84話

「まさか、来るとは思わなかったな」

「貴様らが来るという事は、第七のヤツが殺られたと言うこと、だな」


 魔族のナリをした銀髪と茶褐色の肌をした顔から不敵な笑みを浮かべている全身甲冑をきた男が二人腕組みをして俺たちに話しかけてくる。

 よく見ると向かって右の騎士は、少し長そうな剣の切っ先を地面に刺して鍔に両手を掛けいる。そして、その横にいるもう一人の騎士は、少し大柄な体型と右手に持っている棒の先には数多くの棘が施された鉄球が、転がりそれと棒と鎖で繋がれている。

 コベソとトンドを馬車に残しユカリ達と共に俺とは、二人の魔族と相対している。


「貴様が、勇者ユカリか!!」

「うーむ。 見た目からして、そっちのエルフの方が強そうに見えるが」


 騎士二人からの視線を受けるリフィーナは、目を泳がせていたが、何も発することは無かった。

 そして、ユカリが口を開く。


「強そうに見てなくても結構です。 でも私達が、あなた達を倒しそして、魔王ノライフも倒します」

「あぁっ?」

「たかが第七の奴を倒しただけで調子乗ってるんじゃねぇぇぞぉっ」


 向かって右の騎士が、帯剣していた剣の柄に手をかけるとその横の騎士は、持っている棒をジャラジャラと鎖の音を立てて鉄球を地面に転がしている。


「フェルトォォッ」


 左側の騎士が、鉄球を転がしていたと思っていた矢先、体をひねり鉄球を飛ばしてきた。

 それを即座に反応するリフィーナの言葉にフェルトは、大盾を構え鉄球を弾き防ぐ。


「良くこれが、防げたな大盾使いのお嬢さんよぉ。だがなぁ、この第五騎士団団長である俺の自慢の武器であるこのフレイルが、貴様らを始末してやる」


 フェルトは、腰を少し下ろし大盾を構えたまま二人の動向を探っていると同時にリフィーナとユカリにミミンも溜飲し様子を見ているが、既にユカリは、防御系のスキルを展開していた。

 棘付き鉄球を振り回しながら不敵な笑みをする第五騎士団の団長だが、その隣にいる騎士も口角を上げる。


「この第六騎士団団長もいることを忘れるな。 それに俺達の部下もいるんだ」

「そうだな。 お前らコイツらをやれぇっ!!」


 第五騎士団団長が、その後ろにいるスケルトンやらグールなどのアンデッドを前に進攻させ、骨や鎧を軋む音を立てながらユカリ達の前に並び騎士団団長二人の姿が見えなくなる。


「リフィーナ、ユカリ」

「分かってる。 ガード頼むよ」

「この後ろに行かせないよう注意っ」

「分かってるわ。 スキル使うからっ」


 フェルトの大盾スキルで、スケルトンやらグールがフェルトの大盾に注意が向く。そこにリフィーナとユカリの攻撃でアンデッド達が次々となぎ倒される。アンデッドの始末としてミミンの放つ炎の魔法が放物線を描いている。


