精霊使いの海斗

「みんな〜今日は来てくれてありがとう!ミクルンだよ〜」


 今更ながら不思議なのがどうしてアイドル風の性格もできるのにいつも無口なんだ?


「今日は人数が多いね!昨日はみんなのおかげで人気四位が取れたよ。みんなありがとう!

 今日来てくれた人も昨日も来てくれた人もみんな楽しんでいこうね!」

「オーーー!」


 教室は満杯になってしまったので会場を急遽拡張した。簡単に言うと、A組は端の教室なので、廊下もめいいっぱい使ったのだ。

 まさかここまでの人気になるとは思わなかった。


「はい、120円になります。ありがとうございます〜。はい次の方〜」


 売店ではもうベルトコンベアー並みに人が並んでいる。


「本日は700円以上お買い上げの方にはくじ引き券がございます!七百円毎に一回です!

 数量限定!一等はサイン入りCD、二等はサイン入りハンカチ、三等はサイン入りポスターです!」


 売店の机にはこれ見よがしに「サイン入りのなんちゃら」がずらっと並んでいて、くじ引きがどんどん引かれていく。

 奈々華が考案した。商売人が性に似合いそうだ。


 ちなみにサインはすべて、書記の吉田が書いたものだ。

 これも奈々華考案だ。曰くいわく別に誰のサインとは明記していないだそう。いいのかこれ?


「あっ!一等〜〜!大当たり〜!」


 一等が出て大きく叫ぶ。CDが一枚なくなった。売店内はファンの熱気と嫉妬で溢れかえる。

 しかしこれはサクラ。サクラで最後の一枚まで減らし、爆買いさせる戦法だそう。これも奈々k…ry。法律的に大丈夫なのかと聞くとサクラじゃなくて彼らは運よく当たった一般人で、ゲットしたCDを欲しくないと返してくるだけである。

 だから本当は2枚しかないCDが何枚も当たるだけである。


 もう何も言わないよ……。そうそう奈々華に、

 「なぜ綾がアイドルになることに反対してたのに、金儲けの為に利用出来るのか」と聞いたところ、

 「認めたからには、利用しつくさない手はないでしょ。売り物にしたくないといいつつもアイドルになることを認めるのは矛盾している」とのこと。

 さばさばしてんな〜。


 一方マジックはというと、ミクルンコラボと称して綾が少しマジックをすることに。

 さらに、どれか一個のトランプには全て、ミクルンサインが入っているという噂こっそり流し、トランプの爆買いを誘導する。

 ちなみにあるのかどうか聞かれた時は、「すいませんコメント出来ません」というようにしていた。

 こ……ry。言わずもがなだな。


 話が逸れた。マジックはミクルンほどではないが大盛況。百均のトランプでマジックをし、使ったトランプは相手が子供ならプレゼントという仕様。おかげさまで常に行列状態。


 とまぁ繁盛繁盛、大繁盛と……。


「ん〜。調理部のクレープ美味しい………」

「な、結構うまいな」


 綾とクレープを齧りながら、バスケ部の模擬戦を眺める。


「なぁ綾………」

「何?」

「いつかさ、ふたりで旅行行かないか?」

「旅行?」


 バスケの模擬戦からこっちを向く綾。唇についているクリームをすくってやり、話を続ける。


「ああ。旅行だ」


 綾は唇を拭かれたことで顔を真っ赤にしている。可愛いな……。


「どうして……?」

「だってさ…夏休みどこも行ってねぇじゃん。俺たち引きこもって出るのめんどくさがったし、亘の孤島の件だって結局何もしなかったし…」


 手すりにい背を乗せ、綾の髪をなんとなく撫でる。

 綾はふにゃとした笑みを浮かべた、


「んん………。いこ……。行きたい……」

「いつか、いつかちゃんと行こうな」

「ん…いつか…ね」


 普通、「いつか」なんて適当なその場合わせの意味で使われているが俺たちにとってその「いつか」はひどく確実なものだった。


 3年の教室の階を歩いていると、気弱そうな男子が3年A組の教室から手ぶらで出てきた。

 周りの男がそいつと話しているが、気弱そうな男の方が敬意を向けられている。変なの。

 あれ?3年A,B組って教室使ってないよね?なのになんで今教室から出てきたんだ?


