第328話 休養日に初恋を添えて

 ケビンが大いに満足していたところで、ド忘れしていた存在がその口を開いた。


「主殿よ、そなたはいつもこういう交尾をしておるのか?」


「うわっ! なんだクララか……ん、クララ……? あっ、お前がいたんだった!」


 今更ながらにクララの存在を思い出したケビンは、クララの前ではっちゃけてしまっていたことに気づいたのである。


「随分な言い草よの。その言い草からすれば私のことを忘れておったな?」


 クララの言葉にケビンは目を逸らしてしまう。


「ソ、ソンナコトナイヨ……」


「主殿よ、私の目を見て言ってくれ」


 ケビンはしっかりと目を合わせるとクララへ告げるのだった。


「そんなことないでござる」


「今度は言葉づかいがおかしくなったな」


 クララは指摘しつつもケビンの目をじっと見つめた。


「はぁぁ……わかった、わーったよ、白状します。忘れてました。それはもう、すっかりぽんと」 


「酷いやつよの……あれほど私がいればできんと言っておったのに、あっさりと始めおってからに」


「あぁぁ……それは何か、すまん。ティナが絡むとどうしても抗えないんだ」


「それほど好いておるのか?」


「好き嫌いじゃなくて、ティナの持つ称号が異性に対して発情を促すんだよ」


「それは難儀だの」


「で、何か用だったのか?」


「ふむ、主殿たちの睦ごとを見ておったらな」


「見たのかよ……」


「まぁ、良いではないか。でだな、見続けていたら次第に私の体が疼くようになったのだ」


「見続けたのかよ……」


 結局のところクララが言いたかったのはケビンたちの睦ごとを見ていたら、自分も発情してしまったということだ。


 しかし強いオスがいなかったことで今までそんな経験をしたこともなく、自分の抱いている感情がどういうものかもわからないらしく、どうしたものかとケビンに尋ねてみることにしたとのことだった。


「重症だな……」


「主殿よ、重症ということは私は病気なのか? 今まで病気になったことはないのだが。この胸の奥が熱くなるのは病気なのか?」


「熱いのか?」


「ああ、主殿を見ると鼓動が早くなるのだ。バイコーンの背に乗って抱かれている時と同じだな」


「その正体を知りたいか?」


「知れると言うなら知りたいに決まっておろう。数千年生きてきたが知らぬことなどなかったのだぞ」


「そりゃあドラゴン姿のままで生きてきたんだしな。知らなくて当然だろ?」


「ふむ……ということは、これは人化が原因ということか……ここまで長く人化の姿でいたことはなかったしな。よもやこれほど生きていて新たな発見が更にあろうとは」


「今からそれを教えてやる」


 ケビンはクララの傍に座るとその身を抱き寄せた。


「どうだ? ドキドキするか?」


「先程よりも凄いぞ」


「これからもっと凄くなる」


 クララに顔を近づけたケビンは軽くキスをするとすぐに唇を離した。


「ん……」


「どんな気持ちになった?」


「ドキドキが止まらぬ。もっとして欲しいと思ったぞ」


「そうか……それが人の言葉で言うところの『好き』ということだ」


「これがか?」


「想像してもみろ。今の相手が俺でなく、クララの言うところの弱いオスだったらどう思う?」


「私に触れた時点で殺す」


「それが俺だったら?」


「……もっとして欲しい」


「わかったか?」


「これが『好き』という感情か……知識として知るのとでは違いがあり過ぎる」


「まぁ、好きにも色々あるしな。で、どうする? 続きをするか?」


 ケビンの意図せんとした暗に指し示す言葉を理解しているクララは、驚きで目を見開きながらケビンへ聞き返すのであった。


「よいのか? 私はドラゴンなんだぞ?」


「そうだな……自分でも考え方がおかしくなっていると思う。ティナの影響か? 発情を促されてから躊躇いがないように思える」


「ティナの称号はそこまでの力があるのか? 種族的な見た目を気にしないなど人間からすればありえないだろう? 差別が人間のモットーであろう?」


「すごい偏見だが言い返せないのも事実だな。ちなみに俺は元から差別主義ではないぞ。だが、さすがに俺にも好みというものがある。クララは好みだがゴブリンのメスとやれと言われても無理だ。ギザギザ歯に涎を垂らしながら近づいてくるのを想像するだけでも無理だ」


「ドラゴンとて変わりはないだろうが」


「クララのドラゴン姿が綺麗だったということもある。言葉も喋ってたしな。さすがに俺が仕留めたカラーズたちだったら無理だ。何を言ってるいるのかさっぱりわからんし、意思疎通が取れ――」


 ケビンが最後まで語る間もなくクララはケビンの唇を塞ぎにかかると熱い口づけを交わして、やがて唇を離したクララは頬を染めてケビンを見つめていた。


「いきなりだな、おい」


「主殿が悪いのだ。主殿が私のドラゴン姿を褒めてくれた時に胸が昂って、食べてしまいたいと思ってしまった」


「それ……物理的にじゃないよな? 俺は食べても美味しくないぞ」


 クララの発言した「食べてしまいたい」というワードに、ケビンは自分がドラゴンに食べられているところを想像してしまうのだった。


「物理的に食べるわけがなかろう。主殿とはずっと一緒にいたいのだ。食べるという表現はティナがしていたではないか。確か……人参を食べるのであったか?」


 早くもティナのエロフさに毒されてしまっていたクララは、早速エロフの真髄たる誘惑ワードを使っていたようであった。


「あぁぁ……そのことは忘れてくれ。ティナみたいになってしまう……」


「では主殿が忘れさせてくれ。誰かが言っておったが、わけがわからなくなるほど気持ちよくなれるのであろう?」


「全く所々でちゃんと見ていたみたいだな。2人きりじゃないがいいんだな?」


「ドラゴンはそこら辺ですると言ったであろう? 側に誰かがいようとも関係ないのだ」


 クララをゆっくり押し倒したケビンは軽い口づけを繰り返して、クララの気持ちを昂らせていく。


「ちゅ……ん……主殿、ふわふわする」


「これからもっと凄いことになるからな」


 ケビンとの口づけで弄ばれる感覚にクララはゾクゾクとしてしまい、今まで白種の頂点として君臨してきたプライドは脆くも崩れ去っていく。


 ケビンは気崩された着物をはだけさせると、寝ていても形を維持しているたわわな胸が顕となりそれに見蕩れてしまうのだった。


「主殿……『あ~れ~』はせぬのか?」


「今回は脱がさずにやる『着エロ』だ」


 ケビンはそう言うと、クララに対して着エロとは何なのかを教え込むのであった。


「ふふっ、また新しい言葉を覚えたぞ。『着エロ』か……主殿は変わったことが好きなのだな」


「エロいことなら大抵好きだ」


 それから他の女性たちの発言でクララが覚えていた淫語を口にして、それを聞いたケビンは堪らず想いをぶつけるのであった。


「反則だろ……それ……」


「ふふっ、主殿に一杯食わせることができたな。それにしても主殿と関係を持ったからなのか、こう……愛おしく感じてしまうな。これが愛しているということか?」


「そうなら嬉しいな。たとえクララがドラゴンだろうと俺は愛しているぞ。ティナの称号がきっかけとはいえ、嫌いな奴は抱きたくないしな。この気持ちは本物だ」


「んんっ……主殿……胸のドキドキが止まらないのだ。抱かれる前よりも激しく鼓動を打っておるのだ」


「それはきっと俺と同じ気持ちだからだ。たとえ人間でも俺のことを愛しているのだろ?」


「ああ……ああ、愛している。主殿が人間でたとえ私と種族が違っていても愛している。主殿が好きだ、大好きだ。もう離れたくない。ずっと一緒にいたい」


「これからはずっと一緒だ」


「嬉しい、主殿……数千年生きてきてやっとつがいに巡り会えた」


 ケビンとクララがいい雰囲気になっているところへ、のそりのそりと現れる影が1つ。


「ケビンくぅーん、仲直りできたから次はイチャラブエッチしよぉ」


 何を隠そう初っ端ダウンをしたティナである。既に復活を果たしてケビンを求めに這い寄ってきたのだった。


「クララも抱いてもらったんだね。それなら3人でする?」


「スイッチが入ったか……」


「ティナは凄いな……」


 ティナの性欲に対する貪欲なまでの素直さに、ケビンは呆れてクララは若干引いていた。


 それからティナがケビンとクララを両方攻め立てていき、クララが何故か自分でも抗えないほどの情欲が沸いてきて、ケビンの言ったティナの称号の凄さを体験してしまうのであった。


「異性ではないのにどういうことだ?」


「わからん。今度ステータスでも覗いてみるか」


 こうして3人でやっているところに次々と復活を果たした女性たちも混ざってきて、最終的には隣の部屋で寝ていたニコルもやってくると、ケビンは2人同時攻めを常時行って女性たちを満足させていくのであった。

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