「ミミン、次」

「むーっ、てぃっ」


 アンデッドの脚を切り落しているリフィーナの攻撃、スケルトンなら大腿骨や坐骨を破壊して動きを封じミミンが、それに魔法でトドメを刺す流れのようだ。


――――しっかりと連携とれてるなぁ。フェルトの挑発のスキルもだし。これならこっちにアンデッドは来なさそうだな。


 何度もフェルトは、プロヴォウグ挑発のスキルを使いフェルトに意識が向かなくなったアンデッド共の意識をフェルト自信に向けさせ動きを封じている。

 俺とペルセポネの後ろにはコベソ達が馬車の中からユカリ達の戦いを眺めていて、それを俺達はあのスケルトンを含むアンデッドや二人の騎士から護っている。


「なんか暇よね」

「あぁ、暇だな。 コベソ達の護衛……冒険者らしい依頼なんだが」

「そうね。 いつもユカリ達の戦いを観ているような気がする」

「たまに、参戦しに行くだろう」

「私としたら殆ど魔石目的じゃない。 あとは不快な気持ちになった時だけど」

「今は、不快なでは無いのか?」

「不快でも快適でもない……。 暇ね」


 掛け声が盛んになるユカリ達の戦いを、何も考えず視界に入れている俺とペルセポネ。すると、あの騎士団団長と同等程の鎧を着けたスケルトンが、増えてきた。


「コイツらっ」

「リフィーナ。 そいつらスケルトンナイト」

「多分そうだと思ってた。 見た目からだけど鎧でぇ」

「ユカリ、リフィーナ。 少し後退するわ。 ミミン援護して」

「ファイアーアローっ」


 スケルトンナイトは、重量感のある鎧を纏っているせいかスケルトンよりは歩みが遅い。ユカリ達は、少しずつ間合いを広げ体制を整えようとしている。

 ユカリだけは、スケルトンナイトの鎧に手こずりながらも高レベルで力もある為に押し倒したり、時には力任せに跳ね飛ばし、更に髑髏の顔だけは丸見えなので、剣で突き刺しスケルトンナイトを、倒していた。

 だが、リフィーナは、スケルトンの行く手を塞ぎミミンが、倒す戦法が取れなくなった今、リフィーナに分が悪い。


「ガッハッハッ。 スケルトンナイトの鎧は火属性耐性がある。 ある意味俺たちの鎧もだがなぁ」

「アンデッドで火属性耐性持ち。 勇者であるアイツも少し苦戦しているからなぁ」

「そうだな。 早くアイツらの遺体をを魔王ノライフ様に差し上げたいぞ」

「よし、スケルトンナイトよっ。 その腹だしエルフを集中攻撃しろっ!!」


 第六騎士団団長の声が、この辺り一帯響くとユカリには三体のスケルトンナイトが囲むようにユカリと戦っているが、残りの十数体スケルトンナイトが、リフィーナに向け一直線に歩き出した。


「ちょっ、誰が腹だしエルフよっ。 確かに出しているけどぉっ」

「今、そんな事言っている場合では無いわ」

「むーっ。 クリムゾンスピアも少しだけしか足留めにもならないぃっ」


 鎧と骨の軋む音が、リフィーナに牙を剥く。

振り上げる武器の数々がリフィーナに向けられる。

エルフのリフィーナは、振り下ろされる武器を素早さで回避している。

 だが、着地によろけるリフィーナ。


「ちょっぉ」

「リフィーナっ」


 スケルトンナイト一体の持つ剣が、薙ぎ払いでリフィーナを狙う。そこに間髪入ったフェルトの大盾で防ぎ切るが、十数体のスケルトンナイトの振るわれる攻撃の数々。新調した大盾に幾度なく打ち付けられる攻撃に耐えるフェルトは、次第に姿勢が低くなる。


「フェルト、このままじゃ」

「そうね。 まだプロヴォウグが効いているからだけど」


 ミミンの真紅の槍クリムゾンスピアが、フェルトの大盾を打ち付けているスケルトンナイトを目掛け何十発も放っているが、苦しむ気配は見られずミミンも、少し顔色が悪くなっている。

 リフィーナ達の状況を気になっているユカリも、三体のスケルトンナイトの攻撃を防ぎ回避し何度も斬撃を繰り出しているが、手こずりだし未だに倒せていない。


「リフィーナっフェルト。 だ、大丈夫?」

「今の所はねっ。 フェルトがぁ持つかぁってとこ」

「こっちは今、耐えるだけだからだけど、ユカリは?」

「直ぐに倒せそうに無いっ。 さっきより少しだけ、なんか硬くなったような」

「むっむっむーっ。 いやぁ、一体コッチに来たぁ」

「ミミンっ」

「ガッハッハッ。 今更かぁっ」

「フッ。 そろそろ終わらせて貰うぞっ勇者ぁっ」

「おい、ファントム。 スケルトンメイジ。 奴らに放て」


 マナラの街の外壁に、十数体の人型の黒い影と共にローブを着たスケルトンも十数体横並びで、こちらに手をかざしている。

「黒いのあれが、ファントムか……。 ん? ペルセポネ……あぁ、そうだよなぁ」


 ファントムに気を取られて凝視していたらペルセポネの姿が忽然と無い事に気づく。


――――あぁ、あの騎士、妻に目的植え付けてしまったようだ。


「いやぁ。 ファイアーボール。 ファイアーボール。 ファイアーボールっ、ファイア、ふぁっ」


 涙目になり声も掠れるミミンに、武器を大きく振り上げたスケルトンナイトが、ミミンの前に立ちスケルトンナイトの影に覆われるが、直ぐに晴れる。


「い、いいいぃぃぃっ?」


 ミミンの目の前にいたスケルトンナイトの姿が、まるで紙吹雪の様に散りばっていると、その先には二本の剣を持ったペルセポネのかける姿があった。

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