part.4-1 微睡まない夢の中
おはようございます。炎天下の元ですが、今起きた『佐伯 翔太』です。
「どこだここーーーーーーーーー!!!!!!」
僕は今、見たことも無い土地にやって来ています。本当に見覚えが無い、広大な土地だ。当然、叫ぼうが何しようが焦りが消えることは無い。僕はその恐怖を抱えながら適当な方角に足を運び出した。身体を大きく動かすと違和感を感じる。見ると初めて着る服を着ていた。僕が普段着ているTシャツよりもお粗末な素材で、現代の日本人が着ているような服では無い。見た目は大昔の百姓と言ったところだ。
「……」
歩きながら冷静になって考えてみる。すると、一つの結論にたどり着いた。
(これは……異世界転生!?)
それはあまりにも非現実的で非科学的な答えだった。しかし、この状況はまさに異世界転生である。どうやら、物語だけの話だと思っていた状況が自分にも起きてしまったらしい。
「一体、これからどうすれば良いんだろうか?」
途方に暮れた顔で僕は呟いた。
◉ ◉ ◉
その後、僕はひたすら歩き続けたけど、目の前には広大な平原があるばかり、流石に最初にここへ来た時の新鮮な気持ちは最早どこにも無かった。その時だった。
「……人がいる!」
服装や荷物からして商人だろうか?僕は一気に救われた気持ちになり、何も考えずにその商人に話しかけた。
「あの、すいません!」
「……ん?おお、どうした!?」
僕は息切れ気味に商人に話しかけると、その人は少し驚いた表情で答えた。僕は続ける。
「つかぬ事をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「ああ、かまわないぞ?」
「……ここは何処ですか?」
一瞬、間が生まれた。それと同時に何か気温もちょっと下がったような気がする。『ここは何処?』とか記憶喪失か何かだろうか?ついでに『私は誰?』を付け加えれば完璧だ。……あ、僕は佐伯翔太ですはい。
「……君、大丈夫か?」
商人は心配そうな顔でそう言った。多分、彼が心配してくれているのは僕の頭なのだろう。ええ、分かってますよ僕が頭おかしい事くらい。
「だ、大丈夫です……」
「迷子か?何処から来たんだ?」
「すみません、分からないんです。気付いたらこの平原のど真ん中にいて……」
「そんなことがあるのか!?」
と、商人は驚きの表情で答えた。
「んー、君の名前は?」
「……佐伯翔太です」
「ショウタ?珍しい名前だな」
と、商人は答えた。そして、彼が知る中でこの世界について色々な事を聞くことが出来た。
彼の話によるとここは『アレンガルド』という世界らしい。今ここにいる場所は『カドゥ平原』で、近くに村もあるという話しだ。ならばそこへ向かうのが建設的だろう。
「その、カドゥの村はどこにあるんですか?」
「そこまで遠くないはずだ。えーっと、ここから東だな。その先に村がある」
と、商人は地図を見ながら答えた。そして、
「しかし、良いのかい?」
「え、何がですか?」
「聞いた限りだと君はここの住人じゃないだろう?言ったところで受け入れて貰えるのか?」
「ですが、他に行くところもありませんから……」
トホホ……と、笑いながら僕は答えた。その笑顔に生気はない。
「……だったらこうしよう!」
と、商人は明るい表情でそう言った。そして続ける。
「私がカドゥ村と話しを付けよう。取引なら任せてくれ!」
「良いんですか!?」
商人の返答に驚きながら僕は答える。その声には自然と期待が籠もっていた。
「ああ、かまわないぞ?ただし……」
と、商人は言った。そして一呼吸の後、商人はこう言った。
「私のペット『シェリー』を探して欲しい」
「シェリー?」
僕は聞き返した。
「ああ、このくらいの黄色いサージスライムだ。人間の言葉もちゃんと分かる」
と、商人は両手でサイズ感を表現しながらそう言った。
「だが、この辺りで大分前にはぐれてしまってな……この間から探しているが、全く見つからないんだよ」
「なるほど……それで、サージスライムというのは?」
「??」
僕が尋ねると、商人は『何を言ってるの?』と言わんばかりに首をかしげた。
「サージスライムはサージスライムだよ……まさか知らないのか!?」
と、商人は少し食い気味に問いかける。
「す、すいません……」
と、僕は答えた。
「驚いた……どうやら君は秘境の場所からやって来たようだな!」
ハッハッハッと、商人は高らかに笑いながら言った。どうやらその『サージスライム』とは、有名な生き物らしい。僕はその『サージスライム』について一通り聞いた後、こう続けた。
「分かりました、僕も探すのを手伝いますよ。具体的にどこではぐれたんですか?」
「恩に着るよ。この辺りなんだ、付いてきてくれ……」
そう言って商人は案内して行った。
続く……
TOPIC!!
異世界『アレンガルド』
翔太や栞が住んでいた世界とは別に存在する世界。
日本とはほど遠い中世ヨーロッパを思い浮かべるような文明で
技術も発達していないが、日本には存在しない魔法と呼ばれる特異な現象があり、
人々は魔法を用いた豊かな生活を送っている。
異世界『アレンガルド』には多様な生物が存在しており、
ゲル状の肉体を持つ『スライム』や、既に死んだ生物が『魔法』を糧に生き返った『ゴースト』等、
日本では見ることの出来ない独特の特性や構造を持った生物も存在し、
異世界の人々はそれらを『モンスター』と呼んでいる。
『モンスター』は人々と共生を果たす者もいれば、
単に害悪となる種も存在し、中には並の人間では手に負えない凶暴なモンスターも存在する為、
『冒険者』と呼ばれる者たちがこれを討伐し、人々を守っている。
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