願いは神に届かない。でも人には届くの。


「お主を助けよう」


 一人の老人が真っ白な世界に現れた。


「たす…ける?」

「ああ。未来を変えたくはないか?」

「あなたは…誰?」

「ああ。わしは霧谷渓谷物語に出てくる冒険者じゃ。あれは実話じゃ」


 霧谷渓谷物語…。私は言われたことがわからなかった。


「お主はよう頑張っておる。見させてもらった」

「どうやって?それとここはどこ?」

「ここは意識世界じゃ。お主の心のなかにある」

「心のなか……」

「霧谷渓谷物語には聖水が出てくるじゃろ?あの聖水をお主は飲んだからこうやって会えるんじゃ。渓谷内だけだがな」

「でも……飲んでない」

「いや、霧谷渓谷には霧が立ち込めておるじゃろ?あれには聖水が混じっておる。だから魔物は強いんじゃ」


 ではなぜ今出てきたのか。


「いや、お主の行動をずっと見ておったんじゃ。感動したわい」

「何度も死んだってどういうこと?」

「死ぬたびにわしがタイムリープをしたのじゃ。

 それより、未来を変えてみんか?」

「は、はい!」


 私の願っていたことだ。変えたいのだ。


「まず言っておくが蘇生は出来ん。二、三人はできると言われておるがそんなものは一人もおらん。

 そもそも世界に干渉することは許されんのじゃ」

「でも今こうやって…」

「それは意識世界だからじゃ。世界に咎められてもお主の想像であると言えばいいだけの話じゃ、おっと喋りすぎたようじゃ。

 それより時間がない、お主に与える力は何がいい?」


 私は今言われたことを元に考える。きっと超絶チートとかはダメなんだろう。


「私は、足が速くなればいい」

「ほほう。正解じゃ、蘇生とか言ったらなかったことにしようとしていたんじゃが。いいだろう。

 身体強化。行ってくるがいい。もう世界の保存はいらんからな」

「はい!ありがとうございます!」


 見慣れた渓谷に戻る。私は走った。以前よりもっと速い。


「切断!クラッシュ!」


 兄さんと綾さんが落ちる。すぐに近寄って鼻の下に人差し指を当てた。


「よかった………。生きてる…………」


 私の頬を涙が伝った。




==堂上海斗==


 林間学校は早退し、すぐに病院へ運ばれたらしい。俺は病室で唯と向き合っていた。


「唯。ありがとう…。ごめんな」

「うんん。いいの。それより、心配かけてごめんなさい」

「いや、……なんでもない。ありがとう………」


 唯は両親にこっぴどく怒られたそうな。まぁ当然だろう。それより、俺を鼓舞したあの老人たちは誰なんだろう……。


 そうそう。まだ夏休みも8月に入ったばっかりだ。そこで亘に誘われたんだ。

 孤島に行かないか?って。





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