第二十二話 悪魔との出会い

 翌日の昼下がり。


 ネスはムーンパゥルホテルのフロント脇、ラックに吊るしてある朝刊置き場の前で、その一面記事から目を離せずにいた。数種類置いてある新聞の全てが同じ記事だ。


「朝刊、お読みになりました?」


 ネスがここに立ち尽くし、朝刊を手に取ってから数分が経過したが、外出して行くホテルの宿泊客達の会話の殆どが、今朝の一面記事を指していた。


「サンリユス共和国 一夜にして全議員暗殺……」


 全議員というのは市議、県議、国会議員の全てを指しているようだった。それで二百人足らずというのだから、サンリユス共和国というのはけっこう小規模な国らしかった。

 午前中の稽古を終えてシャワーを浴びたばかりだというのに、ネスは背中にじっとりと汗をかいていた。


 アンナが自分の元を離れて三日が経過した。ネスはもっと長いこと、彼女に会っていないような気がしてならなかった。ましてや今朝の一面記事は、より一層彼女を遠くに感じさせた。


 どの新聞を読んでもこの件に関する犯人について、詳しく記載しているものはなかった。どの新聞社も、現在サンリユス共和国への出入国は禁止されており、詳細は不明。犯人の目撃情報もなく、今だ逃走中と思われる──と似たり寄ったりな書き方しかしていなかった。

 その犯人を知っているネスにしてみれば、彼女の安否のほうが気掛かりでならなかった。二百人近く殺しておいて目撃者もいない、という点について流石だなと感心し内心称賛している自分がいることに驚きはしたが、しかしそれが本当だという証拠はどこにもないし、確認のしようもない。ひょっとしたら誰も知らないところで議員の雇った殺し屋なんかと対峙して、疲れきったところを襲われているかもしれないのだ。


 考えれば考えるほど漠然とした不安が心を侵食していく。


「お客様、どうかされましたか?」


 ハッとして顔を上げると、フロントにいた麗らかな声の女性が心配そうにネスの脇に立っていた。


「顔色が優れませんが、お部屋までご案内致しましょうか」


 彼女は心配そうな声で言う。


「いえ……大丈夫です」


 ネスがそう言うと女性は、ネスが手に持ったままの新聞をちらりと見た。何か言おうとしたのだろう、口を開きかけたところで、なかなか主張の強い空腹音が響いた。


「す、すいません」


 フロント嬢のではない、自分の腹の虫が鳴いた。ネスは恥ずかしくなり、上げたばかりの顔をすぐに下げた。


「ちょっと待っていて下さい」


 フロント嬢は新聞の吊るしてあるラックの脇から、薄手の雑誌を一冊持ってきた。鮮やかな色の表紙には、おしゃれな街の風景写真が印刷されている。


「この街のグルメガイドです。フリーペーパーなのでよろしければ」


 そう言って、それをネスに差し出した。


 丁寧にお礼を言ってページを捲ってみると、なんとも美味しそうな料理やスイーツなどの写真が店舗説明と共に記載されている。地図もなかなか詳細で分かりやすい。


「私のお勧めなのですが、時計塔通りの一本裏手にあるリモネード通りは、なかなか人気の名店が軒を連ねていますよ」


 フロント嬢はにっこりと微笑んだ。


「ありがとうございます。行ってみます」

「お気をつけて」


 見送ってくれたフロント嬢にもう一度会釈をして、ネスは街に出た。





自分の腹の虫が鳴ったせいで、考え事から強制的に意識を逸らしてしまっていた。それを思い出したのは視界の真ん中に時計塔が入ってきた時だった。

 ゴーン、と時を告げる鐘が町中に響き渡る。腹の虫の元気がいいわけだ。時刻は十三時。朝から水しか飲んでいないせいもあって(昨日体験して分かったのだがシナブルとの体術の稽古は、胃に食べ物が入っている時に行うものではなかった)ネスの空腹は限界に達していた。


