君は僕の助けだと信じてる。君が俺を貶めた女とも知らずに。

「いや〜。当たるかな〜とは思ったけどまさか本当に兄さんの担当になるとは……。

 あれ?言ってなかったけ?私転移免許特級よ」


 誇らしげに無い胸を張る。転移免許とは、魔法の使用法律が緩和されることが決定した時にできた制度で、この免許を持っていないと転移ができない。

 ちなみに3〜1級まであり、

 3級は国に認められた区間を1回につき2人まで。

 2級は1回につき5人まで、国内で。

 1級は国内で転移を生業に働くことを許される。国外ではもちろん国外の法律に則る。

 魔法行使の法律の緩和が難航したのは、タクシー業界の仕事が減るとの事。結局、反対派の議員がいきなり従順になったのだが……。黒だな……。

 他にも治癒免許や、運送免許、修復免許に飛翔免許など様々だ。


 でだ、特級。これはメチャメチャむずい。実際、実技試験では転移で地球を一周するそうだ。しかも長くて3時間で。10人連れて。

 さらに、魔法行使に関する国際法のペーパー試験があると言う難関中の難関。

 その代わり、日本の転移免許特級は緊急時には他国に連絡をした際、転移が許される。

 また、未成年でも中学生以上なら転移を生業に出来る……が……。

 正直な話し、俺はこのアルバイトに反対だが、危険は少ないし、許そうか……。


「唯……。ここに来るなら送ってくれてもよかっただろ……」

「イッツ、ア、サプラ〜イズ!昨日は楽しかったよ亘さん!」

「あ、ああ」

「「誰?」」

「あっ京之助と奈々華は知らんか……。俺の妹の唯だ。一応魔法は俺が保証する。世界トップクラスだ」


 くるっと回って俺に指を向ける。こんなに唯はうざかったっけ?

 てか亘昨日唯とデートしてたのか……。


「じゃ、いっきま〜す。こちらパイロットNo.3、堂上綾です。これから転移します」


 綾が耳のインカムに話し掛ける。耳を澄ますと渋いおっさん声が聞こえる。


『こちら管制室、転移室No.3の安全を確認します』

「了解。

 ではでは皆さまお早う御座います。どうも今回のパイロットを務めさせて頂きます堂上唯で御座います〜。

 これから転移致しますがその際の注意点をご紹介しま〜す」


 ノリノリの唯。なんか某有名テーマパークの係員のおねーさんみたいだ……。


「注意点としては。皆さま私の体に必ず直に触れて下さい。でも、セクハラはいけませんよ〜。

 更に自分の荷物をしっかり認識して下さい。忘れ物が多いですからね〜。あっ、転移の許可が降りました。では皆さましゅっぱ〜つ!」


 唯が腕を天に突き上げて亘に抱き着く。俺達は戸惑いながら唯に触れた。


「皆さま、では転移〜!」


 目の前がホワイトアウトする……。そして、目が悪と蝉の声が耳に煩い。


「皆さま到着で〜す。それでは良い旅を〜」

「いやあの唯さん。貴方ね、親の許可とってる?」


 完全にテーマパークノリの唯に話し掛ける。


「それはお客様に教えることでは無いので……。それでは、良い旅を〜」

「おい、ちょ…」

「すいません。そこに留まられると次の転移が成功しないので……」


 背後から係員に注意され、荷物を掴む。


「はぁ……。唯、帰ったら説教だからな。でもまぁ……ありがとう」


 お礼を言って唯と別れた。そこからホテル内の教師に出席確認をもう一度して、部屋鍵を受け取る時にその教師に話しかけられた。


「ほう……。男女一緒か……。今年初だな……。変な気は起こすなよ」

「え?今年初?」

「ああ。言っておくが男女混合の班はあまりいないぞ。カップルが少ないし、安全面の為に5人班を組む奴が多いから1人あぶれるしな。

 ほら、さっさと行け」


 教師に促されて部屋に向かう。部屋は荷物を置い2泊するだけなので狭い。


「ん〜っと今日はオリエンテーションしてその後森を軽く歩いて終わりか……」


 畳に腰を落ち着け、栞を見て呟く京之助。あれ?


「そう言えば班長誰?」

「いや、お前だろ」

「え?俺?嘘?」

「いや、お前だ」


 京之助に続き亘も俺を指差す。俺だったか?


「そっか……。まぁいいや。それで?今回みんなの役割が……」

「えっと…。俺京之助が日本刀でしょ?亘がくれたやつ……。で、その亘がヘイト集め兼いざという時の為のドス。奈々が大剣で、綾さんが……」

「綾でいい」

「わかった。綾が解体と指示で……海斗が…」

「短剣だ。だから亘が最前衛、京之助と奈々華が前衛、綾が後衛で俺が遊撃と……」

「それにしても日本刀と奈々の大剣はすげぇな……」


 京之助が感心したように言う。金持ちの特権だな…。校内サバイバルと違い、今回は死の危険性があるので、舞さんの発明品に頼らず、実際に買った。


「海斗はなんで短剣にしたんだ?今までヌンチャク使ってただろうに…」


 亘が不思議そうに聞く。まぁそうだろうな…。


「いや、短剣は前世のやつでね……。ちょっと色々あって…。」

「ああ。そう言うことか、すまん」

「いや、いいよ。ヌンチャクだと殺傷能力低いし、家にいい短剣が一杯あったし。一応この1週間触り続けて来たからブランクは抜けてる。」

「大丈夫なの?」


 綾が心配そうに聞いてくる。多分前世のトラウマの事を言ってるんだろう。


「いや、本当のところはちょっと怖いけど…。まぁ俺には綾がいるし?いざって時にすぐ殺せないと綾を守れんからな」

「そう……。じゃぁ……。これ……。渡してもいい?」


 綾がガサゴソと鞄を漁り出したのは60cmぐらいの大きさの檜の箱だ。


「え?なにこれ?」

「開けてみて……」


 なんだこの微妙な既視感……。違和感を感じつつ箱を開け、何かを包む布を剥ぐと、赤の紐が巻かれた上品な柄、鞘は木で出来た漆の見た目で、刃が綺麗な緋色茜の刀が出て来た。


「その……。カイが短剣使うって言うから……。用意した…。大きい方も必要かなって」

「おい!か、金は!?」

「あ〜っと。それは亘銀行の無金利ローンだ」


 亘がなんて事無さそうに言う。


「そんな!綾、それは流石に…」

「将来海斗が稼いで返すだろ。いいんじゃないか?将来が確約されて」

「そっか……。そうだな!ありがとう綾!」


 丁寧に布に包み、俺のスーツケースに仕舞う。


「ちゃんと返すからな。亘!名義俺に変えといてくれ」

「了解!」


 俺の言葉に綾は嬉しそうに顔を手で隠す。綾の方を向くと綾は指の隙間から俺と目を合わせ、また目を閉じた。

 可愛い……。


「よし、じゃあいちゃついてる奴はほっといて大広間行くか。オリエンテーションに遅れちまうし」

「うん!行こ行こ!」

「さ〜んせ〜い!」


 3人が栞と筆記用具を持って立ち上がる。


「おい!待てよ!」


 俺は綾といちゃつくのを辞め、準備に取り掛かった。



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