柚子の狐

作者

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★★★ Excellent!!!

最強の妖怪の娘でありながら、その記憶を失っているがために人間として妖怪と戦う少女・柚子の物語。

夢に現れる前世の記憶の断片や、伝承に残る白面金毛九尾の狐が為した悪行の数々を知る内に、しだいに己の中の邪悪な存在を意識していくーーという展開が魅力。

自分は人間なのか? それとも人に仇なす凶悪な妖怪なのか? 時に自分の正体に葛藤しながらも、陰陽団の仲間と共に成長していきます。

仲間の少年少女たちは、みんな年齢相応の感性を持ついい奴らばかりで、彼らと青春を共にしながら絆を深めあっていく様子は、爽やかで読みやすい。

そして妖怪とのバトルでは、各々の個性が光る少年漫画のような戦いが繰り広げられる。少女が主人公の陰陽師もの、というと、少女向けなのかなと思いがちだが、この点ではむしろ男性にウケそうである。

敵となる妖怪たちにも個性があり、ただ倒して終わりとはいかない。愛を知って人間に寄り添う妖怪や、命を賭した自己犠牲により他者を救おうとする妖怪など、本当に倒すべき敵なのかと考えてしまうような者もいて、それが主人公たちに新たな葛藤をもたらすと共に、物語にダイナミズムを生んでいる。

柚子にとっては自己の実存への不安。記憶を取り戻し、九尾の娘として覚醒を果たした時、自分に人としての心が残っているのか。妖怪の部分は本当に邪悪なものなのかーーそういう不安が、この先ずっとつきまとうのかなと思うと、彼女からますます目が離せない。

やはり青春現代伝奇はいいなぁと、改めて思わせられる一作です。

★★★ Excellent!!!

 現代和風ファンタジー。
 大妖怪の娘の転生体である主人公の少女が、妖怪でありながら妖怪を狩る──という、王道伝奇となっております。
 自らの宿命に対する葛藤、同級生の仲間達との友情、そして血風入り乱れる死闘、と、奇を衒わぬ直球な物語。
 各キャラクターの心理描写などもしっかりしており、読めば読むほど引き込まれていきます。
 そしてその上でテンポよくストーリーが進んでいく所が実に素晴らしいです。仲間達一人一人と着々と心を通わせていく様は、これぞ青春と言った所。
 主人公を筆頭に、メインキャラ皆が清々しい性格の少年少女達なので、清涼感溢れる物語になっているのも高評価点。
 総じて、正道を往く和風青春ファンタジー。とても読みごたえがあり、続きが待ち遠しくなるものとなっています。
 もっともっと多くの人に届く作品になってくれることを祈ります。