彼を傷つけるものは誰1人として許さない。

「なんでこ〜こ〜にいるんだよ〜〜〜〜〜!」


 どうも皆さんこんにちは!今日も明日に向かって走り続けるカイトです!

 背中には死がいっぱいあります!

 オークを倒して回復薬を呑んで(「飲む」じゃなくて「呑む」ね)元気になったので歩いてました!


「ライトニングスピア〜〜〜!」

「なんで唱詠するの!」

「格好いいから!」

「ギャォォォォォォ!」


 後ろからは生臭〜い息が………、いやん。私臭いの無理っ!


 ってダメだダメだ。どうやら俺は逃げる時に頭がおかしくなる傾向にあるようだ。

 はぁ………。


ーー30分前ーー


「カイ………、ありがと……」

「いやいや、俺が死んだら綾が死ぬんだしな」


 俺はオークを倒して回復薬をがぶ飲みして、地面にあぐらをかいていた。

 綾はオークの解体をしている。

 綾が何についてお礼を言っているのかはわかったいた。でも気恥ずかしくって何と無くはぐらかす。


「わかってるくせに……。刀…。生き物って見てくれて…ありがと…」


 解体が終わったのか、手袋を外し後ろから抱きつかれる。やっぱ照れるな…。


「あれは綾の分身であり、俺の所有する綾だからな」

「むぅ……。カイ……。分身じゃなくて…本体も…所有して?」


 耳にかけられる吐息。なぜか熱っぽく感じるのは俺だけだろうか?いや、そうだろう。

 はい!この文型反反語と言います!いや言わないけどっ!


 ふぅ……。落ち着こう……。

 今の状況は後ろから綾に抱き着かれ、背中に年相応の果実を感じる。

 そして耳に綾の吐息を感じ………。

 どう考えても押し倒すフラグじゃねぇか!


「綾……。俺はありったけの理性がさっきまで有った。でも今は赤く点滅しているんだ。俺の息子の目が覚めそうなんだ……。頼む……。どいてくれ…」

「むぅ……。ん……」


 綾は仕方ないと言った感じに俺から離れる。

 一方愚息は「親父!野外プレイで卒業も一興ですぜ」とかほざいてやがるし……。


「と…見せかけての………えいっ」

「ギャッ!」


 突然綾が背後から再度抱き着いて俺の胸に素早く手を伸ばす。そして……。


「ノォォォォ!」

「あっ………」

「っ……」

「……」

「……」

「……」

「……そろそろ…離れてくれないか……?」

「ごめん……」


 気まずい雰囲気となるのは当然のことで…。

 そしたら黙って行軍するのも当然のこと…。


 そんなこんなで30分。少し開けた所に出た。そこに居たのは……。ドラゴンだった……。

 そして冒頭に戻る……。


====


 カイが悲痛な声を上げるたび、自己嫌悪に陥る。カイが私を見て立ち上がる度に別にもういいじゃないか、って思う。

 その度にオルとこんなに仲良くなってしまったのに私の正体をバラしたらオルは絶対に傷つく。


私は……。見ていられなくなった……。


「ぐっ、うっ………」


 カイがとうとうドラゴンの尻尾に叩かれて地面に落ち込む。そして気絶した……。

 ドラゴンはカイに口を伸ばす。

 私は岩陰から出て、カイから貰った短剣を投げる。ドラゴンの硬い皮に当たり、カランと音を立てて落ちた。

 ドラゴンが私の方を向く。


「私は…貴方を許さない……。もっと手早く助ける方法はあったし、貴方がカイを攻撃する事も何も理不尽な事じゃない。

 でも……。私はカイを傷付けた貴方を許さない……」


 手をドラゴンに向ける。ドラゴンは咆哮を上げて私に突進してきた。


「楽に死なせてあげる…」


 刹那、ドラゴンの皮は敗れ放射状に体液が飛び散った。そこにはドラゴンの姿などカケラも残っていない…。あるのは、大きな魔石だけだ。

 私は失神しているカイの短剣を剣帯にしまい、魔石をしまってカイを担ぐ。

 でも、そこに現れたのはコボルトの群れ。ドラゴンの咆哮で集まったのだろう。


「どうして……。貴方たちはいつもオルを傷つけようとするの?なんで?」


 コボルトたちは何も反応を示さない。それぞれ斧を振り上げ、私達にに走り寄ってくる。手を向け、コボルト達に念じる…。

 途端にコボルトは破裂した。カイを地面に横たえ、立ち上がる。


「死ねばいい!あんた達なんか死ねばいい!あんた達に存在価値なんてこれっぽっちもない!オルをそうやって傷つける奴になんの価値があるの!

 なんで私からオルを取るの!私はオルが居なかったらやっていけないの!オルが私の全てなの!」


 私は無我夢中でコボルト達を破裂させる。どうやっても抗えない運命に怒鳴り続け、コボルトを破裂させる。

 私は血まみれになっても叫び続け、気付いたら……笑っていた……。

 目から涙が零れ頬を伝う。オルを……私から取らないで……。


「いこ………」


 丁寧に自分に着いた血を操作して落とす。そしてカイを担いで、ゆっくり歩き出した……。

 進もう……。カイがいる限り。


==紅月亘==


「先生!ハァハァハァハァ……。8班です海斗が!霧谷渓谷に落ちました!」

「なっ!それは本当か!いつの話だ!」

「約2時間前です!ハァハァハァハァ…。須藤奈々華と沼木京之助は後から来ます……。ハァハァ……。身体魔法でっ…走ってきました…」


 クッソ…。こうしてる間にも………。海斗の魔法だってチートじゃ無い。ましてや戦えない綾がいるんだ。どうなるか……。


「救護班!コイツを休ませろ、筋肉疲労だ!救助班1は俺に続け!救助班2は8班の救援に迎え!」


 京之助に身体魔法を限界までかけてもらい走ってきたから確かに足はボロボロだ。でも……。こんな所でのうのうと休んでられっかよ…。


「俺も…行きます…」

「邪魔だ。とっとと休め…」

「でもっ………。はい……。休みます…」


 そうだ……。俺は無力だ……。助けになれる筈がない……。非力な奴が覚醒するなんてのはよくあるが都合よく行くかわからないんだ……。


「行くぞ!」


 救助班が霧谷渓谷へと駆け出す………。が……霧の中から何かが来る気がする……。まさか…帰ってこれたのか?

 霧が濃く、よく見えないが……。帰ってきたのか…。


==鳩山綾==


 あと少し、あと少しでつく。あと少しでカイを治癒できるから…。あと少し……。

 上り坂になっている。これは霧谷渓谷の終わりの印だ。もう少しでここから出れる……。


 視界が少しひらけた。そこは………。そこには……。大きな広場があった。



==紅月亘==


 霧が少し晴れる……。人影が見えた…。よかった、帰ってきた……。でも……なんだこの地響きは………。不安が拭えない……。

 霧の中から出てきたのは……。


 コボルトの大群だった…。


==鳩山綾==


「なっ……。ま、まさか……」


 頭の中に浮かぶ三文字が頭から離れない…。

 カイを降ろし、周りを少し歩く…。そうすると目の前に見えたのは……。洞窟だった…。


「もしかして……。間違い……?」




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