お前らには見えない角が俺には生えてるんだ。



『これから3分間、戦闘を禁止し、フィールドを縮小します。場所は校庭です』


 最終ラウンドだ。この時、生存者は約20人とかなり少ない。そこまで生き残れたか…。


「じゃあ、動くわよ」

「ああ。わかった。にしても今回俺って何もしなかったな…」

「そりゃだって亘は女子トイレと通風孔だけでしょ?仮想世界でも教員用女子トイレに入るのはちょっと難があるわ」

「それな。まぁいいや。行くぞ京之助」


 突っ立て居る京之助を叩き、扉を出る。今は非戦闘時間だから別に堂々と歩いてもいいのだが、なるべく生きている事を隠したい。俺はプールから出て、裏道を通り、倉庫に前から入れていた迷彩服に着替える。須藤はここで脱落予定だ。武器を持っていないので、敵に倒されてkill数を増やさせるよりも、縮小区域侵入で死亡した方がいいからな。


「綾。武器はちゃんと使えてるか?」


 チャクラムを持ってじっと見る綾。心配になって声をかける。


「ん?…ん…。違う…。大丈夫…」

「そうか?ならいいや…」


 よくない事ぐらい分かってる。でも綾はやせ我慢するようなやつじゃないから大丈夫だろう。

 校庭の端から入り、草木に紛れる。


『フィールドを縮小します。「角なし兎」須藤奈々華が禁止区域侵入により死亡しました。順位は23位です』


 頭の中のアナウンス。校庭の中心では男達が群がる。亘と京之助がその群れに飛び込む。亘が殴る寸前に前の男がのけぞる。あの拳につけたBB弾って効果あるんだ。

 京之助は鍔迫り合いから剣先を射出させて優勢をとっている。そこに俺が銃を乱射する。亘達諸共撃っていく。俺にエイム力があればよかったんだが、生憎持ち合わせていないからな……。


『「角なし兎」紅月亘、沼木京之助死亡。総kill数、31人』


 やっぱり少ない。校庭にはもっと居たのに……。

 屍を踏まない様に気を付けつつ校庭の中心に出て、声を張り上げる。


「出て来いよ。コソコソ隠れて人の獲物奪ってんじゃなくてよっと」


 そう言うと同時に地面が盛り上がり、針山ができる。そこをサイドステップで躱す。


「へぇ。今の躱せるんだ。海斗くん…。いや、雷操くんかな?」


 土中から出て来る男は…手塚英治。


「何故知ってる……」


 恐ろしく低い声が出た。


「あれれ?体力測定の時に言ったじゃん。雷操で砂を避けるとは頭いいねって」


 途中で地面からいく本もの土槍が生えて俺を狙う。それを右足を軸に回転してバックステップ。


「そこじゃ無い…。雷操という言葉を何故知っている…」

「ん?そうだな〜。僕に負けたら教えてあげるよ。僕って優しいな〜。勝てない相手に勝ったら教えてやるとか教える気ないもんね?でも僕はそんな事しないもんね〜。じゃ戦おうか」


 うざい…。こいつの魔法は…西洋zy……。いや、現実逃避なんて辞めよう。

 地面から生えて来る土槍を躱しつつ、頭では別の事を考える。

 こいつの魔法は土操だろう…。条件は3つ。

 1、使用者から半径10m以内である事。

 2、使用者が常に意識する事。

 3、使用者が操る物を「土」と認識し、その「土」が使用者の認識する、「土の地面」に常に接している事。

 この三つだ。それぞれの操魔法で条件の違う3つ目。

 俺の場合は「身体の末端から放電し、使用者の認識する「生物」「非生物」のどちらかに流れる」だ。

 簡単に「認識」と呼べば何だって操作出来ると考えられがちだがそうでもない。難易度で言うと「自分の足」を「海水」と捉えるレベルで無いと「土」以外の物を操作出来ない。

 そして手塚が何で土操を使えるか…。転生者だから、と考えるのが王道だし、確率も高いだろう。後は神の使徒とかかな……。

 そこで思いつく……。こいつは…俺の前世を知っているのか……と。

 恐怖で身が竦んだ…。それが命取りだった。地面から生える土槍に突き飛ばされる。土だから打撃で済んだが、これが鋭利なもんだったら…。


「グハッ」


 かなり高く打ち上げられたのか、地面と衝突した時の衝撃が強すぎる。


「あれ〜?余所事考えてたでしょ。あれ使わないの?ら・い・そ・う」


 手塚は俺に近寄る。くそ……。

 痛みで震える足を立たせ、立ち上がる…。右肩が外れたのかダランと垂れ下がる。膝は一向に笑い続け口の中には血の味が滲み、突かれた腹部は悲鳴を上げる。

 雷操…。多分使っても無駄かも知れない……。でも……。

 再び盛り上がる地面。まるで獲物を見つけた肉食の昆虫の口の様に土が俺にゆっくりと、本当にゆっくりと向かう。

 足元は波打ち、俺のバランスを崩させる。その場に尻餅をつき、その口を見る…。それでも…。


「ハハハ、差し詰め追い詰められた非捕食者?気分はどう?」


 手塚は俺を笑う。手塚は俺に近づき、俺の周りを塞ぐ。それでも…。肋骨が折れ、痛みを常に訴える肺を酷使してありったけ叫ぶ。絶望から希望を見出したり、奇跡を願うのでなく…。俺は。


「俺は!負けるだけじゃねぇ!まだ!負けてねぇ!」


 楽観主義、理想を語る有言不実行者、何とでも詰れ。俺には…。


「ハハハ!理想主義者の塊じゃん!」


 手塚の声だけが聞こえる。すでに太陽は土が塞ぎ、真っ暗な中、徐々に迫る土だけが感じられる。

 それでも…。図星だし、俺のはこれしか無いかも知れない…。でも…。まだ…。

 俺は力を振り絞って土中にある鉄パイプを雷操で引き寄せる…。


「あっ!教えてあげるよ。僕ねぇ」


 手塚が俺に追い打ちを掛けようと話しかけて来る。

 うるせぇ!まだ負けてねぇ!























「君の世界の勇者様だよ!アハハ!今の君はまるで迷宮主みたいだ!」







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます