俺がどんな思いをして!


「串焼き四つ」

「へいおまち」


 街中で見つけた屋台で串焼きを買う。


「いや〜。異世界って感じだなぁ〜!」

「大きな声で叫ぶなよ亘」


 うん。久しぶりのものは美味しく感じるな。


「じゃあこれから…………」


 そういったときに後ろから肩を掴まれた。


「なんですか?」

「こい。お前らを呼んでいる」


 衛兵に掴まれたかと思えば腹パンで気絶させられ…………………………………………。


「かわいそうに……あの王の毒牙にかかったか……」

「しっ、大きな声で…………」


 何が……起きている?



ーーーー


「おっ、目覚めたみたいだねぇ」


 目を開けると赤いカーペットが敷かれた豪華な場所だった。手は……後ろに組まされている。

 目の前の青年にちょうど跪かされる形だ。魔法は……。


「それは魔法を制御する腕輪でねぇ」

「何をするつもりだ」

「いや〜手荒なことはしたくなかったんだけどさ。交渉がある。僕はこの国の王だ。

 で、まぁそこの二人を手放せと命令するわけだ。猿でも……」

「わからないな」


 王は………。薄く笑う。


「手放せば一生分の生活は保障しよう。どうだい?」

「断………」

「断る!」


 亘が……叫んだ。


「命に代えても……ぜってぇに渡さねぇ」

「そうかい。じゃあそこの二人を起こしてね〜」


 手慣れているのか衛兵が俺たちの首に剣を添える。そして他の衛兵が綾と唯を起こした。


「腕輪は魔法制御の効果があるから意味ないからねぇ〜」

「なっ!ここ何なのさ!兄さん!」

「王だ………。そして……誘拐だ……」

「人聞きが悪いなぁ。まぁ良いや。君たち二人に聞くよ。僕の妻になればそこの二人は助かる。」


 暗にそれは妻にならなければ死ぬと言っているようなものだ。


「もちろん一生の生活を保障しよう」

「腕輪を外しなさい!」

「君ぃ…。反抗する顔もかわいいねぇ」


 王は唯の顎を持って覗き込む。


「じゃあ外してあげよう。でも攻撃した瞬間にそこの男二人は死ぬ」


 そう言って王は二人の腕輪を外した………。徹底的に反抗してやる。


「一ついいことを教えてやる。そこの女は世界一の魔法使いと世界一の賢い女だ。


 弱点の狙いどころはいいが俺たち人質は生きていてこそ人質なんだぜ?」


「へぇ大きく出たねぇ。僕が風になれたとしてもかい?」




 なめているのか自分の魔法をばらすとは。




「ばかじゃ……」


「悲しい奴だなぁ!俺たちが手放した後で洗脳するのかなんなのかしたねーけどよぉ!

 相手の気持ちを示威的に変えないと人から恋い焦がられる事の出来ないようなゴミが!」




 亘が俺を遮って叫ぶ。その通りだ。




「なんとでも言えばいいさ。自分の女ですらちゃんと守れない男が何を言っているんだか……」




 自分の女を守れない?俺が?海斗が?オルトが?どっちも?守る?




「守りてぇような女じゃなかったよ!あんな!俺を裏切って!クソみたいなやつについて行って!

 守る?ふざけんなよ!俺は!俺は!あんな!あんな女を……………」


「大丈夫かな?死にたい?死んだほうがマシ?」


「ああ!あんな女を守るぐらいなら死んだほうが!」




==堂上唯==




 私は唯ねぇさんがこの世界からの転生者であることを知っている。霧谷渓谷で兄さんが死んだ時に叫んだ言葉を聞いたから。だから……横で彼女が泣いている理由がわかっている。


 きっと洗脳されていたんだろう。


 きっと何かを脅しの種にされていたんだろう。




 嗚咽を上げる彼女の背中をなでる。


 もう決意は固まった。時空の保存はできない。


 私が………全てを壊せば………。




==鳩山綾==




 私ならこの状況を打開できる。でも同時に彼の寵愛も失う。それは私にとって彼を失うのと等しい。




「大丈夫かな?死にたい?死んだほうがマシ?」


「ああ!あんな女を守るぐらいなら死んだほうが!」




 彼の言葉は胸に刺さった。嗚咽が漏れていく。手で顔を押さえて涙を止める。


 男が彼をせせら嗤う。


 唯ちゃんが私の背中をなでる。


 何もかもがいや。私を罵倒する彼の声も。私をなでる手も。彼の首に当たる鉄の鈍い光も。噛み締めた唇から感じる血の匂いも味も。




「俺は…………。そりゃ考えたよ!あいつが!ユキが洗脳されていることも!」




 突然耳に響く彼の声。




「何度も考えたさ!俺を裏切るならもっと早くても良かったじゃないのか!


 本心では彼女が助けてって叫んでるんじゃないのか!


 この世の全てを破壊すれば洗脳も解けるんじゃないのか!」




 そう。ならなんで!




「でも!俺は!力がないんだよ!どんなに叫んでも!どんなに憎くても!俺自身の力は限界を超えないんだよ!勝てないんだよ!」




 でもだからって!




「考えたくもなかったんだ!本心じゃないからって目の前で俺じゃない男とイチャイチャしてるシーンも!


 どうすれば洗脳が解けるか見たいな果てしないし全く無理で無謀な願いも!」




 そんなことで!そんな貴方だけみたいな!




「私だって!嫌だったよ!


 なんで助けてくれないの!


 なんで気づいてくれなかったの!


 なんで頑張ろうって思ってくれなかったの!


 なんで目の前から消えたの!


 なんで私を殺してくれなかったの!


 なんで!どうして!どうしてなのよ!」




「俺がユキを殺せるとでも思ったか!彼女を!わかっていたよ!殺されることを望むことも!全部全部!


 でも!もし洗脳じゃないなら!悲しいだろ!ユキが死にたがってないのに!


 幸せになって欲しい人に!裏切られたとしても!それでも愛する人を!殺せるのか!」




「私がわからない時に教えてくれた足し算も!


 私がオークに襲われそうになったあの洞窟で助けてくれたことも!


 私の為にと間違ってても血は水からできているって本を何度も解説してくれたことも!


 私が助けてって叫んだ時にはいつもボロボロになって死にそうになっても私だけは無傷だったことも!


 あなたのお兄さんが危なかった時には片手を犠牲にしてでも助けて!しかもそれを私の為にだって言ってくれた安い愛の囁きだって!


 全部私がして欲しいって思ったことをしてくれていたあなたが!なんでわかってくれなかったの!」




「そんなテメェがユキナを語るなよ!誰だよテメェは!」


「全部全部思い出したよ!大事な思い出にしてたよ!


 最初に会った時からオルだって気づいてたよ!この人は運命の人だって思たよ!」




 私の中の不平不満が溢れてくる。私だって聖母でも神でもない!そんな一方的に私を責めないでよ!なんでわかってくれないの!




「だから誰だっつてんだよ!消えろよ!」


「私はユキナ!あなたの最愛の、生涯を一生を約束した!ユキナ!


 なのに!あなたは!」


「俺が!どんな思いをして!……………………………………………………え?」




 彼は私を見つめて固まった。私は目をふさいでいた指の隙間から彼を見つめた。












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