君は俺の一部なんだ。阿婆擦れが僕の一部とも知らず。

「はい。3324年、第234回の高一、林間学校を始めます。今回の引率の先生方を紹介します…」


 あ〜あ〜。どーでもいい!どーでもいい!順番に出て来ておきまりの挨拶をする引率のアルバイト達を眺める。

 そうして数人目……。周りがざわめくき、綾が俺の袖を引っ張るので眠い目を擦って起きる。


「どうも、皆さんこんにちは。堂上唯です。魔物狩り、転移、運送の免許特級です。治癒は2級です。

 今日から五日間お世話になります。よろしくお願いします」


 え?唯?唯?唯?


「唯!?」


 俺は反射で立ち上がる。


「静かにしなさい!」

「唯!おい!お前ちょっとダメだろ!まずそもそもなんでアルバイトしてるんだ!」

「静かにしなさい!退出させますよ!」

「うるせぇ!ちょっと黙ってろ!おい唯!」


 教師の手を逃れ、唯に向かって歩く。唯は俺の形相にちょっと怯えた顔をする。

 別にアルバイトするのもいいと思うし、さっきみたいな転移の簡単なものなら逆にやればいいと思う。だが……。


「唯!親の許可取ってんだろうなぁ!」

「うん。と、取ってるよ」

「何がしたいのか知らんがここは中三のお前が来るところじゃない!ましてや年上の引率とか舐めてんのか!

 魔法が人よりよく使えるからって舐めてんじゃねぇぞ!職務全うできるんだな!?」

「え、ええ」

「そうか……。じゃあいい。失礼しました。すいませんでした」


 俺は唯に頭を下げ、他の生徒にも頭を下げる。みんなはボーッとしていた。状況が飲み込めてないのだろう。

 自分の初期位置に戻り、座る。俺のむすっとした雰囲気を察したのか綾は俺の肩に手を置く。


「あんまり責めないであげて……」

「ああ。それでも親も親だ。家族揃って何やってんだか……」


 俺は自分の頭をかきつつ溜息をついた。後社会も社会だ…。なんで年下が年上に講義出来るような制度を作るんだ………。能力第一なのは分かるが……。


====


「先生。お願いです、唯を俺の担当にして下さい」


 オリエンテーションが終わった後、みんなが帰る中俺と綾だけ残る。


「生徒の要望に応える訳にはいきません。公平性をき」

「これを見てもまだそれが言えると。へぇ、無責任な雇用主ですね〜」


 俺はスマホのチャット画面を見せる。母さんとのやりとりで、転移のアルバイトは認めたが林間学校は認めていないと書いてある。


「しかしそれはその証明書の印鑑が…」

「あ”?それが嘘とも見抜けない人間が雇用主であり日本最高峰の学校の教員であると…。そうですか」

「何が目的だ?」

「最初に言ったでしょう。唯は…いや、彼女は社会的責任を負える立場ではなく、親の承認も無い。ならなるべく連携の取りやすい俺らと組むべきだ」

「わ、わかった。尽力しよう」

「尽力じゃねぇ。絶対だ。出来なかったらどうなるかは考えとけ」


 教師に向かって指を指し、頭を下げて大広間を出て廊下を歩く。


「カイ……。唯ちゃん、多分最近カイが構ってあげないから来たんじゃない?」

「いや、唯はブラコンじゃないだろ。俺はシスコンだが…」

「ううん。唯ちゃんはブラコン……。怒り過ぎないでね……」

「綾……。ありがと。お陰でちょっと厳し過ぎたとわかったから。大丈夫だ」

「うん……私はカイの抑止棒……」

「ははは。ありがとな」


 俺達は自分の部屋に入る。


「おかえり。出発準備はしたからもう後は2人の防具だけだ」


 亘がいつも通りの調子で返してくれる。ありがたいな……。


「防具はアメリカの軍事用の防弾チョッキだ。結構強いから安心しろ」

「おお!金持ちは違うな!」

「勿論だ!感謝するがいい!」

「じゃあ行くか!ほら!」


 俺は手の平を下に向け前に突き出す。


「え?」

「あれだ。あの……。なんだっけ?そう!コールコール!とにかく載せろ」


 俺はみんなに手を出させる。よ〜し。行こう!


「俺たち5人!絶対生きて帰るぞ!角なし兎〜〜〜」

「「「ファィト!」」」


====


「え?兄さんの班?」


 唯は俺たちを見て驚いた顔をする。


「よろしくお願いします。堂上先生」


 俺は唯に頭を下げる。


「え、ええ。よろしくお願いします。今回私がみなさんの護衛を務めさせていただきます、堂上唯です。

 しかし、私が危険と判断した場合のみしか援護はしませんので私を頼らないでください」

「ええ。勿論です。先生は後ろから付いて来るだけで結構ですので」


 慇懃無礼もいいところだし、実際そうなのだが頭を下げておく。


「それでは行きましょうか」


 俺達は森の中に入っていく。心なしか唯が寂しそうに見えた。意外と綾の言い分は正しいかもなぁ。


====


「みんなは戦闘経験あるか?一応魔物とは言え動物だからちょっと腰引けたりとかしないか?」

「いや……。大丈夫だと思う……。出来れば血と言うよりも体液と言ったやつの方が…。って一緒か…」

「俺は父さんが魔物狩人だから怖いもんなしだ」

「私は蟻しか殺めた事ないし………」

「カイ…私は大丈夫だよ?」


 つまり俺、綾、京之助がOK。亘が哺乳類っぽいのは無理。奈々華に至っては何も出来ないか……。



 ついさっきまでの会話が思い返される……。しかし何だ?この有様は?

 目の前の光景に記憶力の自信が無くなる。


「奈々華………。お前……」


 奈々華は平然と魔物を貫いては斬滅していく。亘に至ってはふざけて格好付けている。何でこんなに余裕なんだ?


「何?」


 くるくる回ってゴブリンの首をはねる奈々華が振り向きざまに聞いて来る。


「いや……。慣れてるなって…」

「そうかしら?だって……あっ邪魔」

「ベキッ」

「だって……ああ鬱陶しい」

「グエッ」

「やってみたらそこまで怖くなかったし?死ね」

「ギャッ」


 喋りながら剣で頭を叩き潰したり袈裟懸けにしている。


「我が剣に宿いし精霊よ!我が力に従い我が剣の糧となれ!スピリッツソードっ!」


 亘は…中二病発言……。わかっててやってるからまだいいか……っ!


 俺は近くの木で壁キックをし、綾達を飛び越えて亘の横に降り立つ。そのままベルトの短剣を逆手で抜き、それに向かって投げる。


「なっ!危ねぇだ……ってケルベロス!?」

「いいから下がれ!亘と京之助はポジションチェンジ!作戦B!」


 ケルベロスは俺の短剣を避けて、ゆっくり近づいて来る。中々に知能があるようで突っ込んできたりしない。


「ケルベロスは今回の討伐リストには存在しないので…」

「うるせぇ!黙ってろ!唯も一緒に戦え!」


 ケルベロス…。頭を三つ持ち、尻尾は蛇が互いに絡み合っている。

 正直、俺の雷操をめちゃくちゃ使ってようやく勝てる相手だ。

 勝とうと思えば唯は余裕で勝てるだろうが、この辺り一帯を全て焼け野原にしてしまうだろう。


「いいか。京之助、唯。俺が雷操を使ったと同時にケルベロスを挟むように魔力檻を作れ。俺が突っ込む」

「わ、わかった」

「え、ええ」

「スゥ………。はぁ………。よし、行くぞ」

「「ゲージ!」」


 俺の雷がケルベロスに向かって進む。同時に京之助と唯の魔力檻ができる。ケルベロスは動き出す…。


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