお聞きかと思いますが、サキュバスを纏めているサキュバスクイーンのリリスと申します」
「私は冒険者をしているケビンと申します。この度はお招きいただきありがとうございます」
「ケビンさんはどのような理由でこの地に?」
そう尋ねるリリスからの質問に対して、ケビンは妻であるオリビアの里帰りをするために訪問したことを打ち明ける。
「サキュバスを妻にしたのですか?」
「はい」
そしてケビンはリベアに迷惑がかからないように、今回の里帰りとなるきっかけを打ち明けていき、リリスの心象が悪くならないよう言葉を綴っていく。
「そうですか……この地が不穏になったために心配して里帰りを……」
「ええ、これはまだリベアさんに伝えていないのですが、もし可能であるのなら私の家に連れて帰りたいと思いまして……戦争に巻き込まれでもしたらオリビアが悲しむので」
そう言うケビンはこの地を目指している勇者のことは関与を疑われないために話題には出さず、あくまでも戦争が起こるためにリベアを保護しに来たことを主張していた。
「戦争……まだ魔王たちが進軍を始めたとはお聞きしていませんが、それも時間の問題でしょう」
「人伝に聞いていましたが、やはり魔王は1人ではないのですね」
「ええ、このようなことは過去にもありませんでした。今までは確かに魔王を名乗る者たちがいたのですが、その魔王たちがお互いに戦い合って1人の魔皇を決めるというのが習わしだったのですけれど、今回はあまりの数に戦い合うどころか人族の領土へ侵攻しようという意思の方が強く、手を組む魔王たちが出始めてしまったのです」
「魔王じゃなくて魔皇ですか?」
新しい単語を聞いたケビンからの問いかけに対して、リリスは魔族たちの暗黙の了解となる風習を語っていくのだった。
それによると、魔王は別に1人きりだけというわけではなく複数人存在しており、人族たちの言う魔王に当たるのは血気盛んな戦い好きの魔王であり、その魔王が人族の領土へ侵攻していくようである。
そして支配欲の高い魔王同士で戦い、どちらがより強いのか優劣を決めては最後まで勝ち続けた魔王が魔皇を名乗ることになっていると言う。それとは別で特に支配欲が強いわけでもなく血気盛んでもない魔王は、火の粉が降りかからない限りは傍観を決め込んでいて、自ら治める領地を守っているだけなのだとか。
「魔王も色々な人がいるんですね」
「ええ、保守的な魔王の中には古参の魔王もいて、その実力は未知数となっていますわ。その魔王が戦っている姿を誰も見たことがないとか」
「見たことがない?」
「血気盛んな魔王は倒されたりして入れ替わりが激しいですから、保守的な魔王ほど長生きではないのです。ゆえに戦っている姿を見た者がいないのです。たまに無知な魔王が挑んだりもしましたけど、その魔王の所に辿りつく前に部下によって倒されたという情報も耳に入れたことがあります」
「部下が既に魔王並……」
「ところでケビンさんは人族の身でありながら、この地に怪我なく来れるということは相当お強いのでは?」
「いえ、それほどでもありません。どこにでもいるSランク冒険者です」
「ふふっ、ご謙遜を。この地に入った者が受けるブラックウルフの洗礼を終えているのでしょう?」
「ああ、あの犬っころたちですか。確かにあれなら倒していますね。大して強くもなかったですし、魔法が使える程度のフォレストウルフって感じでした」
「それを聞いて安心しましたわ」
そう言うリリスの瞳の色が急に変わり妖しく光ると、ケビンは何が起きたのかわからずに呆然としてしまう。そして呆然としているケビンを見たリリスは、術がかかったと勘違いをしてしまうのだった。
「はぁぁ……慣れない口調を使ったせいか肩が凝るわ。エイシェ、アグラ、ナーマ」
砕けた口調に変わったリリスが人の名を口にしたら、室内にケビンを案内してきた者の他に2人のサキュバスが姿を現す。
「堕ちたようですね」
「久しぶりの食事~♪」
「性豪みたいだよ」
「全く馬鹿よねぇ、晩から朝までヤリまくってたら、飢えたサキュバスの餌食になるって知らないの? しかも強烈な臭いまで漂わせて、それを朝まで嗅がされてしまうこっちの身にもなれっての」
リリスが頼んでもいないのに白状したおかげで、呆然としているケビンはあらかたの事情を把握してしまった。要するにケビンが朝までハッスルしたせいで欲求不満なサキュバスたちが欲情し、何かしらの術をかけるためにサキュバスクイーンの元に通されたということだ。
「今回の人族は特上ね。死なせないように搾りすぎには注意しないと。あとは健康管理よ」
「冒険者を名乗っているので魔物の肉でも食べるでしょう」
「野菜はどうする? 腐ってても食べるかな?」
「近場の集落から取り寄せないといけないね」
「ふふっ……まさかこんな時期にペットが手に入るなんて」
「これで戦争時には他の魔族の相手をしなくて済みますね」
「あいつら臭いんだよねーオエッてなる」
「ハズレの魔族なんて他の連中に相手をさせればいいのよ」
そのような時にリリスがおもむろに立ち上がり、ケビンに向けて足を見せつける。
「さあ、ケビン。私の足に忠誠の口づけをしなさい」
「リリス様ってそれ好きですよね……」
「ドSだよねー」
「あの人、今日からイスにされるよ」
エイシェたちがそう呟く中でリリスはその時を今か今かと待ち続けていたが、当然のことながらケビンが動くことはなかった。不審に思ったリリスが再度同じことを口にするが、それでもケビンは動かない。
「ど、どういうこと?! チャームに抗っているとでも言うの!?」
「え……魅了をかけてたの?」
自身に対して魅了をかけられていたと初めて知ったケビンがそう口にすると、今までにない出来事のせいかこの場が沈黙に包まれる。それもそのはず、リリスからしてみれば魅了した相手が、なんてことのないようにして聞き返してきたのだ。それは他の3人にしても同様であり、全く状況についていけていない。
「リ、リリス様! 再度チャームを!」
エイシェが咄嗟に口にしたことでリリスがハッとして瞳の色が変わり妖しく光りを発すると、ケビンに対して再度チャームをかけるのだったが、ケビンはただそれを眺めているだけである。
「それがチャームっていう魔法? それともスキル?」
全く動じていないケビンの問いかけに対して、リリスや他の3人は愕然としてしまう。
「……そ、そんな……チャームが効いてない……あ、ありえないわ! 私は色欲の魔王であるサキュバスクイーンなのよ!?」
「へぇーリリスは色欲の魔王なのか。まぁ、ありきたりと言えばありきたりだけど、今回は相手が悪かったな」
「相手……? たかが冒険者が魔王の力に抗えるとでも言うの!?」
「残念ながら俺はただの冒険者じゃない。色欲の魔王なら俺も持ってる」
「「「「――ッ!」」」」
「早い話が俺も魔王ってことだ。全くもって不本意だが、認知されてしまった以上は仕方がない」
「ありえないわ! 人族が魔王になるなんて!」
「それな、魔族が目の敵にしているフィリア教団がいるだろ? あいつらが俺を邪魔者扱いして魔王認定したのさ。そこから俺は人族の身でありながら魔王と呼ばれているぞ」
ケビンから告げられた内容によりリリスたちはわけがわからなくなる。その理由としてあるのが、人族と言えば徒党を組んで魔王に対抗するのが古くからの歴史であるからだ。その人族が同じ人族を魔王呼ばわりして争うなど聞いたこともない上に、そもそも魔王呼ばわりされた人族がそれを享受しているのが信じられない。
「なぜサキュバスやインキュバスでもない俺が色欲の魔王になっているのかは、俺をペット扱いしようとしたその身でもってわからせてやろう」
