その主人公は主人公自身の世界の中だけであるにもかかわらず。


「勝負だ!」


 相手の木刀を睨む。剣先が少しぶれた。これは…。突き!


 サイドステップでよけながら胴打ちをする。さすがは剣王?ひねる手首で受ける。


 跳ね返る剣の動きに従い、頭の後ろに回して首筋を狙う。流れるような動作でそれを受けられる。


 攻めても全て受けられる。何も決まらない。


「そろそろ行くぞ」


 剣王が鋭い突きから始まって流れ技が繰り出す。剣ではじいて後退する。

 同じように剣王の技も決まらない。でも、俺が押されている。


「斬激!」


 風が巻き起こり、体制が崩れる。

 そこに大きく振りかぶられた木刀が首筋に迫る。

 受けたっ…。けど力負けして、攻撃を受ける。


「技あり」


 審判のその声だけが聞こえる。

 まだ…。まだだ…。


==堂上海斗==


「亘おかしいよね?」

「ん…。なんかぐちゃぐちゃ」


 綾が答える。亘の目がうつろになりかけている。


「もっと論理的に考えられるやつだったよな」

「ん…。高校入ってから変わった…」

「だよなぁ…」


 さっきすれ違ったときに言った言葉が逆効果になったか?


「なんか…おかしい…」


 数分後に試合は終わり、亘は負けた。


ーー放課後ーー


「亘。おかしいぞお前」

「は?」

「いや、昔はもっと論理的に考えることが出来てたはずなんだけどな…」

「そ、それは!」


 思い当たる節があるのかおし黙る。


「正直よく分からねぇ。主人公とか俺が俺を鼓舞するために言ってる言葉を…」

「脇役はどうすんだよ!」


 亘が叫ぶ。なんとなくわかった気もする。


「地べたにでも這いつくばっとけ。脇役ならな」


 なるべく低い声を出す。


「俺は昔のお前が論理的に考えられるやつだから仲良くしていたが今のお前は違う。ぐちゃぐちゃだ。だったらおさらばしようか」


 ぐちゃぐちゃな思考にまみれた亘と話しても面白くない。俺は俺が好きだと思うから付き合っているだけだ。


 綾だってそうだ。一緒にいて楽しいから、生きて欲しいと思うから体を張って守るだけだ。


「じゃあな。俺は今年の校内サバイバルを綾と二人で組む。他は好きにしろ」


 冷酷な言葉を浴びせる。頭が冷えることを願おう。


 亘は唖然とした顔をしていた。











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