僕は生きてることが幸せさ。僕が僕らしくいられることが幸せなんだ。

・I’m happy to be alive, I’m happy to be who I am.


 俺はずっと部屋に篭りあのアンドロイドの事を考えていた。なんで俺は戦わなかったんだろうか。勝てなかったから。しかし、何故だろう……。今まで負ける事の方が多かったのに……。

 ずっとそれを考えていた。


 ピ〜んぽ〜ん。


 俺はベットから降り、玄関に向かう。唯は図書館、両親は原宿で遊んでくるらしい。詰まりこの家には俺しか居ない。扉を開けると綾が居た。手に紙袋を下げている。


「おお。おかえり」

「ん…。これ……。お土産…」


 綾が持っていた紙袋を渡される。中を見ると小さな紙袋が入っていた。


「これ何?」

「御守り…。グアムに売ってた」


 俺は転けた。何故にグアムで御守り?わけわからん。そんな事考えていたらいきなり綾に抱かれる。


「カイ……元気ない…。どうしたの?」

「あ、あぁ。そうなんだよ……。どうしたもんか……。亘もいれば…」

「おーヒョヒョヒョヒョヒョ。白昼堂々とイチャイチャしやがって」


 亘がいきなり飛び出てくる。


「おま!どこにいたんだ?」

「ん?俺は最初からここに居たぞ」


 そう言いながら俺に細長いものを渡してくる。


「フランスパンだ。それより何があった?」

「まぁ入れ。教える」


 俺は二人をリビングのソファーに座らせ、キッチンに向かう。

 フランスパンを薄切りにし小皿にオリーブオイルと岩塩を入れ、お茶と一緒に持っていく。

 そして二人の向かいに座った。


「えっと……。二人が帰ってそのあとかな?えっと……」


ーーーー


「へぇ。康秀さんと会ったんだ。んでその正義厨君と同じ高校になったと」

「で……。そのアンドロイドをカイは気にしてる……」

「そうだ。なんか心残りだし、焦燥感がな……」


 背もたれに背中を預け、フランスパンを齧る。うめぇ。


「そりゃ当たり前だろ。海斗の切り札使っても勝てなかったんだしな」

「ん……。雷操使っても勝てなかったから…」

「あっ!そうか……。それでか……。ならどうしたら…」


 簡単な事を見逃していた。言われてみればその通りだ。


「海斗は馬鹿か」

「へ?」


 いきなり罵倒され訳がわからん。


「なんで勝とうとするんだ?んな別に雷操はチートじゃないんだしそもそもかつ必要無くないか?」

「普通は負けるもの……。アンドロイドにまで勝つ必要はない…」


 あぁ。そうか……。腑に落ちた。なんで気にしていたのか……。勝てる自信が無いからだ……。


「俺はヨーロッパでちょっと色々やってきたからな。期待してろ。俺だって助けてやれる」

「別に一人で勝つ必要ない……」


 なんか嬉しいな…。


「ただし…。客に出した物を全て自分で喰うのはどうかと思うが…」


 亘が指を指した所を見るとフランスパンは無くなっていた。

 そして頭の中に居座っていた悩みも無くなっていた……。


====


「お〜似合ってる似合ってるよ。兄さん」


 俺は今朝届いた制服を試着している。そこに唯が乱入してきたのでファッションパーティーを開いたわけだ。

 男子の制服は紺色の長ズボン(夏服は薄く、冬服は厚い)と胸元に校章の刺繍入りのシンプルなYシャツ。上着はパイピングの無いスッキリとした詰襟で、襟元に校章がある。ホックで留める系統で、ボタンは無い。

 ちなみに女子はスカートがタータン巻きでタータンチェックの入った物で冬は赤、夏は淡いブルーがベース。Yシャツに関しては男子と同じ。上着は校章入りの金ボタン。男子とは違い、詰襟が無い。


「だろ?きっと綾も可愛いだろうな〜」

「行ってくれば?」

「そうだな。そうする」


 善は急げ。俺はそのままの格好で家を飛び出し隣の家に乱入する。


「失礼しま〜す」

「あらら。いらっしゃい。海斗君制服似合ってるわよ。綾は今部屋に居るわ」

「ありがと〜ございま〜す」


 成美さんに頭を下げ、階段を駆け上る。そして突き当たりの部屋の扉を開ける。


「キャッ!」


 部屋の中で綾が着替えていた。体が固まる。真っさらな肌が露出しており艶めかし……。って!


