第14話 初めての共闘 前編
◇ ◇ ◇
ーーここからボトルゴードの町までは街道を歩くことにする。
森の中より魔物が出ないという意味では安全だなんだよね。
薄暗い森の中と違って見晴らしもいいし、ぽかぽかとした日差しが気持ちいい。
今まではエルフ族の女性が一人旅をしていると、色々と危険な目に合う可能性があったので用心の為に森の中を通っていたんだけど。
先ほどの人族の村での反応をみて思ったのは、外套で体型と耳を隠してパッと見エルフの女性と判らないようにすればひとまず大丈夫そうかなぁって。早く町に着きたいのもあるんだけど。
さっきまで足場の悪い森の中を歩いてきたから、こうやって街道を通るとちゃんと舗装されてて歩き心地がいい。進み具合が全然違うし疲れにくいし。
それに、等間隔で光り石が埋め込まれていて、これが距離の目安にもなるから町まであとどれくらいあるか分かりやすくていいんだよね。
この光り石……日光に当たった時間の分だけ、夜間に文字通り淡く光って街道の道筋を教えてくれるらしいよ。
1km毎にあって、旅人の道標になってるんだって。なんか一里塚とかマイルストーンみたいだよね。
異世界でも人の考えることって似てるんだなぁってちょっとだけ嬉しくなった。
『俊足』スキルがあるし、軽くジョギングする速度で余力を残しつつ走っているけど、すごく距離を稼げている。
この調子だったら予定より早くボトルゴードの町に着くかも!
どんな町かな、エルフ族にも住みやすいといいなぁ。
◇ ◇ ◇
町を目指して、快調に飛ばしていたその時……。
森が街道沿いまで押し寄せて来ているような場所を通りかかった。
ーーなんかここ、嫌な感じがする。
今まで見通しの良いところを進んで来ただけに、やけに圧迫感を感じちゃうし……。
嫌だなぁ、こうゆう時ってなんか出てきそうじゃ……うわっ、本当に来ちゃったよっ、言わんこっちゃないっ。
『索敵』に一つ表示されたと思ったら、あっという間にあっちこっち現在進行形で真っ赤に塗り潰されていってるしっ。
ーーこれって、ゴブリン?
……間違いなさそう。森の中に緑色をした小さな姿がちらっと見えた!
それもゴブリンの団体さんがいっぱいとかっ! どうなってるの!?
三、四……五つの群れが一度に来てるっ。
今はバラけてるけど個体数多めのもいるし、こいつらの進路ってまさか……集結場所って……もしかしてここ!? だったらヤバすぎるって!
ーーええええぇぇぇっっ、嘘でしょ!?
段々寄ってきてるっ……これ一人じゃ無理~!!
私の得意戦法は奇襲、不意打ちのみだから~!
真正面から戦ったことないし囲まれたら死ぬって。なんたって武術スキル0で接近戦最弱だから!
ーーと、とりあえずダッシュで少しでも囲みの外へと逃げよう。
うわっ、追いかけてくるっ。
足の速さはこっちが勝っているけど、魔法を打つのに足を止めたらすぐ追いつかれる。
どこかゴブリンが登ってこれないような木の上に登らなきゃ。幸いここには木だけは選び放題、無駄にあるから。
『俊足』スキルをフルにしてダッシュし、距離を稼ぐ。
なんとか囲みを切り抜け、扇形ぐらいに引き伸ばしたところで一番手近で高そうなのに素早く登った。
ーーここから反撃するしかない。
ゴブリンって木登り得意だったっけ? 分からないけど、今は下手なことに賭けようと思いますっ。
では早速……。
『
よしっ、先制攻撃の二連続は成功、両方とも着弾したっ。
今できる一番派手な大技を放った後は、さすがにちょっと怯んだのもいるみたいで、近寄って来ずに周りをソワソワとうろつき様子を見ているだけの個体も出てきた。
見た感じ……特にリーダーとか、上位個体とかは居ないっぽい? 群れ同士で連携して襲って来ることはなさそう……。
ーーだったら手を出してこない今がチャンスだ、この隙に魔法をたたみかけて更なる混乱を招いてやる。
一匹ずつ確実に殺るとかしなくていい。まずは戦意を喪失させることが先決。
……まぁ、真っ先に逃げておいてアレなんだけどさ。
でも反撃はここからだからっ、あれは戦略的撤退だからね! 今からこっちが格上だって、手を出しちゃいけない奴だって虚勢でもいいから思わせてやるっ。それで逃げてってくれたら……逃げてかないかな……逃げてって欲しいなぁ切実にっ。
幸いまだ魔力は満タンだし、おやつ代わりに自家製の、MP微量回復効果付きのパンの実やポポの実をモグモグしてたばかりだから残量を気にせず撃てる。
支援魔法の『MP回復』と『HP回復』もバッチリかけてあるから、魔力・体力ともしばらくは大丈夫のはずだし。
ーーよしっ、じゃあ全力で攻撃再開するよ!!
気合を入れ直し、樹の上からゴブリンに向かって次々と火魔法を放つ。
集団には『火炎噴射』を、バラけているものには『火矢』を放って牽制しつつ、囲まれないように注意しながら途切れることなくバンバン魔法を撃っていく!
無駄打ちの心配なんて必要ないほどの群れ。
う~ん、これは辛いっ。
息つく暇がない。
魔法を掻い潜って、ワラワラと近寄って来てるしっ。
もうやだっ、倒しても倒しても次々来て切りがないよ、絶体絶命のピンチなんですけど!?
誰か助けて~!!
ーーと、その時……。
切実な心の声が聞こえたわけじゃないだろうけど、タイミングよく助っ人が現れた!
狼人族の青年だ。
「大丈夫か!? 加勢する!」
身長ほどもある大剣を持って、群れの中に飛び込んできた!
勢いに任せて振り下ろし、薙ぎ払い、ひとなぎごとにまとめて五体ぐらい吹っ飛ばし、次々と刈り倒していく!
ーーなんだこのヒーローみたいな登場の仕方、かっこ良すぎるだろ!
あまりの勢いに、それまで様子見をしていたゴブリンたちが我先にと散り散りに森の中へと逃げていった。
それでもまだ向かって来るやつはいるんだな、これが!
もうっ、しつこいっ!
暴れまわってくれている狼人族さんに魔法で援護射撃をしつつ、『索敵』で残数を確認しようとしたんだけど……。
そんなことをせずとも縦横無尽に暴れ回って、瞬く間に殲滅してしまった!
なにそれ!? ゴブリンとはいえあの数をほぼ一人でこんな短時間にっ、信じられないっ。
この人スッゴク強い!
めちゃくちゃカッコいいんですけど!?
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