8章 〜「主人公だから」じゃない。彼だから「主人公」なんだ〜

渦巻く世界の中心で

「ここにチョコが4つあります。1つは綾のです。もう3つは誰のでしょう?」


 俺は机の上にチョコを並べ海斗に聞く。


「考えられるのが唯、奈々華……………。あと誰だ?」

「ピンポ〜ン。この三つは今挙げた3人からもらった」


 そう言って四つのうち三つを机の端に寄せる。


「誰だ?こわ………」

「だろ?お前とか?」


 不気味に感じ、思わず冗談が口からこぼれ出る。


「あっ、そうそう。これ」


 海斗はリュックから黒を基調にした格好いい箱を出して渡してくる。

 途端に教室は色めく。BL?綾が死んでいまうよ。


「さんきゅ。綾には渡したのか?」

「ああ。てか一緒に作って食べた」

「あまっ!」


 甘々すぎるこの二人。


「中身になんか入ってるんじゃないか?」

「それもそうだな。えっと……」


 誰からかわからない一つを開ける。


「ん?なんか入ってるんやけど……」

「貸してみ?」


 入っていた紙を海斗に渡す。


「え〜っと。昨日私は振られました………。は?告白されたの?」

「いや、されてないはずなんだけどな……」

「まぁ続き読むか。彼のためのチョコだけれども私はあなたにあげます……。寝取り?」

「違う…………はず………。あっ、ねぇさん昨日泣いてたな…………。振られたのか?」

「怖!恨みチョコ」

「ねぇさんがそんなこと………。」


 自信がなくなってきた。


「まぁいいや、それよか今日は大会だぞ?」

「あっ……。(こいつ親友の悩みを”まあいいや”で解決するのね?)そういえばそうだった。刀だけでの戦いだよな?」

「ああ。この学校は本当に勝負好きだよな……」

「このクラスからは俺と海斗が選抜されて、その選考理由が………」

「「イケメン……」」


 フザケンナヨ!俺は激昂した。


「いいんじゃない?俺たちイケメンなんだろ?」

「カイ………。格好いいよ……」

「綾も可愛いよ〜〜ひゃあああああ!」


 だめだ。この二人はいちゃつくとすぐだめになる。


ーーーー


「1年A組、堂上海斗こと『綾様の配偶者』!入場です!」


 観客席から溜息が漏れる。海斗は…………。何やってんだか………。


「2年C組、矢倉健人!入場!」

「健人〜〜!リア獣ぶっ潰せ〜〜!」

「漢字が獣になってるよ!確かにそうかもしれないけどさ!」


 海斗が観客席にツッコミを入れる。腰に差した木刀を抜く海斗。それも2本。


「それでは両者構え!始め!」

「日本だけに2本の木刀!」


 海斗のギャグが観客席に響き、静けさが訪れる。綾が隣でクスリと笑う。心の底からだろう。

 寒っ!


「じゃいきます!」


 海斗は2本を逆手に持ちその場で一回転する。木刀ってそう使うんじゃないよ………。


「堂上流!月華降臨!」

「ふざけんな1年!」


 海斗が木刀を回転しながら投げて、2年に近づく。今回のルールは肌に触れたらアウト。2年はそれを避けるため、しゃがむ。


「マタァァァァ!」


 そこに海斗が木刀を下からすくい上げるように当て、KO。早い。


「堂上海斗一本!両者開始位置に戻れ!構え!始め!」


 三本先取のこの試合。技ありも一応ある。


「真空切り!」

「矢倉健人技あり!続行!」


 2年が居合い斬りをする。ブン!と大きな風切り音が聞こえて、審判の旗が大きくなびく。海斗は風に押されたみたいでよろつく。

 そこに2年が面打ちをする。


「メ〜〜〜〜〜ン!」

「返しうけ!胴打ち!」


 相手に打ち込む位置を正確に言わなければ、一本は取れない。理由としては速すぎて審判が測定できないこともあるからだ。

 海斗が刀を一本捨て、それを斜めに受けて胴打ちをする。だが2年はそれを避ける。シュッとかすれる音がした。


「堂上海斗!技あり!続行!」


 かすれても洗練された動きで上手なら技ありが取れる。でも大会で同じ技を何度も使っても技ありは取れない。だから使うタイミングが重要になってくる。


「面!」

「小手!」

「足打ち!」

「突き!」


 一進一退の勝負。なかなかゲームが進まない。が、2年が場を動かした。


「足払い!」


 2年の足払いを海斗が足を引いて躱す……が、その足の先には自分で捨てた木刀があり滑る。


「一本!胴打ち!」


 2年が仰向けに倒れた海斗の腹に寸止めで木刀を振り下ろす。


「矢倉健人一本!」


 2年が海斗に手を貸し立ち上げる。一言二言海斗と話し、初期位置に戻った。


「構え、はじめ!」


 ポイントはどちらも1,5。どうなるかはまだ分からない。


「突き!」

「堂上流!雪花乱舞!」


 また海斗がふざけた。だが技としては、クロスに二本の木刀を振って二年の突きをずらす。二年は蹌踉めく。


「胴打ち!」


 海斗の流れるような胴打ちが二年の腹に決まる。


「堂上海斗一本!構え、はじめ!」

「袈裟懸け!」


 海斗が今までにない速度で袈裟懸けを二年にかます。


「堂上海斗!一本!」

「がっ!」


 二年の肩がはずれたみたいだ。


「三本!堂上海斗勝利!」


 二年は肩の痛みをこらえて礼をする。そしたら海斗は退場せずに二年をおんぶして、救護所に走って行った。

 そこから数分間でてこなかった。多分おしゃべりに花を咲かせているのだろう。


「次!三年D…………」

「亘……。そろそろいったほうがいいんじゃない?」

「そうだな。行ってくる」


 俺は綾に言われて席を立つ。う〜ん。相手は三年か……。


「って去年の準優勝者やんけ!」


 俺は観客席から降りる人気のない階段のところで叫んだ。


ーーーー


「一年A組、紅月亘!入場です!」

「三年C組、花井和也こと昨年準優勝者、『紅炎の狼』!入場です!」


 中二病………。海斗はそう言ってたっけな。まぁでも解釈的には『「太陽の下層大気である彩層の一部が、磁力線に沿って、上層大気であるコロナ中に突出した」ものの狼』だからな……。

 中二病だけど………。海斗も人のこと言えないぞ。あっ!


「構え!はじめ!」

「プロミネンスウルフ!すげぇ名前だな!」


 思ってたことが口から出てしまう。

 まぁ一旦落ち着こうや。この学校のルールとして相手の二つ名を言い換えたり笑ったりするのはすごくマナーの悪いことだ。


「ゴメンナサイ!」

「ふざけんな!面打ち!」

「返しうけ!胴打ち!」

「足払い!胴!」


 俺の胴打ちを木刀で受けてそのまま足払いをされる。簡単に俺は倒れて胴打ちをされる。

 観客席からはザマァみたいな声が聞こえてくる。


「花井和也!一本!構え!はじめ!」

「さてと………。やりますかね……」


 刀を真正面に構える。


「面打ち!」

「返しうけ!小手!」

「花井和也技あり!続行!」


 やっぱり前年度準優勝者なことはある。動きも速いし力強い。でも……。


「脛うち!回転切り!袈裟懸け!足払い!」


 体が大きい分、連続技を繰り広げれば当たる………。

 と思っていた。が………。


「袈裟懸け!」

「花井和也一本!」


 回転切りの途中で一本を取られた。まじかよ……。


「でかいからってなめないほうがいい。」


 低い声が辺りに響く。観客席からは「後一本」コールが巻き起こる。

 俺はその渦の中にいた。









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