第510話 原因の発端
ケビンたちが話し合っている中、その内容は次第に当主を懲らしめるというものに移り変わり、何故かレメインも積極的に話に参加してきたのでケビンが尋ねたところ、『正妻を蔑ろにしすぎ』という長年の恨みがその言葉に集約されていた。
そして都合のいいことに、レメインの子供は既に成人していて別宅に住んでいるとのことで、本宅には当主とその嫁たち、そして使用人しか住んでいないという。
それからお手つきされた使用人たちを集めて協力を求めると、更に作戦会議がもの凄い内容のものへと変化していく。この時ほどケビンは、女性の恨みは根深く怖いものだということを感じずにはいられなかった。
「俺が考えてたことより酷い……」
「ふふっ、ケビンさんはお優しいですから」
ケビンとエラが寄り添って会話をしていると、そこへケビンに告白したスタシアが反対側を陣取り、ケビンの腕を絡めとって寄り添うのだった。
「ケビン様、もう少しでご当主様がお帰りになられます」
「何だかんだで結構長居してしまったな」
「今日はお泊まりになってください。レメイン様もそれを望んでいらっしゃいますし」
「レメインが?」
「ケビン様が女に戻したからですよ。視線がケビン様を追いかけていますもの」
その後、夕刻時に当主が領地視察を終えて家に帰ってくると、ケビンたちの【当主懲らしめ大作戦! ~女の恨みは怖いわよ?~】がスタートする。
そして、その当主が家に帰ってきて早々、使用人たちに対してセクハラをしながら何も知らずに食堂へと歩いていたが、この後に起こることなど予想だにしていないことだろう。
その使用人の女性たちに対してケビンは事前に、『今日まで我慢してくれ』と頭を下げたら、『いつものことなのでお気になさらないでください』と返されてしまい、女性たちは当主が帰ってきてから受けるセクハラを我慢していたが、こめかみがピクピクしていたのは隠しようのない事実である。
「戻ったぞ、食事の準備を進めろ」
食堂に入ってきた当主は何事も起きていないような感じで、自分の席に座り食事の準備を促すが、ここにはいつもはいないケビンが気配を消して既に席へと座っている。そして、作戦の第1段階が決行されるのだった。
「《ヒプノシス》」
ケビンお得意の催眠魔法で当主の瞳はトロンとしてしまう。
「俺はお前の子供の頃からの大親友だけど、年の差があり過ぎて違和感しかないが、それをお前は一切気にしないで当たり前のことだと認識しろ。そして、今日はお前が夕餉に招いたことになっている。そのあとは泊まることになるけど、それはお前が先に許可を出せ。あ、ちなみに俺の名前はケビンだ」
そして、魔法を解除するとケビンが気配を元に戻して、当主はケビンがいることに気づく。
「おお、ケビン! 今日は食事を存分に楽しんでくれ。帰るのが面倒であれば泊まっていっても問題ないからな」
「セオグナン、今日は招いてくれてありがとう。お言葉に甘えて食事を楽しませてもらうし、迷惑だろうが泊まらせてもらうことにするよ」
「構わん、構わん! 俺とお前の仲ではないか。今日は存分に楽しむぞ!」
その後は使用人たちが食事を運んできて、他愛ない会話をしながら夕食を進ませていく。その会話の内容はケビンの預かり知らぬ思い出話もあったが、そこはレメインたち3夫人のフォローによってことなきを得る。
そのようなことがありながらも食事が終わってしまうと、食後の会話となり次の段階へと作戦が進む。
ケビンはいつもの結界を張ったら、それを機に端で控えていたエラへ目配せをして、エラはセオグナンに1礼すると部屋を出て、屋敷内の使用人たちを集めるのだった。ちなみに執事たち男の使用人は事前に自室へと催眠で移動させて、今日はもう眠るようにしている。
そして、ぞろぞろと食堂に使用人たちが入ってきたので、セオグナンはわけもわからずにその理由を問いただす。
「何をしに来た? ここの仕事は数人いれば充分だろ。お前たちは他の仕事をしろ。サボることは許さん」
「いやいや、セオグナン。彼女たちがいないとこの先に進めないんだ」
「ん? ケビン、何を言っている? 意味がわからんぞ」
「今は意味がわからなくても、すぐにわかるようになる」