ケビンがゆらりと立ち上がるその行動を見て危機感を感じたエイシェが、主であるリリスを護衛しようとすぐさま動き出そうとしたが、動かそうとした体が全く動かなかった。
「なっ、体がっ!?」
「凄いだろ? 魅了されたわけじゃないのに体が動かせない感覚はどんな感じだ?」
ケビンから告げられた内容により、リリスを守ろうとしたエイシェのみならず、リリス本人やアグラとナーマまで体が動かせないことに気づいてしまい、この地まで難なく来ることができる冒険者に対して無防備な姿を晒していることで、リリスたちの緊張感は最高潮に達してしまう。
そのような中でケビンがリリスにお仕置きを終えると、今度は残るサキュバス3人にもお仕置きを実行していく。
そしてまたリリスにお仕置きを再開させると、ケビンはリリスにあることを尋ねてみた。
「子供って産んだことがあるのか?」
「ないわよ! この私に見合うだけのインキュバスがいないのよ!」
「……そうか、それなら俺の子供を産め」
「はっ、馬鹿じゃないの? 人族ごときが魔族の、しかもサキュバスクイーンである私を孕ませることができるわけないじゃない。次代のサキュバスを産むにはインキュバスが相手じゃなきゃできないのよ。こんなの常識よ、常識」
「……それなら賭けるか? もし、俺がリリスを孕ませたら俺の勝ちで、リリスを俺の嫁にする。俺が負けたら俺はリリスのペットになる」
「ぷっ……ははははは! 貴方、正気? 本当に人族が魔族を孕ませられると思ってるの?」
「なんだ? サキュバスクイーンの魔王たるリリスは負けるのが怖いのか?」
「くっ……その賭け、乗ったわ! 期限は今日中。高位のサキュバスはその特性上、自身で妊娠をコントロールできる。つまり私は受け入れ可能状態になるってことよ。これで妊娠したら貴方の勝ち、しなかったら私の勝ちよ」
「1回じゃなくて今日中? そんなに俺とのエッチが好きになったのか?」
「ち、違うわよ! 回数をこなせば可能性の欠片くらいは得られるっていう私からのハンデよ!」
「ハンデねぇ……」
「ほんっっっとに、偉そうなやつね! 貴方なんか負かしてペットにしてやるわ!」
(ふふっ……誰が素直に賭けなんかするもんか。私は常に受け入れ拒否なのよ! 負けて吠え面をかけばいいわ!)
そう心の内で画策するリリスではあったものの、目の前にいるのは強制妊娠というチート持ちの性欲魔神である。どのような裏工作をしようとも、賭けに乗った時点でリリスの負けは確定していたのだった。
そして勝負が始まってしまうと、早くもリリスは動けなくなりケビンから好き勝手に攻められてしまい、ケビンはしれっと無詠唱でリリスに懐妊魔法をかけて強制妊娠させようとすると、リリスはリリスで体に起きた変化に気づき始める。
「え……うそ……やだ、ちょ、ちょっと待って! うそうそっ?! 待って、何でいま排卵しているの?!」
「いきなりどうしたんだ? 人族じゃ魔族を孕ませられないんだろ? そんなに焦ることか?」
「それは人族の種が奥まで到達できずに死滅するからよ! 何で貴方の種は奥まで泳いで行ってるのよ?!」
「ほぉーそれは見ものだな。よし、久しぶりに生中継するか」
そう言うケビンは確信犯であるものの素知らぬ顔をしながらモニターを出して、久しぶりの受精中継を眺めることにした。そしてそれはリリスや回復した他の3人も見てしまい、今から起こってしまう出来事に目が釘付けとなってしまう。
それからこの場にいる5人が5人ともモニターを見ていると、やがてその時が訪れた。
「ゴール!」
「……う……そ……」
「え……リリス様が妊娠……」
「人族の種で……」
「ありえない……」
あまりの出来事にサキュバス4人が呆然としていると、ケビンは跨ったままのリリスに声をかけた。