 鼻腔に染み渡る芳しい匂いが風に乗って、時計塔通りを包み込んでいる。ホテルのフロント嬢から貰った地図に目を落とす。どうやらこの食欲をそそる匂いは地図通りの目的地、リモネード通りから漂ってきているようだ。



 通りはネスの想像以上に幅広く、多くの人々でごった返していた。通り沿いに連なるカフェやレストランの外壁は、グラスに注がれたレモネードのような淡い色を基調に、うっすらと色のついた白色へとグラデーションになるよう、美しく塗り上げられていた。

 通りに入ってすぐの店舗の店前で、愛嬌の良いまるっこい壮年の女性が、空色のブラウスの袖をたくしあげてガレットを焼いていた。


「お兄さんお兄さん! リモネード通りの名物『マーガレット・ガレット』はいかが!」


 マーガレットというのはその女性の名前のようで、購入客たちは皆笑顔で彼女に礼を言って去って行く。ネスがマーガレットの前で立ち止まると、彼女は有無を言わさず出来立てのガレットを差し出した。大振りで真っ赤な宝石のついた金色の指輪が、彼女の小指できらりと輝いた。


「一つ四百ルルだよ、いかが!」

「……頂きます」

「毎度あり!」


 小銭を手渡すとマーガレットは弾けるような笑顔になった。

 ガレットは食べやすいよう包装紙で包まれ、クレープ状に折り畳んであった。パリパリの生地の香ばしいこと。茹でてマッシュしたポテトに肉厚のソーセージ、仕上げに少し酸味の効いた甘口ソースが絡み合って、あまりの美味しさにネスは振り返りマーガレットを見た。彼女は得意気に親指を立てて、それをぐっと突き出していた。


 少し行ったところでショートサイズのレモネードも購入し、ネスはそれを飲み食いしながら歩いた。もっと色々食べてみようと張り切っていたのだが、完食したガレットは想像以上にボリュームがあり、ネスにその気を失せさせた。

 


 左手にあるオープンカフェから甘い香りが漂ってくる。その香りを嗅いだ途端、ネスは急に甘いものが食べたくなった。かなり腹は膨れていたが、それを忘れてしまうくらい食欲をそそる香りだった。


(なんだろう、あそこ)


 そのカフェの手前、人々が行き交う通りの脇にある、一本の細い路地が目に留まった。近づいて覗いてみると、今居る通りの喧騒が嘘のように、その路地は静まり返っていた。


「そっちはホワイトピール通りだよ」


 声の主はオープンカフェの店員だった。濃い茶色のロングエプロンを腰に巻いた若い男が、店の前のテーブルをせっせと拭き上げている。


「ホワイトピール通り?」


 どうやら甘い香りはオープンカフェからではなく、その路地の向こうから漂ってきているようだ。

 左手にトレイを乗せたカフェの店員は、テーブルを拭き終えるとネスの姿をじっと見つめ、帯刀していることに気が付くと「へぇ」と言い、高らかに口笛を吹いた。


「香りにつられた普通の観光客になら、路地に入るなと声を掛けるんだけど、君は心配なさそうだね」

「どういう意味ですか?」

「行けばわかるよ」


 それだけ言うと店員は、足早に店の中へ消えた。


(行けばわかる、か)


 ネスは躊躇することなく、その薄暗い路地に踏み込んだ。




 短い路地を抜けると殺風景な通りに出た。人通りは疎らだ。足を進めると、レモネード通りとは対照的に、色彩のない質素な建物ばかりだった。

 甘い香りを辿って行くと、一軒の店に到着した。淡いオリーブ色の外壁から伸びた木製のポールに、同じ材質の五角形の看板がぶら下がっている。看板の真ん中にはリアルな蜂が一匹彫られていて、その上に店名も彫られていた。