そう告げたケビンがおもむろに席を立つと、それに合わせてレメインも立ち上がる。
「ん? レメインどうしたのだ?」
セオグナンがレメインに問いかけるも、レメインはその言葉を無視してケビンに近寄るとしなだれかかるのだった。
「な、何をしている!? 離れろ、レメイン!」
そしてケビンとレメインの唇が重なり合う。
「ん……」
「何をしている、レメイン! やめろ、ケビン!」
今すぐやめさせようと席を立つつもりだったセオグナンは、ここにきて自分の体が動かなくなっていることに気づく。
「か、体が動かん! お前たち、食事に毒を盛ったのか!?」
慌てるセオグナンが使用人たちを睨みつけるが、いつもなら怖い当主の怒りも今となっては滑稽にしか見えない。そのような滑稽に見える当主をクスクスと嘲笑しながら、使用人たちはことの成り行きを見守るのだった。
「あなた、使用人ではなくて私を見てくださらないの?」
「レメイン、気でも狂ったのか!? みんなの前で何て格好をしているんだ!」
「ケビンくん、きて」
その光景にセオグナンは唖然として口が魚のようにパクパクとし始めているが、ケビンはお構いなしにセオグナンの前でレメインを抱いていく。
「あなたちゃんと見てる?」
「ケ、ケビン、何をしているんだ!? 俺たちは親友じゃなかったのか! これは裏切りだぞ!」
「ああ、そういえば親友っていう設定だったな。どうだ? 親友に妻を寝取られる心境は?」
「き、貴様っ、殺してやる!」
「そうか、まぁ動けたら頑張って殺しに来てくれ。俺は俺でこの状況を楽しむから」
そして、早くもレメインが気持ちよくなっていると、セオグナンにトドメの一言となることを口にするのだった。
「ケビンくん、早く私を孕ませてぇ!」
「何を言っているんだ、レメイン! やめろ、やめるんだ、ケビン!」
「あ、悪い。無理」
「レメイン……そんな……」
セオグナンが絶望やら怒りやらで百面相をしている中で、ケビンは次のお相手の所へ向かう。
「待ちくたびれましたわ、ケビンさん。早くわたくしも抱いてくださいまし」
「リ、リゼラ! お前もか!?」
セオグナンの混乱が後を絶たないうちに、ケビンはリゼラすらも抱いてしまう。
「お前、本当に変わったよな……初めて見た時はお高くとまった貴族夫人だったのに……」
「ケビンさんが私をこうしたのですわ! 責任を取ってくださいまし! ケビンさん以外ではもう満足できそうにありませんわ!」
「まぁ、そこら辺は追々考えておく」
ケビンが腰から手を離すとそのまま崩れ落ちたリゼラを他所に、次なるお相手がケビンに声をかける。
「ケビン様、次は私の番です」
「ああ」
ケビンに抱かれている間、リゼラはあえてセオグナンに聞こえるように言葉を発しては、劣等感を植え付けていく。
「ご当主様の時とは全然違います。キス、キスしてケビン様」
こうしてセオグナンの妻3人を本人の目の前で抱いたケビンは、セオグナンに中休みで声をかける。
「ちゃんと見てたか? 大親友であるお前の妻は俺の虜になったぞ?」
「貴様ぁ……絶交だ、貴様などもはや親友でも何でもない!」
「まぁ、そういきり立つなよ。まだ寝取る相手は残ってるんだから」
「――ッ!」
まだ寝取る相手が残っていると言われたセオグナンは、妻以外の相手となると思い至るのは1番のお気に入りでもあり、手を出したくても出せなかったエラに自然と視線が向かう。
その視線を感じ取ったエラは静かにケビンに近寄ると、セオグナンに見せつけるかのようにして濃厚なキスを交わすのである。
「ケビンさん、抱いてください。貴方の優しさで私を包み込んで……」
「エ、エラ!?」
「当主様、私に苦しみしか与えなかったあなたのことなんて、もうどうでもいいです。私はケビンさんの妻となりますので、もう2度とあなたのために働くことはしません」
「カトレアを学院に通わせてやっただろ! 恩を仇で返すつもりか!」
「あなたが一言、私とカトレアを守る言葉を奥様方やご子息に対してしていれば、この状況が変わっていたかもしれませんがあなたは放置した。私はこの家を出てカトレアの元へ向かいます。今までお世話になりました」
「カトレアの元へだと!? 死ぬ気なのか!?」