「どワッチャ!メンゴ!」


 俺は扉を高速で閉め座り込む。すると下から成美さんが登ってきた。俺に麦茶を渡して来るので受け取ってすぐ飲み干した。


「タイミングばっちりね。丁度さっき綾が制服を見せに来て海斗君に見せたいって着替えに登ったのよ」


 成美さんが小悪魔チックな笑みを浮かべる。


「ちょ!成美さん。辞めてくださいよ〜。それで関係崩れたらどうしてくれるんですか」

「そんな事まず無いわよ。私この部屋で寝起きしてるの」


 そう言って綾の隣の部屋の扉を指差す。そうですか。で?


「でね、夜に時々、いや最近は大抵ね。隣の部屋からくぐもった声が聞こえるの。時々カイって聞こえて来るの。きっと綾は貴方のこと考えながら…」

「ダーダーダー!だめ!それはダメ!言っちゃだめ!」


 俺は成美さんの話を遮る。なんつー話するんだし。


「あらら。止められちゃった。まぁ兎も角そういうことよ。じゃ失礼するわ」


 成美さんは鼻歌を歌いながら俺手からコップを受け取り階段を降りてった。しかし綾g……ダメだ!中身三十路のおっさんが考えちゃいけないよ!ダメだ!邪念よ!去るんだ!

 そこに追い討ちとばかりに声が響く


「カイ……。もういいよ…入って……」


 俺は何度か深呼吸をして扉を開ける。


「すまんかった……」

「いい……。それより…どう?」


 脳に雷が落ちた。悩殺的に可愛い。可愛すぎる。

 綾は顔を赤く染め、髪を人差し指でくるくる巻いていた。


「かっ可愛い…。似合ってる……」


 なんとか喉から声を絞り出す。


「よかった。カイも似合ってる…」


 そう言って俺に抱き付く綾。俺を見上げるこの顔!やばい!グォォォ!今なら俺世界を滅ぼせるかもしれん。

 その夜は綾のことが頭から離れず、眠れなかった。


====


「え〜、この度は、合格〜おめでとう御座います。きっと勉学に……」


 長い。入学式がマジで長い。綾も亘も遠くにいるので時間潰しが出来ない。隣の天パ君は時折指を折っては時計を確認し、笑っている。何やってんだ?反対側の隣のやつは寝ている。しかも姿勢を崩さずに。うとうとしていたら入学式が終わり、立たされる。寝ていた奴はぼーっとしながら歩いていた。そうそう。綾も亘も俺と同じクラスだ。


 はぁ、明日は体力測定か……。楽しみだ……。


====


 担任は国語科主任で、俺の顔を見るやキッって睨みつけてきたんだ。なんかしたっけ?教室での席はさっきの天パ君と睡眠君が前後に、左隣に綾、左前に桂馬飛びで亘だ。京之助は別クラスだった。

 担任がなんか言ってるが最初から敵意向けられたら聞く気なくなるわぁ。


「それでは自己紹介をして下さい」


 担任の指示で自己紹介をさせられる。まぁキャラ濃そうな奴としては……。


 天パ君……。


「え〜手塚英治です。一応魔族です。魔法は……玄武流かな?まぁ宜しく〜」


 かな?は?しかも玄武流ってなんだ?

 お眠君……。


「中山篤…です。宜しくお願いします……」


 完全に睡魔が取り付いているようだ。魔法はなし。

 山田啓我……。


「俺は山田啓我。魔法は言魔法だ3年間宜しく」


 なんかうざそうな奴だ。そのくせイケメン。まぁ魔法は言魔法。綾の事をチラチラと見ている。絶対に渡さんからな……。


 この3人がまぁマーク……ってえ?須藤奈々華?うそ?マジで?合格してたの?須藤奈々華ってあいつだ。望学園の3位の女だ。あいつも合格していたそうだ。知らなかった。クラスも一緒だったけど綾とイチャイチャし過ぎてあんまり話してなかったし。

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