角の無い兎は隠れて当然だろ?

「え……?」

「いや、だから…角なし兎だって」


 京之助が驚いた声を出す。別段驚く程の事でも無い。


「こち……。めんどくさいわね。確かにカッコいいけどNO.呼びは時間の無駄よ。普通に話すわね。それでカイト…。角なし兎はちょっと…」

「俺はいいと思うけど」

「カイに任せる……」


 綾と亘が賛成。勿論俺も賛成票なので多数決で決まりだ。


「まぁいいか。別にそこまで関係無いし」

「そうね」

『ピンポンパンポ~ン。これより第154回、校内サバイバルを始めます。全ての生徒は速やかに仮想世界の入室を許可して下さい』


 全員の同意を得た直後放送が入る。数秒後に頭の中に響いた仮想世界の入室を許可と念じ、プールの倉庫の小窓から外の様子を伺うと、校庭の端…つまり学校の敷地の外が陽炎のようなバリケードで覆われていた。へぇ…こう言う事か……。


『それでは1分後に、試合を始めます。全生徒はそれまで戦闘を始め無いようにして下さい』


 頭の中に声が響く。長いようで短い1分だった。


『それでは…始め!』


 合図と共に一斉に足音や戦闘音が聞こえる。揺れる揺れる〜。


「ねぇ。あのさ、これってこっそり相手倒してもいいの?」


 須藤が俺達に聞いて来る…。だめだこりゃ……。


「逆に聞くぞ?倒すって相手を殺す事だってわかってる?脳死とかじゃなくて細胞の生命活動を停止させる事って」

「うっ……。わ、分かってる…」

「そうか…。じゃあいくら仮想世界で相手は実際は死んで無いとしたって殺せば目の前に死体が出来る訳だ。理解出来るか?」


 その時、階上から悲鳴が聞こえて来る。丁度インカムはその音を拾ったみたいで、無線機の奥で息の詰まる音がする。


「このサバイバルはな、1年が圧倒的に不利なんだ。腕力とか魔力とかの不利じゃ無い。精神的なものだ」

「話の骨を折るがもう一つ。1年は200人居るのに2年以降は計180人程度しか毎年居ないだろ?それはこれから1年間ある行事に耐えられなくなって退学するんだ」


 亘が俺の説明を捕捉する。


「須藤、お前も今の話は前から知ってただろうし、自分は人を殺せるとも思ってるだろ」


 須藤は返事をしないし京之助と綾は黙って聞いてる。


「絶対に無理だ。人殺しを平気で出来るのは俺ぐらいだな」

「ああ。俺だって殺す寸前に躊躇いそうだ」

「上のステージで殺し合いが起きてるけど一年が一方的にやられてるしな…」

「私も……。出来ない…。ここから狙えば校庭の生徒も殺せるのに」

「わ、分かった……」

「よし、ならいい。俺は校庭の奴等を殺していくけどな」

「え?」


 そう言って須藤の声を無視し、俺は倉庫の小窓を少し開ける。腰から電磁加速銃を抜き取り窓縁に挟み、自動リロードに設定し、舞さんに作ってもらったスコープとレーザーポインターを取り付ける。ここは半地下なので向こうからは俺を探すのが難しいだろう。

 弾をリロードし、校庭の戦っている大男にポインターを合わせてゆっくりと電気を送り込む。


 ウィーーーーーーーーーーー


 電磁音がドンドンと高くなる。そして、俺は引金を…引いた。


 ダン!


「ヴッ!」


 男が倒れる。そして地響きを立てる瞬間に銃声が連続的に鳴る。その音と共に校庭の生徒がバタリバタリと倒れる。そして真ん中の男1人を残して全員打った。


『堂上海斗、10:20、11人殺害。チーム「角なし兎」、21kill』


 頭の中に声が響く。真ん中の男はキョロキョロと辺りを見回している。俺が真ん中の男を残したのは、俺の存在を隠す為だ。その内遠距離殺害と気付かれるだろうがそれは遅いに越した事はない。

 にしても思ったより数が少ない…。気のせいか?


「か、カイト。今の銃声で多数のチームが校庭に降りて来てる。強い奴は先に殺すのが暗黙のルールみたいで他チームなのに戦い合わない。綾ちゃんの所の屋上に数人の生徒が集まってる」

「海斗ナイス。じゃあ綾も手筈通りに」

「ステージの連中も去って行った」

「分かった…。気を付ける」

「綾…。怪我するなよ」


 心配で仮想世界なのにそう言ってしまう。

 まぁ、今回の作戦はこう。校庭に18人ぐらいいるとの情報を舞さんの先輩情報で入手した。なので最初はバラバラに自由に隠れる。だが俺はプールの倉庫、綾は屋上と決めた、俺が銃で校庭の奴を殺す。そこで強者を先に抹消する為に校庭に人が集まるので更にそこを俺が殺す。勘のいい奴は屋上からの遠距離と考え、登って来る奴らを綾が前々から仕掛けた罠で殺す。

 本当は綾にやって欲しくなかったのだが、やると言って聞かないのでやらせた。疑問に思う方もいるだろう。

 なぜ屋上に誰も居ないのか。それは遠距離攻撃が出来る人が少ないのと、屋上は一本道で逃げ場が無いので不人気なのだ。更に大体の遠距離攻撃をする人は校庭に面した教室で籠城するなどが多い。


「大丈夫だから…」


 俺はその言葉に応答せず、また、銃を構える。数秒後に校庭に人が雪崩れ込む。直ぐに真ん中の男は殺され、校庭で乱闘が起こる。そこを又、俺が打つ。頭の中に倒したログが流れて来る。手当たり次第殺していく。俺は慣れているがこの光景はえげつない。目の前で人がいきなり倒れて死ぬのだ。それも原因不明の状態で。

 音バレを防ぐ為、極力喋らないと言うルールを作ったのでみんな押し黙っているが聞いてて気分のいい物ではないだろう。


「綾ちゃんの所にも来たわよ。人数は3人一かたまりよ」


 須藤が雰囲気を変えようと明るい声で言う。


「了解…合図して」

「ゼロで紐を切ってね。3、2、1、0」


 綾はマイクを切っているがそれでも階段に仕掛けた巨大な鉄の塊に潰されるのを想像してしまう…。


『「角なし兎」計21killです』


 頭の中にアナウンスが流れる。


「そろそろ、フィールドが縮小するから、イモリは終わりだな」



「角なし兎」の筆者の語源説明…。


「兎に角」って皆さんなんて読みます?まぁ普通は「とにかく」って読むんでしょうけど僕は「うさぎにつの」って読んだんですよ。そんな漢字の読み間違えがこれを作っているって言う話。

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