「『蜂の巣』……か」


 なんとなく近寄りがたい店名だったが、折角来たのだ。ネスは重い店のドアを押した。





 甘い香りの充満する店内は薄暗く、テーブル席が五つにカウンター席が八つ。テーブル席には強面の男が三人、別々のテーブル席に腰掛けていて、カウンター席の真ん中に男が一人座っていた。


「……いらっしゃい」


 カウンターの中にいる大柄で髭面の店主が、グラスを磨きながら控え目に言った。

 どうやらここは酒場のようだ。店主のいるカウンターの背面には、色とりどりの酒瓶が並べられていて、その脇の棚には細工の利いたグラスが整列していた。


(うわぁ……)


 入るんじゃなかった。店の扉が閉まりきると同時に、後悔の波がネスに押し寄せてきた。


(お客は怖そうな奴ばっかりだし、店主も怖い。こんな甘ったるい香りの充満する店の中で、こいつら何やってんだ)


「へへっ……」


 入口から一番近い席に腰掛けている男が、ネスを見て不似合いな笑みを浮かべた。ビールの注がれた大きなジョッキを握りしめている。気味が悪かったので、ネスは足早に右隅のカウンター席に腰掛けた。


「あんた、この香りにつられて来たのかい」


 店主が磨き終えたグラスをしまいながら、話しかけてきた。


「はい。これは何の香りなんです?」

「スコーンだよ」


 俺お手製のな、と付け加えると店主は髭の奥でニヤリと口角を上げた。


「レモンジャムとホイップクリーム、どっちがいい?」

 ネスは少し悩んで「両方お願いします」と言った。

 まさか酒場でこんな大男がスコーンを焼いている香りだったとは……。



「君」



 スコーンを待っている間に頼んだコーヒーを飲んでいると、カウンターの真ん中に座っている男が、ネスの席を一つ挟んだ椅子にまで寄ってきた。


「腰から刀を抜いたほうがいい」


 周りの大男達とは、かけ離れたその風貌にネスは驚く。薄暗い店内の照明を受けて輝く、肩にかからない程度伸ばしたミントグリーンの髪。そして見ているこっちが恥ずかしくなるくらい美しい顔立ち。見覚えのあるエメラルドグリーンの瞳。彼もまたティリスだった。足元には一本の刀が立て掛けてある。


「どういう意味ですか?」


「お前、余計なことを言うなよ」


 ネスの質問に答えたのは、あの入口に近い席に腰掛けている大男だった。立ち上がり狭い店内だというのに、抜刀している。


「俺の獲物だ。さあ小僧、こっちへ来い」


 訳が分からずネスが戸惑っていると、カウンターに座っていた男が丁寧に教えてくれた。


「この店で帯刀している者には、決闘を申し込むことが出来るんだ。どこにも書いていないけどまあ、暗黙のルールってやつだね」

「そんな……」


 ネスが言うと彼は立ち上がり、足元の刀を腰に差した。


「でも君は知らなかったんだろう? スコーンを食べに来ただけだ。違うかい?」

「そうですけど……」

「だったら決闘を受ける必要はない。そうだろう、マスター」


 彼が振り返ると、カウンターの中の店主は短く「ああ」と答えた。


 しかし立ち上がった大男は納得がいかないようで「知らなかったで済むか!」と叫びながら刀を振り上げ、こちらへ突進してくる。ネスは身構え、刀の鯉口を切った。


「全く……」


──と、カウンターから立ち上がり帯刀した彼が一歩、また一歩と大男に近寄った。帯刀したのに刀は抜いておらず、無防備な姿のまま大男の懐へと踏み入る。


「危ない!」


 ネスが叫んだ瞬間に勝敗はついた。帯刀したままの彼は大男が振り下ろした腕を、自身の振り上げた右足だけでいなした。その反動で大男は頭から床に叩きつけられ、意識を失った。


