7章 〜日常なんてない。常にそれは新しい試みだ〜

気だるげ海斗

 秋………。食欲の秋、読書の秋、体育の秋、文化の秋、秋と言えば……で聞くと出てくる言葉達。


「み〜んな!今日は来てくれてありがとう!ミクるんすっごく嬉しいよ!」

「イェーーーーーい!ミクル〜ん!」


 俺はペンライトを振り回す。室内は暗く、男のむさ苦しい匂いで充満しているんだ……。でも別に辛くない。だって俺にはミクルんがいるから!


「みんな!私と一緒にこの日を楽しもうね!」

「ドリャァァァぁ!ミ〜クル〜ん!」


 ミクルんがアニソンを歌い出す。ペンライトはそのリズムに合わせて動く。

 ん?お前誰だって?俺は……名もないモブさ…………。いや、名前を今貰ったよ。







 山田太郎さ。








==堂上海斗==


「今僕は…凄く怒ってます…」

「あっ、そうそうみんな大丈夫だよ。海斗の一人称が僕になって、丁寧語使う時は拗ねてるだけだから」


 亘がいらん事を言う……。でも……。怒ってます……。

 ベニヤ板を挟んで聞こえるアニソン。海斗君は怒ってるんです。


「だいたい綾も綾です。なんであんな事を引き受けるんですか……」


 相手のいない質問をする。なんであんな事引き受けるんだ……。


「まぁまぁ、ミクルんのチラシ配って来てよ。もしくはグッズとCD売りかサクラか…」

「ねぇ、佐原さん。今の僕にやらせるんですか?」

「いや、だってミクルん決まってから何も準備してないじゃないの」

「僕は楽しむ為に生きてるんです。そんな利益を生まない事はしません」


 パイプ椅子に座って足を組んだ姿勢でずっとここにいる。


「じゃあほか回って来たら?」

「僕は綾と回ると約束したんです。下見もいいですが彼女とは新鮮な気持ちで

見て回りたいんです」

「じゃあ奈々華ちゃんお願いしますよ」

「今怒ってんだ。話しかけんな………」


 俺と向かい合って座る奈々華。


「やっぱりそうですよね!奈々華さん!」

「やっぱそうだよな!海斗!我が同士よ!」


 椅子から立ち上がり抱き合って泣く我ら。ああ。おかしいだろ……。


ーー1週間前ーー


「文化祭の出し物を決めましょうか」

「とりま案を出していこうぜ」


 夏休み以後、退学した我が同士がそれなりにいて、最初は40人だったのクラスがたった25人に減っていた。


「メイドカフェ!」

「転性カフェ!」

「カジノ!」

「トランプ!」

「迷宮!」

「黒板アート!」

「『異界に繋がりし闇』のレポート……」

「動物園!」

「擬似裁判!」


 書記は聖徳太子と裁判所書記官の転生者のようだ。

 出された案は全て出ているかつ、書き方が速記用の文字になっていて、多分本人と亘と俺しか読めないだろう


「ライブ!」

「月華方竜神」

「マジック!」

「全部!」


 意見がなかなかまとまらない。


「それいいな!ライブマジック!」

「確かに!交互にやって、合間の時間は手元でマジックやるの!」

「それに決定!」

「「異議なし!」」

「異議あり。我が眷属の名が出ておらん」

「じゃあライブとマジックで誰がやるかって話だね!」


 どんだけ決まるの早いんだ。


「えっと……マジックは誰がやる?」

「俺がやるもうす!あ、あとこいつも」


 亘が中山篤を指差す。中山はさっきからずっと寝てるんだが、お前もマジックできるのか………。


「あとは?」

「あっ!私できるよ?」

「俺も手元のトランプだけなら」


 他にも数人ほど手を挙げる。俺はできんからな!みんな俺を見るな!


「あ〜。ん”ん”ん。海斗はマジックできないからそんな見ないであげてくれ。万能じゃないんだ」


 亘がブーメランというか核爆弾というか、とにかく援護した俺まで殺す爆弾を投げてくれた?られた?

 まぁとにかく俺に向けられた期待の目はなくなった。


「じゃあ次アイドルだけどやりたい人いる?」

「いや、いないでしょ。でも推薦なら堂上くんとかどう?」

「断る。俺はカラオケの持ち曲が少ないんだ」


 俺はカラオケが苦手だしな。俺が断るとみんな考え込む。

 ちなみにハーレムーの王者の山田は夏休み以降学校に来ていない。

 そいつが地雷を踏んだ。


「じゃあ綾ちゃんとかどう?」

「「なっ!ダメだろ(でしょ)!」」


 机に手をついて抗議する。もう一人は奈々華だ。我が同志よ!


「それいいかも!」

「確かに!」

「綾ちゃんで決まりでいいかも!」

「我が胸に眠りし漆黒の召喚龍も同意しておる‥」


 言っておく。綾はこの夏休みでイメチェンして滅茶苦茶に可愛くなっている。彼氏の欲目が9割だがそれを抜いてもバリ可愛い。

 メガネをしていると冷徹美女なんだが外すとホンワカ可愛い女子に早変わりというおかしなもんだ。


「おい!ダメだろ!そんな綾は売りもんじゃないんだぞ!」

「綾ちゃん嫌だよね。反対だよね」

「なんか綾って海斗と奈々華の子供で両親が過保護なんですって表現が正しい気がする」

「それはあるね………」

「うむ。彼の者達はそれだけ鳩山殿が大事なのであろう」


 亘!聞こえてるからな!


「綾ちゃんはどうなの?」

「えっと………。別にいいよ……」


 誰かが腹話術で綾を語ったな!?綾の声を出せるのは………。


「亘!お前が綾を語るな!そこまで綾をアイドルにしたいのか!?」

「おい!胸ぐらつかむなって!アダ!奈々華も蹴るな!俺はやってない!」


 亘が奈々華の蹴りを机に激突してかわす。


「カイ………。いいよ…。私やるから…」

「おい!正気か!?」

「綾ちゃんどうしたの!?まさか洗脳!誰か解呪して!」


 俺は綾の方を掴んで揺らす。


「いや、やるって…。やらせて?」


 綾の顔を見ると心から思ってるようなのだ。ナンテコッタ!


「あ、ああ。わ、わかった……」


 俺は引くしかなかった……。


「可愛い子には旅をさせよっていうから。な?」


 亘が慰めてくれる。うう。綾……。

 そのあと他のアイドルを決めてグッズなどの売り出しとかも企画して終わったんだ……。



ーー現在ーー


「ねぇ!在庫が足りない!ミクルンタオルとハンカチとスマホケースと財布と筆記用具一式!」

「え?嘘!そんなに!?どう!?作れる!?」

「製作所の予約はあと二時間後!整理券作って配っといて!」


 うちの学校はヤバイ。文化祭のために学校は機械が盛りだくさんだ。

 3Dプリンター、魔道具の複製機、プリンター(普通のじゃなくてものプリントできる)などなど………。

 なんでもこれらの機械は大手企業の会社から寄付されてくるのだ。おかげで文化祭のグッズは他校と比べてそこはかとなくクオリティが高い。


「ヤバイ!こっちもミクルントランプが足りなくなってきた!」

「ペンライトも在庫が切れそう!」


 目の前を走り回る生徒たち。


「在庫がなくなったので再度作ります!これから整理券を配りますので並んでください!お一人様、一回一品となります!二品以上お買い求めの方は再度並んでください!」


 行動が早い。今年の一年はいい生徒が多いそうだ………。


「文化祭か………。これはただの商業だろ。」


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