こんな世界に価値があるのかわからなくて。


 校庭に入ってくる生徒を綾と分担して倒す。そこで、でかい敵が入ってきた。


「ふん。これが校庭の生存者か…」


 低い声で言う。攻撃しようにも隙がなかった。


「綾、下がって」


 後退しながら腰の刀を鯉口を切る。抜くとそれは日緋色に輝いた。


「では正々堂々戦おう」


 大剣を相手は構える。鋭い振り下ろしから入ってきた。刀で受けるが……重い……。吹き飛ばされる。後転して勢いを殺す。立ち上がってもう一度構える。


 袈裟懸けをサイドステップでかわしつつ剣筋をずらす。幾度となく振り下ろされる大剣を受け続ける。


 綾が………。綾がいる………。


 壊れそうなほど受け続けた。こんなに強い男は一人しか知らない。


「ここまで耐えたやつは初めてだ。だが…剣王の称号は伊達じゃない…」


 やはりそうだ。剣王……大会の黒星を塗り替えてやる。


 真横に薙がれる大剣をブリッチでかわして刀を逆手に持って突く。

 が、それを体の前で回転された大剣に弾かれる。


 体が横に傾く。空いた脇腹に降り下される剣を剣王の足元に寄って逃げ、足に刃を当てようとする。が、半歩引いて逃げられた。と思ったらそのままサッカーボールのように蹴られる。

 体が吹っ飛ぶ。痛い、体の節々が痛い。


 でも、綾が!綾がいる!


「もう一回!」


 立ち上がって刀を振り上げ、真っ直ぐにおろす、フェイントで剣王の胴に刀を差し込む。

 それを反転して避けられ、その回転で首筋を狙われた。


 ひやっとする。でもまだここで……。死ぬわけにはいかない!

 体をひねってなんとか逃げる。が、切り込まれた剣には受けるしか道がなかった。また吹っ飛ばされる。


 痛い!でも!綾は!綾と一緒にいたい!


「俺は!死んでねぇ!」

「そこまでするのはそこの女のためか」

「それで!何が悪い!」


 斬りかかるが、全て片手で受けられる。


「なら全力で叩きのめすのが流儀であろう」


 大剣をもう一本出してきた。これが本気か……。

 その剣は紫色に怪しく光る。


「行くぞ!」


 二本の剣で両側から切り込まれる。しゃがんで前に突っ込む。そして太ももに刀を差し込むが膝蹴りのカウンターを食らう。またしても吹っ飛ぶ。


 でも!ここには!


「ここには守るべき人がいる!」


==鳩山綾==


「ここには守るべき人がいる!」


 私は悩んでいた。もう彼を傷つけたくない。

 彼はもうこんな風に傷つくべきじゃない。


 私には彼を助ける方法がある。簡単に。でも、それは私が彼からの愛を受けられなくなる。


 私の正体をバラしたら彼は傷つく。だから使えない。

 これは私のエゴ。それなら最初から彼と接触しなければよかった。


 私は今世こそ隣の人を一生愛したかっただけ。それが………。彼なのは………知らなかった。いや、知っていたけどもう戻れない。


 私の中をいろいろなエゴが錯綜する。死んでしまいたい。彼さえこの世にいなければ私は死ぬことができる。死ねる。死ぬことができたらどれだけ嬉しいか。


 彼がいなきゃ、彼さえ!彼さえいなければいいのに!



 私は何を考えているのだろう。これは唯一のチャンスなのに。彼ともう一度愛しあえるチャンスなのに。


 でもそれは私に向けられた愛であって私自身に向けられた愛じゃない。そんなもので満足できない私が恨めしい。こんな奇跡ほどの確率すらないチャンスで欲張ってしまう。


 こうやって悩んでいる自分が嫌い。私は何をすればいいのかわかっている。でも踏み込む勇気がないだけ。

 こうやって悩むことで時間稼ぎをしているだけ。


==堂上海斗==


 何度目かわからない。でもその時に起こった。


「綾!」


 俺が切られる寸前で体を剣と俺の間に差し込む綾。俺は相打ちにと刀を突き出していた。


 綾の刀が綾をつき抜く。そのまま驚く剣王に突き刺さる。そしてそのアナウンスはほぼ同時に鳴った。


『角なし兎、計31kill』 


 その瞬間、綾が笑った気がした。同時にその口から血が溢れる。


『鳩山綾死亡』


 でも瞬きをした時には、綾は地面に崩れ落ちていた。











































 あ……綾?





























「綾?おい!嘘だろ!綾!死んでないんだろ!綾!生きてるんだろ!なぁ!おい!」


 体を揺さぶる。綾は反応しない。


「嘘だろ?綾?なぁ!海外では死んだ後に生き返る事例もあったんだろ?死ぬなよ!」


 口から血がたれる。俺は………。


「死にたい………」


 死んでいいのか!綾が!


「綾はもういない!」


 綾は生きている!世界に!本当の!


「じゃあこの世界に何の価値があるってんだ!」


 綾との約束は!


「綾がいない綾との約束なんて!」


 綾がいる!俺を見ている!待っている!


「俺は!生きなきゃなんねぇのかよ!」


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 空が青い。


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