「ん? ああっ、そういえばエラ以外には伝えてなかったな。カトレアなら生きてるぞ。今は帝国でお腹の子を産むためにのんびりと過ごしてる」
「い、生きてるだと!?」
「そりゃ生きてるだろ。カトレアは俺の旧友だ。戦争に参加して攻めてきたけど、俺が殺すわけがない。嫁にして連れ去ったんだ」
ケビンの告げた内容にセオグナンは混乱を極めた。その理由として、セオグナンはケビンのことを子供の頃からの大親友と暗示をかけられており、当然セオグナンの頭の中では辻褄合わせのために、ケビンはセレスティア人であるという捏造情報があるからだ。
対して、それを聞いた他の者たちはカトレアが生きていることに驚きを示す。戦争後の通知で戦死と知らされていたカトレアが生きていたのだ。それを聞かされていたエラと同じ使用人たちは涙を流した。
たとえ騎士として認められたあとでも、使用人に対して不遜になることもなく同じ目線で接していたカトレアは、使用人たちにとっては心のオアシスであったのだ。
「ケビンさん、お願いします」
エラからのお願いを聞いたケビンは、セオグナンが長年欲していた家内一のグラマラスボディを堪能し始めていく。
「ケビンさん気持ちいいです。貴方の愛に包まれて私は幸せです。愛してます、これから先もずっとケビンさんを愛します」
「俺も愛してる」
「幸せ……ケビンさんに抱いて頂けて私は幸せです……」
ようやく主要な4人を抱き終わったケビンは満足していたが、それだけで終わるはずもない。
「ケビン様、私たちも抱いてください」
「えっ!? セオグナンが絶望するところを見るだけじゃなかった?」
「あのようにエラが幸せいっぱいで抱かれていると、私たちも我慢ができなくなりました。どうか私たちにも幸せを感じさせてください」
そう言ってきた女性とその他の使用人たちは、ケビンに4人と同じように抱いて欲しいと懇願すると、ケビンは急遽予定変更で始まった全女性寝取り作戦へ移行して、使用人たちを抱き始めてその体を堪能し始める。
次から次に使用人たちを抱き続けたケビンは、それが終わるとようやく作戦の最終段階へと移行した。服を着ていないので傍から見ればとてもシュールな光景ではあるが。
「どうだ? セオグナン。責任を取るでもなく、今まで好きにしてきたツケが回ってきた感想は」
「貴様は殺す! 何があっても殺してやる!」
「おいおい、大親友に対してそれはないんじゃないか? 悲しくなってくるぞ」
「どの口が大親友などとほざくか! 貴様など親友ではない! 殺すだけの敵だ!」
「ケビンくん、もううるさいからやっちゃって」
「レメイン! 貴様も裏切り者の1人か! そいつ同様に殺してくれるわ!」
「あなたが私を蔑ろにするからよ! 私という妻がありながら、取っかえ引っ変え女を抱いて……」
「年増よりも若い女を抱くのは当たり前だろ! 自分の年齢を考えろ!」
その瞬間ケビンが動いて、手加減をかなり加えた状態でセオグナンを殴り飛ばした。
「けばぶっ!」
「お前……自分の妻に対してそれはないんじゃないか? どれだけ歳をとったとしても、女性はいつまでも女性のままだ。抱けなくなるなら最初から結婚なんてするな、クズが!」
「ケビンくん……」
ケビンの思いもよらぬ行動にレメインが困惑してしまうと、ケビンはレメインの所へ行って、本人が無意識に流している涙を拭った。
「あんなクズのために涙を流すな。もったいないだろ」
「え……私……泣いて……」
「これっきりでおさらばする予定だったけど気が変わった。レメイン、俺はお前がどれだけ歳を重ねても抱きに来るぞ。こんないい体をしてるのに、抱かないあいつがおかしい」
「……私はおばさんよ? ケビンくんよりも早くお婆ちゃんになるのよ?」
「だから何だ? 女性には変わりないだろ」
「ふふっ、お婆ちゃんになっても抱くつもり?」
「当たり前だろ」
「もしその時がきたら手加減してよ? 今でもケビンくんのお相手は疲れるんだから」
「……善処する」
「もうっ、仕方がないわね。これからは少し運動をして体力をつけるわ」
「頼む」
「ありがとう、ケビンくん。こんな醜い私でも抱いてくれて。もうないかもしれないけど、久しぶりに女に戻れた気がしたわ」
