9章 〜この架空の世界で得るものは〜

この世界を終わらせよう



 夢……か。


 隣の綾の遺体は変わらずそこにある。せめてもと体を上に向けさせて胸の前で手を合わさせた。後で……会おうな。



 校庭に二人の影が入ってくる。唯と亘だ。立ち上がって落ちた短剣とか刀を拾う。


「兄さん、私は何もする気がないわ。まずは二人の関係をさっぱりにしてくれる?」

「わかった。好きにしろ」


 俺に取っても都合がいい。


「じゃ、頑張ってねぇ〜隆起」


 唯は地面を隆起させてそこに座る。


「亘…。主人公とかそんな御託に付き合う余裕はないんだ」

「どうでもいい」


 吐き捨てるように言う亘。

 刀を抜く。


 早く終わらせたい。早く会いたい。


 刀と剣が交わる。弾いた反動でバク転して短剣を投げる。

 それを亘は弾いた。これじゃきりがないかもしれん。刀を地面に突き刺し、亘に向かって歩く。


 亘は全く動じない。短剣を逆手に持って亘と間合いを取る。

 亘の剣先がぶれた。その瞬間に右手の短剣を剣に添えて滑らせる。火花が散っている。


 左手の短剣で亘の剣を防ぎ、前蹴りをする。

 剣の塚に右の短剣が当たる。そこでその反動を利用し、空中で横転をして、左手の短剣で亘の脳天を貫こうとする。

 亘がバックステップでかわして、突きを放ってくる。


 それを短剣でずらして避ける。地面に着地し、短剣を握り直す。一気に突っ込んで短剣で亘の腕を……切り裂いた。と同時に太ももが熱くなる。


 その熱を無視して、ただ亘の腹に短剣をつきこんだ。


 頭の中にアナウンスが流れる。さぁ、あと一人!



「兄さん。勝負よ」


 足が痛い。体が痛い。もう、戦いたくない。


「戦わなくてもいいのよ」

「断る!」

「そ。フラッシュ!土砂崩れ!砂嵐!防護壁!飛翔!紅炎!」


 咄嗟に雷操を使った。体につけている鉄のパーツを操って空中に浮く。

 見下ろすと地面が見えない。ところどころ赤く光るのは紅炎だろう。


「兄さんの切り札はそれ?」


 唯が余裕そうに笑う。


「雷操……ね。ふふ。落雷、精神崩壊」


 落雷に気を取られて………当たっ………・。




 綾!綾が!綾がいない!


 綾ねぇなら死ねば会えるよ?


 死ねば?じゃあ死にたい!


 そ……。バインド。ほうでn……。


 約束が叫ぶ。叫ぶ約束は忘れていない。俺の、心を…。


「まだ死ねない!」


 雷操を解除して地面に降り立つ。突き刺された刀を抜き取り、もう一度空を飛ぶ。


「兄さん。お帰りのバインドだよ」


 その魔体を刀で弾いて唯に突き進む。


「シールド。境界線。反転世界」


 視界がぐにゃりと歪む。色まで変わる。どう進めばいいのかわからない。


「魔力使いすぎちゃった。紅炎」


 刀をめちゃくちゃに振る。でもそれは叶わなかった…………。


「兄さん。私の勝ち。私に勝つにはもう少し必要だね」


 体が落ちていく。手を伸ばす。あれ?手が………ない?



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