打たないショットは、100%外れるんだ。


・You miss 100% of the shots you don’t take.


 亘が投げる。綺麗なフォームで見とれてしまった。ボールは端から少しづつ曲がり真ん中のピンに当たってストライク。


「次は京之助だな」

「ああ」


 京之助君が立ち上がり球を取る。亘には劣るけどそれでも綺麗なフォームで吸い込まれるように真ん中のピンに当たるも一本残る。


「ああ〜。ミスった」


 京之助君は再度球を取り投げた。それは残ったピンに真っ直ぐに進み完璧に倒した。


「まぁスペアか。上々。次は奈々華さんだね」

「ええ。行くわよ」


 私は席を立ち、10号を手に取る。先の2人には全く及ばないけど自分なりによく投げられた。結果スペア。なぜ歓声も何もないかと言うと……。

 私はその原因を見る。膝を抱えて席に座り青ざめた顔でブツブツ呟く……カイト。まさか……。いや、でもカイトに限ってそれは……。

 そんな事を考えていると綾ちゃんが7本倒して戻ってきた。カイトは目を見開いてなんか言っている。大丈夫かな……?


====


「い、行きます……」

「そんな戦場に向かう兵士みたいな事言わんでもいいんじゃない?」

「仕方ないよ」


 俺のツッコミに亘が憐れむ目を海斗に向ける。海斗は投げた。フォームはそこそこ。これだったら……。


 ガコン。


 ガターだ。でも緊張でもしたのかな?でも海斗が緊張なんて……。

 もう一回投げる。


 ガコン。


 ガターだ。

 え?


====


 2連続ガター。え?カイトが?


====


 おっ。最初から決めてきたな海斗。


「海斗。明日はあるからな」


 慰めで言ってやる。と言いつつ笑ってしまうこの背徳感。タマンねぇ。そして優越感は絶対にこの後でも味あわせねぇ。


====


 もう……いいよ……。


「と言う事だ」

「どう言う事?」


 亘の声に須藤が聞く。ほっといてくれ……。


「海斗はボーリングがめちゃめちゃ下手くそだ!」


 ぐっ!

 胸に刺さる亘の声。

 その痛みで……意識が無くなった。


====


「あちゃ〜やり過ぎたか」

「海斗の弱点ってこう言う事だったのか」


 海斗が落ち込んでフリーズしてしまった。


「カイの弱点見れた……。くふふ…」


 綾はご満悦の様子。


「でもなんでボウリング行くと分かったの?」


 須藤が聞いてくる。そう。昨日の夜、トイレに行ったら迷っている須藤に出会ったのだ。曰く海斗に置いていかれたと。そこで「いい所に連れてってやる」と海斗が言ったのを聞き、行動に移したのだ。

 俺以外は海斗がボウリングが下手だと知らない状況で。そっちの方が楽しいだろ?