「だから抱きに来るって言ってるだろ。これからはずっと女のままだ」
ケビンが再度伝えたことによりレメインが瞳から雫をこぼすと、内に抱く気持ちをそのままケビンに伝えることにした。
「……こう言うと嘘に聞こえるかもしれないけど、愛してますケビンくん。スタシアが言った通りで、優しく抱いてくれる貴方のことが好きよ」
「まさかそこまでとはな。スタシアの時も驚いたけど、レメインの時は更に驚きだ」
そのような時に様子を見ていただけだったリゼラが、慌ててケビンとレメインの会話に乱入をしてくる。
「ちょ、ちょっと待ってくださいまし!」
「何だ、リゼラ?」
「わたくしもケビンさんのことが好きでしてよ! あんなに気持ちよくなれるのはケビンさん以外ありえませんわ!」
「はぁぁ……気持ちよさで判断するなよ……」
「それは……その……と、とにかく! わたくしも好きだということを知っておいてくださいまし!」
「わかった、わかったから、そんなに引っ付くな。それと、ケジメはつけろ。レメインとリゼラはまだエラに謝ってないだろ? 謝って許される問題でもないが、ケジメはつけておけ」
ケビンがそう告げるとレメインとリゼラはエラの方へ歩いていき、頭を下げて謝罪を始める。その謝罪を受け入れたエラに対して驚きの声が使用人たちから上がると、エラはケビンのおかげで幸せなことが増えたから、もう過去のことは水に流して新しい人生を歩むとのことだった。
そしてその後の流れは、殴られた頬を触っているセオグナンをどうするかということになると、ケビンはセオグナンに催眠魔法をまたかけるのだった。
「お前はこれから先、死ぬまで女性に欲情できない。お前が劣情を持てるのは男娼だけだ。好きなだけ掘ったり掘られたりしていろ。あと、今回の記憶はそのまま残るが、お前が女性たちに危害を加えたり、それに付随する行動を取ることはできない。他の者に対して今回の件を伝えることも禁止だ。絶望感を味わい後悔し続けながら生きろ」
そこまで伝えたケビンは他に何か提案がないかレメインたちに聞いては、そのままセオグナンに告げるように促していく。
「あなた、今後は私たち3人の指示に従ってもらいます。それと、ケビンくんが授けてくれた赤ちゃんも私たち同様に養うこと。建前上はあなたの子供として認知するように。このことも他言無用ですわよ」
「わたくしからは……そうですわ! 家を改築してケビンさんが来た時のために、大きなベッドを購入してくださいまし」
「私からはそうですねぇ……ご当主様と同じような貴族当主の情報を、手に入れて報告することです。その貴族家もご当主様と同じような目に遭ってもらいましょう」
3人がそれぞれの要求を伝え終わりケビンに終わった報告を挙げると、ケビンが締めの言葉を口にする。
「じゃあ締めに……女性たちや生まれてくる子供たちへの罵詈雑言を禁止する。何かに書き記したり、八つ当たりして態度に出すのも禁止だ。どれだけ憎かろうが、その感情は死ぬまでお前の中に溜め込んでおけ」
そのような落としどころで目処が立ったのだが、ケビンが今更ながらにスタシアのした発言に気づいたのだった。
「ちょ、ちょっと待て、スタシア! さっき同じような目に遭わせるって言ったよな!? それって俺が動かないといけないやつだよな!?」
「ええ、ケビン様から与えられる幸せを、他の方にも体験して欲しいのです。この国にはきっと同じような目に遭い、苦しんでいる女性たちがいるはずですから」
スタシアの言葉に対してケビンが何かを言うよりも先に、周りの使用人たちが一様に頷いては同意の声を上げていく。それに対してケビンは「そこまで暇じゃない」と答えるも、涙目で女性たちから見られてしまい、泣いてはいないが泣く泣く了承する形となる。
「せめて良識の範囲内で頼む……」
「そこはお任せ下さい。まずは情報を集めて精査致しますので、不確かなままケビン様にお願いすることはございません」
こうしてケビンはセオグナンに対するお仕置きを終わらせてしまうと、セオグナンはようやく開放されるが、何かを言おうにも言えない状態となっていて、何かに八つ当たりしようにもできなく、茫然自失となり自室へと帰っていく後ろ姿はなんとも哀愁溢れるものがあった。
