鳴ったのは俺の腹でした。はい。

「わぁ!」




 唯が草原で手を広げてクルクル回る。もちろん服装はこの世界にあったものに変えてもらった。




「ちゃんとこの世界の言葉使えよ〜」




 復元してもらった記憶にある言語で注意しておく。




「ここどこだ?」


「クレイズ領、サルバ村の牛飼い用の草原だ」


「異世界なんて始めてきた!」


「そりゃ当然だ。そうじゃなきゃ困る」




 唯の感嘆の叫びに突っ込む。


 あれ?綾…………。




「あ〜や!どうしたんだそんな難しい顔して」


「んっ!か、カイ…………。びっくりさせないで……」


「スマンスマン。じゃあみなさんの質問に答えましょう!この世界に関して質問は?」




 この場に居座っていちゃダメだ。夜になってしまう。




「はい!」


「どうぞ亘くん!」


「え〜っと…………。あっ、わかったからいい」


「え?」




 こいつなめてんのか?




「カイ…………。記憶抽出でカイの質問の答えは全部わかるから……」


「わぁ!兄さん!微分・積分教えてくれてありがとう!」




 唯が嬉しそうな声を上げる。唯が喜んでるならいい………って!




「おい!それは返せ!その知識は返せ!」


「別に減るもんじゃないし?」


「ダ〜メ〜だ!自分で勝ち得なさい!」


「ククク………」




 綾が笑う。




「兄妹みたい………」


「「兄妹です!」」




 俺と唯の声が被った。そして四人で笑ってた…………。




ーーーー




「こっちだ」




 草原にある倉庫に忍び込む。




「おい、街とは逆方向だぞ?ってあ!」


「記憶が一緒だと説明しなくていいから楽だ。これぞ!我がたった一人の男友、土操使いが作った地下道!」


「ぼっちじゃなかったんだ………」




 倉庫の隅の床板をはがし、栓をひねる。そして真ん中の板を剥がすと出てくるのは都会で毎度おなじみのマンホール。




「うわ〜………。すごいね………」




 蜘蛛の巣があったり、虫が巣作ってはいるものの、まだまだ崩れなさそうだ。


 板を戻してから梯子を下り、すぐ横の紐を引く。すると蓋は完全に閉まった。




「真っ暗………」




 綾が一言述べる。




「おう。壁伝いに歩け〜」




 地下道を通って城壁を抜けると一つ目の梯子があった。




「ちょっと待ってろ」




 三人を置いて梯子を登り、途中の横穴に手を伸ばす。




 チャリ




 という音ともに手が麻袋に触れる。そこから手探りで10枚ぐらい引き出し、腰につけてあった麻袋にしまって、梯子を下りた。




「どうした?」




 亘の質問に戦利品の銀貨を手渡す。




「この真上は俺の家の茂みだ。子供の頃のな。そしてこれは俺のへそくりだ」


「わお………。すっげぇな……」


「ちなみに製作者である我が友は最後に聞いた話だと俺たちから一番離れたところにいる」




 そう言って下を指す。暗いのに慣れたのか指の方向が見えたようだ。




「てことはアルゼンチンね」


「おう、ここが日本ならな」




 記憶抽出で確かに情報は送ったが言語と少しの常識ぐらいみたいだ。その都度教えようかな………。




「さぁていこうか」




 再び壁伝いに歩く。そして二つ目の梯子を上った。


 ハッチを開けて石の板を持ち上げる。カビ臭い臭いが鼻をついた。




「くさ〜い」


「貧困街の裏路地だ。一番バレると思っていたところなんだがそうでもなかったか。


 さてと………行きますかねぇ…………異世界モノの十八番………」




 地下道から這い出て…………


 ギルドにやってきた。




「すいません………。登録してもいいですか?」




 身長170ぐらいの俺らは小さい。台に顎が載りそうだ。唯に至っては額から上しか見えない。




「何歳ですか?未成年は登録するために保護者の許可が必要ですが……」


「えっと…………。17と16歳です」




 そう言いながら銀貨を一枚机に置く。




「そ、そうですか……。ではここに名前と……得意魔法や武器を……」




 ちょろいな。銀貨を置いただけで職務放棄かよ。あと登録料は取らないんかい!




 渡された紙とペンに名前を書く。ちなみに偽名とか技術とかはこう。


 堂上海斗…カイト・雷魔法、短剣


 鳩山綾…アヤ・解体


 紅月亘…コウ・片刃剣


 堂上唯…ユイ・土魔法




 ん?偽名じゃないって?亘だけじゃんって?同じことを亘にも言われたよ。


 雷魔法にしておいた理由はおおっぴらに雷操が使えるから。




「カイトさんにアヤさんにコウさんにユイさん………。珍しい名前ですね」


「そうですか?まぁ村でもそう言われましたからねぇ……」


「はい、登録完了です。説明は必要ですか?」




 いらねーよ。このクソババア。




「大丈夫です。失礼します……」




 そう言ってギルドから出る。あ〜むかつく。




「兄さん!」




 唯が日本語で呼びかける。




「唯、ちゃんとこの世界の言葉を使って……」


「あっ!」




 ポンコツだな………。よし!切り替え切り替え!




「ちょっとついてきて」




 そう言って民家の隙間の人気のない路地を歩き、草原と逆方向に進む。




「っと………。まった。俺はこの感覚を知っている。誰かの腹の虫がなく」




 俺は振り返って立ち止まる。数秒後、なったのは俺の腹でした。はい。

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