別に必勝なわけじゃない海斗


 まだ大元がいるはずだ。こいつらは鉄砲玉だろう。


「おい。吐け。誰がボスだ」


 金髪に水をかけ、起こして尋問する。


「し、知らない!」

「言え。お前の下ももぎ取ってやろうか?」


 すると金髪は口から泡を吹く腰巾着を見て、唾を飲み込む。


「お、俺が言ったって言わないでくれ!」

「さぁ?知らないよ?それとも腰巾着みたいになりたいか?」

「あ、麻木だ!麻木正樹だ!」

「何年何組だ?」

「さ、3年B組だ!」

「ありがとさん」


 俺は金髪の脇腹を蹴って校舎へと向かう。


「すいません。3年B組の麻木先輩って知ってますか?」


 ぶらぶらしている三人組に聞く。


「麻木?ああ。マサキのことね。ああ。知ってるよ」

「あの………。どこにいらっしゃるか分かりますか?」

「ああ。お前も世話になった人か。あいつなら今はシフト入ってると思うよ。だから体育館に入るかな?」

「ありがとうございます」


 俺は頭を下げ、体育館に向かう。お世話になった?あぁ。お世話になるよ。あと麻木は偽善者っぽいな……。


「失礼します。麻木先輩はいらっしゃいますか?」


 舞台袖に直接つながる扉から入り、挨拶をする。


「ん?俺が麻木だけどどうかしたか?」

「あっ!あなたが麻木先輩ですか!この前はありがとうございます!やっぱり麻木先輩は噂通りいい人ですね!」

(あっ!テメェが麻木か。この度はありがとうよ。やっぱり麻木は思った通り偽善者っぽいな)

「え?」


 麻木は困惑した顔をする。


「おっ。また麻木は人助けか、なんだ?お礼言いに来たのか?」


 機材を運んでる他の先輩が茶々を入れる。


「あ、ああ」

「あの!それで………」

「どうかしたのかい?」

「お礼がしたいんですけど……ちょっと来てもらえますか?」

(お返しがしたいですよ〜。ちょっと顔貸せよ)

「う〜んと……」

「いいよいいよ!1年!お礼してこい!麻木もお礼されてこい!俺がやっとくから」


 ナイス先輩!愛してるよ!


「わかった。じゃあいいよ」

「ありがとうございます!」


 俺は麻木を連れていく。人気のない第二体育館裏へ。


「ねぇ麻木先輩!殺しますね」

「やっぱりそうだよね〜。君を助けた覚えなんてないもん」


 その言葉を皮切りに俺は服に隠していた綾の刀を抜く。


「へぇ。君1年A組のやつか………。こいつらに任せたのは失敗だったか」


 麻木はポケットからハリを出す。指の間に挟まれた針の先端は鈍く光っている。


「これは毒つきだよ?当たったら死ぬよ?」

「俺は神だよ?傷つけたらバチがあたるよ?」


 麻木が針を突き出す。うおっ!あっぶね!

 針を出すと同時に投げてきたせいで気付けなかった。


「俺妨害してくる奴が嫌いなんだよ」


 刀を回転させ、針を弾く。そのまま切り掛かるが、簡単に避けられる。

 針をお馴染み雷操の電磁石で操作する。小さいので操作が難しい。


「なっ!」

「にっ!」


 麻木の驚きの声の続きを言う。麻木は手から離れ、自分に向かってくる針に驚いて動いていない。


「でも僕はまだ刑務所行きたくないんだ♪」


 針を寸止めし、近づいて首筋に刀を当てる。


「さぁて、死にたくなかったらスマホの位置とその暗証番号………。いや、指紋認証だから指を切り落とせばいいのか」


 恐怖心を煽るため、首から流血させる。


「し、尻ポケットだ」


 ケツからスマホを抜き、片手で麻木の指を当てる。刀は保持したままだ。そして暗証番号を変え、自分のポッケにしまった。


「死んどけ」


 尾てい骨に膝蹴りをかまし、刀をしまう。そして手刀を落として、気絶させた。

 校舎に向かって堂々と歩き出す。これで人質(情報)は得た。与えようとした恐怖を味わえ。


「ぐっ!」


 突然背後から蹴られ、前のめりに倒れる。


「ハァ……。寝たふりも疲れるもんだね」


 その声は………。最初の気弱な男の声だった。


「さてと……お金と本当の個人情報教えてくれるかな?」


 俺に馬乗りになって手を抑えられる。


「バインドっと。後は……自白っと」


 体が硬直し、口が勝手に開く……。くそ。ちゃんと見ていなかった!


 今思えばそうだ。おかしい。マジック道具を外に運び出すことなんて簡単だ。

 答えは窓から落とせばいい。そして着地点は3年A組の教室のベランダ。

 そして3年の教室は使われていない。仮に忘れものだったとしてもそれなら手ぶらなはずがない。


 つまりこの男は今回の妨害に関わっている。しかも教室から出てきた時、ヘコヘコされる側だった。つまりこいつは上の方のやつ。

 ヘコヘコしていたやつは麻木だった………。


「ど、堂上海斗……。誕生日が……9月…23日……」


 どうでもいい情報を思い浮かべるとそれが口から出てくる。男はイラついたように俺を蹴る。


「住所が……東京都………」

「サイレント!バインド!解呪!」


 聞き覚えのある声が聞こえた。ああ。唯か……。


「兄さん!ヒール!兄さん一人で頑張りすぎよ!」

「ああ。ありがとう………。いっつもやばい時は唯か綾が来てくれるよな…」

「そんなもんよ!それより事情は聞いたから、もう帰ろう。みんな待ってるし兄さんのマジックをみんなまってる」

「あ、ああ。わかった」


 立ち上がって、校舎に向けて歩き出す……。


ーーーー


「おかえり。さ、働いてもらうよ」


 奈々華のお出迎えに顔が引きつる。


「綾が、海斗が帰ってくるまでライブやらないって拗ねちゃって大変だったんだからな!」

「あ〜あー!帰ってきましたよ!ただいま帰りました!もう大丈夫です!」

「兄さん声が大きいよ」

「すまん……」

「本当、唯……ありがとうな」

「亘がお礼を言う筋合いはないだろ」

「まぁまぁ、いいじゃん」

「嬉しいからってそんなにニマニマするなよ」


 亘にお礼を言われ喜ぶ唯をはたく。


「じゃ、頑張りますか!」

「おー!」


ーーーー


 手を胸の前で絡め、祈るように下をむく。


「一位は!なんと!1年A組ダァ!1年A組生徒は学食半額ダァ!」

「イェーーーーーーーイ!」


 歓声が起こりトランプが飛び交い、クラッカーが鳴る。


「あっ!三島だ!」


 クラスメイトがベランダから三島を指差す。みんながまたベランダに集まった。

 学級委員長の三島が賞状を取りに壇上に登った。


「右は……………」


 校長の話はどうでもいい。頭ゆで卵!(自分の所為とわかっていない)

 三島が賞状を受け取った瞬間、再び歓声が沸き起こる。


「思えば色んなことあったね」

「ああ。いっぱい色んなことがあったな」


 文化祭……楽しかったな……。

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