「では、ケビンくん。一緒に寝ましょう」
「え……」
「私をこの先もずっと愛してくれるのでしょう?」
「気持ちの切り替えが早くない?」
「女ってそういう生き物よ」
「とりあえず風呂に入らせてくれ。貴族の家だから風呂くらいあるだろ」
「それじゃあ、まずはお風呂へ行って一緒に入りましょう」
その後ケビンはレメインに連れられて浴室に向かうのだが、そのあとをぞろぞろとカルガモの親子のように女性たちがついてきてしまったので、ケビンは予定を変更して敷地へ勝手に【携帯ハウス】を出すと、その中へ女性たちを招き入れる。
「ここなら全員で風呂に入れる」
招き入れられた女性たちは見た目と中身の違いに言葉を失い、開いた口が塞がらないまましばらく呆然としてしまう。そのような中で、いち早く復帰を果たしたレメインは、ケビンに気になることを尋ねるのだった。
「……ねぇケビンくん、貴方っていったい何者? カトレアを帝国に連れて行ったってことは、帝国の人よね?」
「あぁぁ……俺は冒険者だ」
「他は? 他もあるんでしょう? 答える時に悩むってことは、言い難い地位に就いてるってことよね?」
「……皇帝」
「……はい? 何か聞き間違ったみたいだわ。もう1回教えてくれるかしら?」
レメインがどうか聞き間違いであって欲しいと再度問いかけると、ケビンは『もういいや』と開き直って自らの地位を白状する。
「エレフセリア帝国初代皇帝のケビン・ヴァン・エレフセリアだ。戦争でセレスティア皇国が攻めに行った帝国の皇帝だ」
「「「「「えぇぇぇぇっ!?」」」」」
「ケ、ケビンさんが皇帝陛下……カトレアの旦那様が皇帝陛下……私の旦那様が皇帝陛下……」
ケビンの答えた内容を聞いた一般人であるエラが、自分の処理能力を超えたようでトリップしていると、レメインたちも混乱し始めていた。
「ケビンくんが皇帝陛下……皇帝陛下がケビンくん……」
「わ、わたくし……皇帝陛下に抱かれていましたの……? 皇帝陛下に……あんな淫らに……」
「ケ、ケ、ケビン様に好きって言っちゃった……皇帝陛下なのに言っちゃった……ふ、ふふ、不敬罪……私、死ぬの……」
あまりの大混乱に収拾がつかなくなったケビンは魔法を使って落ち着かせると、とりあえず風呂に入るために全員を浴室に案内する。
そして、魔法によって強制的に落ち着かされた女性たちは、不思議な感覚のまま混乱するという人生初めての経験をするのである。
その後はケビンが風呂に入ると、女性たちも何が何やらの状態のままお風呂に入ることとなり、わけもわからないままケビンによって体を洗われてしまい、湯船に浸かってようやくリラックスしても、やっぱり意味がわからないという結論に至る。
それから先も意味のわからないままケビンに寝室へ連れていかれて、大きなベッドでみんな仲良く寝ることになると、予想通りケビンが手を出しては寝落ちではなく快楽堕ちにされた面々からダウンしていき、ダウンしても続いていくケビンの相手を翌朝までさせられることになるのであった。
「あ、朝よ……ケビンくん……」
「もう無理ですわ……無理ですわ……」
「幸せすぎて死んじゃう……」
「ケビンさん、底なしです……」
「こんなに求められたの初めて……」
「当主様は単発だし早いし小さいし……」
「女の悦びを初めて味わったわ……」
「しかも初めてをやり直しさせてくれるなんて……」
「もう生涯をケビン様に捧げることにする……」
「俺の女になるってのはこういうことだぞ。ちなみに嫁たちはほぼ毎晩こんな感じだ。さすがに仕事への影響が出るから、朝までコースは翌日が休みの時にしかしないけど」
その言葉を聞いた女性たちは、ケビンの嫁たちの凄さを思い知る。その凄さの基準がおかしな内容であることはともかくとして。
「私、お嫁さんだから頑張らないと」
この中で1人、唯一嫁入りを果たしているエラはこれからの生活の意気込みを呟き、カトレアに再会したら上手くやるコツを伝授してもらおうと心に決めるのであった。
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