「すごい……」


 ネスが感嘆すると、大男を倒した彼は頭をかいて呟いた。


「……やり過ぎた」


 大男の倒れこんだ床には大きな穴が開いていた。





 目の前の皿にのるレモンジャムとホイップクリームの添えられた熱々のスコーンに、ネスは舌鼓を打っていた。しっとりとしていて、レモンジャムともホイップクリームとも相性抜群だ。そんなネスの満足げな顔を見て、店主はまたニヤリと口角を上げた。


「満足かい?」

「とっても!」


 隣に座る彼は刀を腰から抜き、カウンターに立て掛けていた。


 彼が大男を倒した後、ネスは懇切丁寧に彼にお礼を言った。何かお礼をさせて下さいと言うと彼は「そんなのいいよ」と言い、ネスの隣に座った。


 ネスが名前を聞くと彼は、


「エリック・ローランド。堅苦しい言葉を使う必要はないよ」


 と言ってうっすらと微笑んだ。



 会話は弾んだ。仕事柄、世界中を周っているというエリックは様々な知識を有していた。全てがネスの興味をそそるものだった。


「君、この町は初めてかい?」

「初めてだよ」


 彼の声は心地が良い。そこだけ日が射したように柔らかで暖かい。氷のように冷えきった調子のアンナやシナブルといたからだろうか、エリックの声色はネスの心を落ち着かせた。


「親の使いでアリュウまで行くところなんだ」

「アリュウ? 一人でかい?」

「……いや、連れがいるよ」


 あまり嘘をつくと収拾がつかなくなりそうだったので、必要以上に隠し事をするのはやめた。


「恋人?」

「ち、違うよ!」


 ネスはカウンターを叩き、思わず立ち上がってしまった。


「はは、ごめんごめん。そんなにムキになるなよ」


 エリックは両手を組み、カウンターに肘をついてその上に顎を乗せた。


「どんな人だい?」

「……難しい人だよ」

「ふうん?」


 そう、アンナは難しい。


「美人でスタイルも抜群で……強くて格好よくで、いつも俺を守ってくれるのに……短気で、怒るとめちゃくちゃ恐いし、自分のことは何も教えてくれない……」


 ネスは力なく座った。

 

 思い返してみればアンナは、自分自身のことをあまり語らない。まるで必要以上に他人と距離を縮めることを恐れているかのように。


「俺だってあの人の為に、力になりたいのに、何も出来ないんだ……」

「……」

「俺はどうしたらあの人の力になれるだろう……」

「──大切なんだね」


 黙って聞いていたエリックは、ネスが口を閉ざしたのを見ると、とゆっくりと言った。


「君は、その人に憧れている──違うかい?」

「──憧れ」


 シナブルはだと言った。エリックは『憧れ』だという。



 憧れ。



(俺が殺し屋に憧れている? まさか、そんなはずが……)


 確かにアンナの戦闘は見事なものだった。何となくだが、あんなに風に強くなりたいとは思う。しかし人の命を奪い、自分自身の命をもどうでもいいように扱う彼女の生き方に、ネスは同調出来なかった。何しろネスは賢者になりたいのだ。賢者が命を粗末にしてどうするというのだ。


「よく分からないな」



(本当に分からない。俺にとってアンナはなんだ?)