「あれじゃない?忘れ物とか」


 俺のくだらない疑問に綾が気付いて、俺に返す。


「そっか。まぁいいや行こっか」


ーーーー


「マジック道具がない!?」

「ああ、探してもないんだ。だから次のショーがでいないんだ」


 教室に戻ると、控え室は殺気立っていた。中山が俺たちに場所を知らないか聞いてくる。


「あと何分で開演だ?」

「五分だ。もう時間がない」


 時間を聞いて、道具を探すことは諦めた。


「予備とか他のマジックは?」

「他のマジックは手元のものしかない」

「海斗!」


 亘が控え室に慌ただしく入ってくる。


「亘。お前できるか?」

「いや、俺のも中山と同じところに置いていたんだ」


 本当に何もなさそうだ………。


「俺がやる」

「海斗が!?」


 周りの奴らも足を止め、聞き返してくる。


「衣装借りるぞ、照明は最初と最後だけでいい」


 椅子にかけてあった衣装を着て、水でのどを潤す。


「ちょ、海斗はできないんじゃないのか?」

「できない。でもやる」


 俺の目を見たのか、亘は納得した顔に変わる。


「ああ。行って来い」

「おう」


 俺は舞台へと歩き出す。

 スポットライトでまぶしく照らされ、拍手でうるさい舞台へと。


ーーーー


「ladies&gentleman!ようこそ!ライブ&マジックへ。

 そして初めまして、英語が満点のKAITOです。ちょっとした諸事情がありまして私がやらせていただきます」


 シルクハットを胸の前に持って行き、頭をさげる。


「さて、今日はマジックというよりもショーに近いものをみなさまにお届けします。それでは、It's show time」


 スポットライトが消え、完全に教室が真っ暗になる。観客席からは期待の声、というよりも呼吸が感じられる。

 ふぅ………。よし…。


「みなさまはこの世に精霊が存在していると言われたらどう思います?そんな馬鹿な、どこの厨二病患者だ、みたいな答えが返ってくるでしょう。

 しかしこれはこの世に存在する雷の精霊なのです。今みなさまの周りにたくさんの光があります。見えますか?あれれ?見えませんか……。ではゆっくりと目をつむってください。

 皆さんちゃんとつむりましたか?じゃないと見えませんよ〜」


 俺は観客を期待させていく……。


「あなたの周りには精霊がいます。それを第六感で感じてください。感じられましたか?

 ……それでは、目を開けてください……」


 途端に「わぁ」とか「なにこれ」といった歓声が聞こえてくる。


「今皆さんに見えているのは雷の精霊です。ほらここにも、ここからも」


 そう言ってポケットから精霊をつまみ出したかのように見せる。


「僕は精霊使いなんです。だからほら、みんなに見せてあげて」


 そう言って観客の上に電気を走らせる。流れるようにいくつもの電気の糸を集合させ、太く大きなものにする。

 それを手元に引き寄せ、球状に小さく圧縮する。そしてそれを破裂させ、観客の真横に小さな電気柱を落とす。


ーーーー


「すっごい綺麗だったね!」

「ほんとそれ!録画したかった!」

「あれどやってるんだろ?」

「また見た〜い」

「おかーさん。精霊ってほんとはいるんだね」


 評価は上々。急遽作られた電霊トランプはたくさん売れた。なんでそんなにすぐに作れるかというと、裏が白で、表がノーマルな数字の描かれたトランプにパソコンでイラストを読み込んでプリントしたらしい。

 仕事が早いな……。

 あとトランプ好きだな……。って思ってたら数分後にハンカチも売り出された。


 結果オーライだけど………。


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