本当の再会


「…………………え?」




 綾が指の隙間から海斗を見つめている。




(今、俺と対話していたのは……俺の幻想じゃなくて…………綾?なのか?)


 彼の心中に応えるものは誰もいない。




「ようやく静かになったよ。で?どうするんだい?」




 王はため息を吐いて彼らに問いかける。




「ユキナ…………なのか…………?」




 海斗の目をまっすぐに捉える青い目。その目は何時ぞやのあの日と同じで、濁りが見えなかった。




「俺は断る」




 亘が王に答える。交差した空間で全く別の話が広がる。




「なぁ…ユキナなのか?」


「そう………じゃあしょうがない。目の前で奪われるのを目に焼き付けな。あとそこの彼はどうしたら?」




 王は海斗を指差す。




「あぁ………。彼は………断りますよ……。きっと」




 亘の声が哀愁を伴う。丁寧語が似合うセリフだった。




「そうかい………。まぁ人質は一人で十分だしね。そこの彼は殺して」




 王が兵に命じる。




「ユキナ!な………のか?」




 海斗は首から血が溢れるのを気にもせず彼女に問い返す。


 唯は何かを信じているのか何もしようとはしなかった。




「やめて!」




 鋭い悲鳴が上がる。刹那、海斗の首を切ろうとした剣は床に落ち、兵は全身から血を吹き出して………死んだ。




「なっ!なんだこれは!すぐに彼女を拘束しろ!」


「本当に………ユキナ…なのか?」


「もう………やめて………。オルを………オルだけは……傷つけないで………」




 兵は彼女が使った魔法に夢中になっていた。綾に恐る恐る近づき腕輪をつけようとする。




「破壊、斬撃。綾ねぇさん………。お疲れ……」




 だから………唯の放った魔法を回避できたのは王しかいなかった。


 唯の魔法で海斗と亘の腕輪が壊れ、外れる






「なんだその魔法は!?」


「チッ、仕留め損ねたわね。でもいいわ。結界、追尾弾、乱気流」




 だがその王の限界は早く、すぐに追尾弾に撃ち殺された。




「俺が………その間違ったことを教えて……最強になったのは………ユキナしか……」


「王様!大変です!迷宮から魔物が溢れ出しました!…………!」




 一人の兵が入ってくる。しかし王の間の惨状を見て顔を引きつらせ、逃げていった。




「もうここには居たくないな。宿まで転移できる?」


「距離がちょっと難しい…………。途中の道のりもあるし………」


「じゃあ転移魔方陣まで転移してくれる?」


「わかった……。気絶したらよろしく………」




 亘が唯に頼む。唯は心得たとばかりに大きくうなづいて黙ったままの綾と問い続ける海斗の手を掴む。




「亘は荷物の意識してくれる?」


「おう。任しとけって」


「じゃあ転移」




 そして四人は光となって消えた。そこには血生臭さと涙の跡しか残っていなかった。




====




 彼らは転移魔方陣の上に出てきた。だが、その魔方陣は発動した瞬間で……。




「あっ!」




 亘と唯だけがその魔法陣に乗り、海斗と綾は乗り損ねてしまった。


 亘と唯が目お前から消えていく。そして突然現れた二人に驚きつつも、最終的に男は建物の外に二人を放り出した。








 唯は地図で大体の王城と転移魔方陣の位置を把握していなかったために魔力が切れ、亘に抱きかかえられている。


 はぐれた海斗たちを気にして叫ぶ。




「向こうに置いてきた二人を乗せてくれ!」


「は?時間がないんだ戯言を言うんじゃない」




 そう言って簡単に放り出された。亘は何が起こったかわからず、立ち尽くしていた。








====




 魔物が押し寄せてくる。後ろにはオルが何かをつぶやいて座り込んでいる。




「ずっと守られ続けてきたから…………。今だけでも………」




 私は進んでくる魔物をはじけさせる。周りには誰もいなかった。


 爪牙が私に迫る。でも当たることなく目の前で落ちていく。




 私に向かって突き進む魔物はただの肉片となって地面に転がる。




「私が、守ってあげるから…………」




 何百匹倒しただろうか、肉ダルマが見えた。辺りを転がりながら死んだ魔物の肉を取り込んで大きくなっていく。




 血液で肉ダルマを破り、殺す。でもまた再生する。が、その間は動けていないみたいだ。


 なら…………。


 私が……………。ここで歯止めをしてたら………オルは………。




 血が吹き出る。


 再生する。


 血が吹き出る。


 再生する。


 血が吹き出る。


 再生する。


 血が吹き出る。


 再生する。


 血が吹き出る。


 再生する。


 血が吹き出る。


 再生する。


 血が吹き出る。


 再生する。


 血が吹き出る。


 再生する。


 血が吹き出る。


 再生する。


 血が吹き出る。


 再生する。


 血が吹き出る。


 再生する。


 血が吹き出る。


 再生する。


 血が吹き出る。


 再生する。


 血が吹き出る。


 再生する…………………。




 何回目だろう…………。


 まぶたが重くなり、身体がふらつく。尻餅をついたがそれでも肉ダルマに向けた手は降ろさない。






====




 綾がユキナ?


 ユキナなのか?答えないのは肯定?


 ユキナが今まで俺を愛してくれていた?ユキナが………………。
























































 ユキナが何かしている。




「…………………っ!」




 ユキナ……………。


 彼女は肉ダルマを前に手をかざし、血を噴き出させる。尻餅をついてフラフラしていても手をおろそうとはしない。




「ユキナ……………。ありがとう…………。勝つぞ」




 ユキナの腕を首に回し、支える。ユキナは驚きつつも無言で手から肉ダルマへと血の糸を繋いだ。


 俺は腕を絡ませて、そこに触れ力を使う。電気は肉ダルマに向かって血を伝い伸びる。筋肉は電気によって痙攣して不規則にはねる。




「スライムだ…………」




 ユキナが呟く。そう、肉が剥がれたそこにあったのは緑色をしたスライムだった。


 刹那、ユキナの力によってスライムが弾け、消える。




「ユキナ………………。ありがとう……………。ごめんな………意気地なしで」


「本当に………もうやめて………。もうあんな思いはしたくない…………」


「ああ…………………」




 魔物はもう来ない。俺たいは二人ともそう確信していた。







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