「リリス、これで賭けは俺の勝ちだな。今からリリスは俺の嫁だ」
「え……賭け……?」
「ああ、賭けただろ? お互いの一生を。俺の勝ちだからリリスの一生は俺のものだ」
そう言うケビンは指輪を創り出すとリリスの指に嵌めて、呆けたままのリリスに口づけをする。
「ん……」
「リリスはサキュバスクイーンで更には魔王だから正妻だな」
「嫁……正妻……私が……?」
「元気な子を産んでくれよ」
そしてそれからケビンはオリビアに明日帰ることを通信で知らせると、全てを聞かずともオリビアはケビンがサキュバスクイーンを堕としたのだと確信してしまい、そこから更にオリビアによる嫁ネットワーク配信で、他の嫁たちにもそのことが瞬く間に広まってしまうのだった。
そのようなことが起きているとも知らずに、ケビンはリリスや3人を連れてリリスの寝室に向かうと、そこからまたサキュバスの饗宴を楽しみ始めていく。
「この際だからエイシェたちにも子供を産んでもらうか」
「「「えっ?!」」」
まさか自分たちにも矛先が向くとは思ってもいなかったエイシェたちは、ケビンの宣言により人族に孕まされてしまうのだと思うと、色々な思考が頭をぐちゃぐちゃにかき混ぜてしまう。
「初めての子が人族……」
「ど、どうやって育てるの?!」
「人族に知り合いなんていないよ!」
インキュバスではない相手から孕まされると、その相手の種族を産むことになるサキュバスの常識は3人を混乱させていき、奇しくも呆然としていたリリスまでも正気に戻って混乱し始めると、ケビンがそうならないことを伝えていく。
「生まれる子はハーフのサキュバスだ。俺の種は特殊で相手とのハーフが基本的には生まれてくる。前例から鑑みると見た目はサキュバスと変わらないな」
「ぜ、前例ってなに……」
「サキュバスの妻がいるって教えただろ」
「え……その人との間にハーフサキュバスが生まれたの?」
「ああ、今はリベアの家にオリビアとともにいるぞ。名前はオフェリアだ」
「そんな……ありえない……サキュバスの常識が……」
「リリスは既に妊娠したから無理だけど、望むなら純血のサキュバスを孕ませることもできるぞ」
「「「「えっ?!」」」」
「貴方、人族よね? インキュバスとかじゃないわよね?!」
「ああ、正真正銘とは最近言いづらくなったけど、一応は人族だ……多分……」
それからケビンは特殊で特殊な方法と言って説明を面倒くさがると、全ては不思議なスキルのおかげという適当極まりない説明で話を終わらせ、エイシェたちは3人で相談しあった結果、主となるリリスの育児を助けるために同じハーフを希望することとなる。
「妊娠したくないとは言わないんだな」
「貴方が色欲の魔王だということが身をもってわかったので」
「色欲の魔王には抗えないよ」
「あれほどの快感はもう他の魔族じゃ味わえないよね」
「ケビン、この際だから言っておくわ」
「何だ?」
「私を嫁にするということは、サキュバスの一族全ての面倒を見るということよ。貴方にその覚悟があるの? サキュバスの性欲は並大抵のことで満足できないことくらい知っているでしょ」
「楽勝だな」
「一日中その体を提供するの? それでも全員を満足させるには時間がかかるわよ?」
「俺の特技にこういうのがある」
ケビンがそう言いながら分身体をポンっと出すと、それを見たリリスたちは唖然としてしまう。
「ふ、2人……」
「まぁ、もっと出せるけど今は俺1人で楽しみたいからな。この方法を使うのは後だ」
そう言ってケビンが分身体を消すとエイシェたちを抱いていき、望み通りにハーフの子を妊娠させていく。それが終わるとまたリリスを抱いて、結局のところ朝までコースを4人に対して初体験させてしまうのだった。
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