「海斗はこの後にある競技を俺らにやらせたがるんだが如何せん強過ぎてな。俺らが落ち込む事を危惧して皆が楽しめるボーリングを最初にしようとしたんだろ」

「いや、その前になんで娯楽って分かったの?」


 ああ。そこね。


「知らん」

「知らんのかい!」


 いつの間にか綾は海斗に膝枕をしていた。ぞっこんだな。


「でも少しやり過ぎた?」


 京之助が海斗を憐れむ目で見る。


「いいのいいの。これぐらい落ち込ませてようやく勝負になるか、ならないかだから」


 まっ、実際は綾以外がまともに海斗と戦えないし拒否するだろうから勝負しないだろうけど…。


「そんなに強いのか?」

「ああ。じゃあ続けようか。綾はやるか?」


 海斗の髪を撫でる綾を見る。まぁ多分……。


「んんん。やらない……」

「だろうな。じゃゲームセットしてこの3人で海斗が回復するまでやってよう」

「OKです!」

「了解!」


====


 ん?ここは?頭が柔ケェ……。谷の所に頭があるな。ふよふよしててあったかい。気持ちいいいな……。

 うっすら目を開けると目の前に綾の顔があった。そうだ。ボーリングきて……亘に…。


「カイ…生きてる?」

「まだ傷は痛むけど大丈夫だ」

「心の傷……ね」


 聖母様ぁ……。


「じゃあ……行くか」

「カイの好きな所…?」

「ああ」


 俺はバッグを持って立ち上がる。


====


「ビリヤードはどこに行けばいいですか?」

「少々お待ち下さい」


 中央の店員さんに聞く。この施設が大きすぎて見つけるのに時間がかかるので店員さんに聞く。


「あのさ……。ビリヤードって……。ビリヤードって……」

「須藤どうした?別段おかしくないだろ」

「いやおかしいでしょ!ビリヤード趣味って!」

「ん〜。そうなのか?でもジュニア杯とかあるぞ?まぁ俺は東京ベスト8に入れなかったけどね」


 あと一勝でベスト8を逃したのだ。それでもまぁ16位。


「えっと……。海斗はビリヤードをする気か?」


 京之助が聞いてくる。


「当たり前だろ。じゃなきゃ……」

「申し訳御座いません。只今調整中です」


 ビリヤード場の店員さんが申し訳無さそうに言う。


「修理!?」

「はい……。今日は調整日でして……」


 雷が落ちる。なななんと……。


「申し訳御座いません」

「い、いえ……」

「ドンマイ。カイト。まぁ高校生らしくスケート行こうよ」

「賛成!」

「俺は別にどこでも楽しめるが…」

「私はカイが良ければ……」


 気分が落ちた……。しょうがない……。


「スケート行くか」

「はいけって〜い」


 須藤がはしゃぐ。スケートが好きなのか?


====


「ヒューーーー!す〜いす〜いスッタカタッタ。ビュ〜ん」


 風にもみくちゃにされながら滑る。姿勢を低くして右足を右斜め前に、左足を左斜め前に滑らせてコートを駆け抜ける。ちなみに今日は平日なので滅茶苦茶空いてる。ほぼ貸切だ。


「カイト!、スピード出し過ぎ!危ないからダメ!てかみんなを待とうよ!」


 俺の横に須藤が来て俺に注意をする。俺はシューズの貸し出し後、すぐにコートに来たので一番乗り!


「なっ!須藤速すぎ!俺に追い付くなんて!」

「あんたの方が速いわよ!って逃げないの!」


 さっきより足を速く動かし須藤を引き離す。


「スケート歴10年の私をなめるな!」


 直ぐに追い付かれて壁に激突させられて止まらせられた。


「あぶねぇな!」

「止まらない奴はこうやって止めるのよ!」


 見上げると仁王立ちで踏ん反り返って言う。何様だ?


「キャッ!」

「綾!」


 一気に立ち上がり加速して綾の前に行く。そしてスライディングをすると、丁度俺の上に綾が乗っかった。セーフ。


「怪我はないか?」

「ううん……。ない。ありがと……」


 綾が俺の上から退く。が、またこけた。ドジっ子って可愛いな…。


「一緒に滑ろっか」


 立ち上がって綾に手をのべる。握られたその手を持ち上げる。ふらふらする綾を引っ張り、腰を掴んで安定させる。


「か、カイぃ……。これ…」


 恥ずかしそうに顔を赤らめる綾。


「人、これをバカップルのイチャつきと言う。それとも嫌か?」

「カイ……。分かってるくせに……」

「じゃ、えっと……。壁に捕まって。そう。じゃあ手を離すよ」


 そう言うと不安そうな顔をする綾。


「大丈夫。俺はここに居るから。」

「ん……。スゥ…ハァ…」


 俺が離れると必死に壁にしがみ付いて足をプルプルさせる。リスみたいで可愛いのでもっと見ていたいという邪な感情しか芽生えないがこれじゃダメだ。

 俺は綾の目の前に移る。そして肩を持つ。


「いいか。俺の目を見ろ。両目で両目をだ」


 綾は壁に向けていた顔をこっちに向ける。


「俺の肩を持って」


 綾に届くよう少し屈んでやる。綾は片手づつ俺の肩を掴む。綾は自立できないので必然的に俺の肩にかかる体重が重くなる。こりゃ肩こり確定コースか?

 綾の体を少しづつずらし、重心を真ん中に持って来る。


「足をガニ股にしようとて」


 綾は足を広げようとするが滑って出来ない。それで丁度いい。俺はもっと屈んでやる。


「重心を下げて。そう。OK。少しづつ足に体重をかけるんだ」


 ゆっくりと俺から体が離れる。そこで俺は少しづつ綾にかけていた手を離す……。


「キャ!」


 完全に手が離れきった直後綾の体が傾く。俺は綾を抱き抱えそのまま倒れた。


「危ないからね。ゆっくりやってこう」


 俺は綾に笑顔を向けた。


====


「危ないからね。ゆっくりやってこう」


 彼が笑う。心の声が叫ぶ。”偽物の幸せを彼に掴ませるな”……と。 











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