名探偵海斗


「問題は…4w1hだな…」


 ミクルン、もとい綾が歌ってる間、俺は考えにふけっていた。


「4w1h?5w1hじゃなくて?」

「ああ、推理の基本だ。When何時、Where何処、Who誰、What何、Howどうやって……。

 ん”ん”ん。かっこつけただけだ」


 なんとなく締りが悪くなって心中をばらす。


「海斗はなんというか………。で?見当はついたの?」

「奈々華、そう急かすなって。探偵物はネタバラシをしないんだ。

 もし嫌がらせなら、多分昨日四位だったことを腹いせに上級生がやったんだろう」

「同学年の線は?」

「それはない。俺たちが三年ならまだしも一年だ。そんな大事に二日目から乗り出すことはない」

「それもそうね、でも犯罪ルートは?」

「決まってる。俺らのクラスメイトを一人買収したか脅したか………」


 反吐が出る。下らない。


「道具はもう一回作れるか?」

「あ、ああ。今日の最終公演までには」

「じゃあ今日だけ特別に俺が全部やる。ミクルンコラボは急遽明日に延期、その代わりミクルンコラボ整理券を持ってきた人にはサイン入りCDを渡せ。口封じも忘れるな」


 何時……………ショーが終わってから始まるまでの10:00〜11:00。

 何処……………この教室内で。

 誰………………上級生が大元。買収された一年がいる。

 何………………破壊じゃなくて隠した。言い逃れを避ける為。多分大元のところにあるだろう。

 どうやって…一年の買収。つながりは気弱そうなやつ、上級生に兄弟がいるやつ。もしくは今回の件で嬉しそうにしてるやつ。


 くそ、割り出せない……。いや、道具は大きいものもある…。動かそうとしたら目につくはずだ。ならどこに隠した?


「カイ……。今日はカイのおかげでマジックショーの方も整理券出した……。人気投票は上位にくるから……。明日も何かしてくる……」


 ライブが終わった綾が俺を現実に引き戻す。


「ああ。そうだな………。それまで精一杯やるか!」


 気合を入れ、立ち上がる。ぜってぇ負けてらんねぇかんな!


==紅月舞==


「う〜ん。今年は大盛況だね〜」


 ぶらぶらと校内を歩き回る。途中、調理部が販売していたクレープを買ったのだが、私のいた頃より美味しい。日々進化を遂げる調理部に敬礼!


「いい男の子いないかな〜?」


 わかっているよ。私のナイスバディに目を奪われた男子共の存在を。

 尻と胸に集まる視線。悪いが私は弛緩されても動じないんでね!いや、生肌見られたらどうじるかも……。


 私はそんなエロティックな関係を求めているわけじゃない!ズバリ我が愛弟、亘のような恋愛がしたいのである!


「水泳部!アーティスティックスイミングやってま〜す!」


 今年もか……。この学校の水泳部は毎年人気投票でトップ3に入る。なんでも、プール内でのショーをやっているからで……。意外とクオリティが高い。


「あっ、どうですか?」

「ええ。一枚もらうわ」


 水泳部のショーのチラシをもらう。


「あっあと少しで開演ね」

「ご案内しましょうか?」

「いえ、大丈夫よ。OGだから」

「そうですか……」


 しょんぼりとする男の子。どうせ体目当てでしょ。


「ありがとうね。じゃチラシ配り頑張って」

「は、はい!」


 男の子はパァっと顔を輝かせた。ふふ。いいことしちゃった。


 屋内プールは蒸し暑く、プールに私まで潜りたい気分になった。


「へぇ………。やっぱりうまいわね……。あれ?例年より人が少ない?」


 ほぼ常時満席のベンチが、今年は所々空いていた。


「何か面白いものでもあるのかな?」


 水泳部を超える出し物にかなり気を惹かれたが、マナーとして一応最後まで見た。


 廊下を歩き、噂話に耳を傾ける。


「いや〜ミクルン可愛かったな〜」

「確かにそうだけどお前まだその話するのか?もう3個前の話だぞ?しかも昨日も見たし」

「いや〜。でも山田がそれ言うのもわかる。でもあんな可愛い子なのに何で噂にならないんだろう?」

「そこがミソなんだよな〜〜!クゥーーッ!可愛いな〜」


 在学生らしい三人組がそんなことを話していた。ミクルン?3クルン?三回転?

 確かに「ミクルン」に注意して耳を傾けるとおあちらこちらから「ミクルン」という単語が出てきている。


「ミクルンか………。アイドルショーでもやってるのかな?」


 聞いたことのない単語に首をかしげつつ、チラシがないか探してみる。すると案外簡単に見つかった。


「ライブ&マジック!1年A組!可愛いアイドルと、手元のマジックから大きなマジックまで!」


 1年A組って……亘たちのクラスじゃないの。あらら………。それにしてもアイドルとマジックの複合って………。面白いわね。差し入れのついでに見てみましょ……。


 私は想像もしていなかった。こんな光景が待ち受けているとは……。


「売店の最後尾はこちらで〜す!ただいま2時開演のライブと3時開演のマジックショーの整理券をお配りしております!」


 廊下にずらっと並ぶ長蛇の列。急いで作られたであろう多分「最後尾」と速記用の文字で書かれたプラカードが掲げられている。


「はい!360円になります!ありがとうございます!次の方!」

「ただいまミクルントランプが売り切れとなりました!整理券をお配りいたしますのでそちらをお取りください!お一人様1デック限りとなります!」

「1時開演のミクルンコラボマジックショーですが諸事情によりい中止されました!お詫びとして、ミクルンコラボショーの整理券をミクルンサイン入りグッズの購入券として交換させていただきます!」


 売店の方も歩く余地がなく、控え室まで行くのに警察を何回呼べばいいことやら…(痴漢)。


「我が愛弟!亘よ!差し入れだぞ!」

「ちょ舞ねえいきなり入ってくんなし!」

「ひどいじゃないか!まずは差し入れのお礼を述べるべきであろう」

「あっ!舞さんチッス!差し入れですか?ありがとうございます!あっ!アイスだ!者共!アイスダァァァァ!」

「よっしゃ!亘姉感謝!」

「ありがとうございます!」


 途端に持ってきたアイスはなくなり、紙箱とビニール袋だけ残った。


「どうです?見ていきません?」


 海斗くんが誘ってくる。


「でも並んでるし……」

「そこは身内ですからさ」


 そう言って腕をグイグイ引っ張られて中に入るとこれから始まるみたいだった。


「みんな〜!それじゃあいっくよ〜!」


 五人ぐらいる中でセンターの女の子が声を上げる……。あの子綾ちゃんに似てるな……。

 アニソンが流れ出すと共にペンライトが流れ出す。確かにこれは人気になるな……。


「どうでしたか?」


 ライブが終わって海斗くんが感想を聞いてくる。


「凄かった……。センターのミクルン?可愛いね」

「へへ…そうですか?あれ実は綾なんです?」

「綾ちゃん?」

「シーっ。声が大きい」


 あれが綾ちゃんなの?声が全く違ったけど……。


「まぁ……あれが俺の彼女っすよ」


 海斗くんが自慢げにニヤッと笑った。



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