「そうかい──まあ、そうだね。女性という生き物は、俺達男にとってみれば分からないことだらけだ」


 思わず見とれてしまう流れるような動作で、エリックは右手の中指に灯した火を煙草につけたが、口にくわえた瞬間ハッとして、その火を指で揉み消した。


「……失礼、煙草は苦手かな」


 苦笑したエリックは、申し訳なさそうにネスに尋ねた。


「いや、大丈夫」

「そうかい」


 そう言って新しい煙草に火をつけた。


「つい癖でね……を言うとリリィは怒るけど、ララは煙草が嫌いだったから」


 ゆっくりと煙を吐き出しながら言うエリックの瞳に影が差した。


「ひょっとして、どっちかが恋人とか?」


 スコーンを頬張ったままの顔で、ネスはエリックを見た。柔らかく微笑み、首を少し捻った彼の左耳で、雫型の金色のピアスが二つ揺れた。


「両方だよ」

「りょ、両方とな……」

「おいおい、勘違いしないでくれ。ララはもうこの世にはいない。今はリリィと婚約中なんだ」


 そう言ってエリックは、グラスの中で踊る黄金色の酒を一口飲んだ。


「亡くなった……」


 ネスの悪い癖。止められない好奇心。初対面のこの人に対しても発揮できるそれは、もういい加減嫌になる自分の特性だった。口に出して後悔したことが、今まで何度あったことか。その度にしまった、と反省するのだが、この癖がなかなか治らない。


「殺されたんだよ」


 ネスが後悔の海に溺れていると、エリックはなんともないように言った。


「ララはリリィに殺された」

「殺されたって……」

「一応、そういうことになっている」


 持っていたフォークが音を立てて床に落ちた。すかさずカウンター内の店主が新しいものを差し出す。ネスがそれを受け取れずにいると、見かねたエリックがそれを受け取り、ネスの皿の上に置いた。


「ちょ、ちょっと待ってよ」あまりの突拍子もない話の流れにネスは混乱する。「殺されたって、じゃあ、あなたの婚約者フィアンセは、あなたの昔の恋人を……殺したってこと?」

「一応、そういうことになっている」


 エリックは表情を変えないまま同じ台詞を繰り返した。


「……よくそんな人を愛せるね」

「そうだね」

「そうだねって……俺には出来ない。自分の大切な人を殺した相手を愛するなんて出来ない」


 理解が出来なかった。そんなネスをエリックは下がり目の端でちらりと見た。


「俺だって初めは敵意しかなかった。でも気が付くと俺は彼女に同情していて、それはいつのまにか愛情に変わっていたんだ──君にはまだ人を愛するということが、どういうことか分かっていないだけなんだよ」

「わかるさ! 恋人くらい……一応」

「いるんだね」

「……まあ、うん……」

「そうかい、でも分かっていないよ。分かっていないというより、まだ知らないだけだ。人を愛するということがどんなに、どんなに難しいことか」


 煙草を消したエリックは立ち上がり、刀を右腰に差しながら言った。


「リリィはね──いつも悲しそうな顔をしている。何故だかわかるかい?」


 唐突な彼の問い掛けに、ネスは吐き捨てるように答えた。


「ララさんを殺したことを後悔しているからだろ」

「違うさ」


 エリックはネスの顔を見ないまま、寂しそうな声で言った。


「自分の運命を悲観しているからさ」

「悲観?」

「そうさ。だから幸せにしてやりたいと思うのは自然なことだろう?」


 やはりネスには理解が出来なかった。


「あの!」

「ん、なんだい?」


 立ち去ろうと遠退くエリックの背に、ネスは声を掛け呼び止めた。


「どうして……どうして初対面の俺なんかにこんな話を?」


 不思議だった。普通初対面の、自分よりも明らかに年下の男にこんな話をするだろうか。


「どうしてだろうね……君になら話してもいいと、俺の心が囁いたんじゃないかな」

「……え」

「それとも君の中のが、そうさせるのかな」

「俺の中の何か……?」


 シナブルはそれを「あなたに流れる御父上と同じの賢者の血」と言った。本当にそんな目に見えないもので皆が心を開くだろうか?


「俺は明日もここにいる。よかったらまた来てくれ。君とはもっと話をしてみたい」


 そう言うとエリックはポケットから千ルル札を二枚取り出し、カウンターに置いた。


「じゃ」


 エリックは扉の前で振り返り、軽く手を上げ微笑んだ。扉を開けた途端強い風が吹き、大きく開いた彼のシャツが膨らみ、その首から下げている金色のネックレスが揺れた。


 どうやらエリックは、ネスの飲食代まで払ってくれていたようだった。こんな借りを作るのは嫌だった。


「……明日も来るしかないじゃないか」


 店を出てネスは一人呟いた。

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