戦え、成長を望めば。

・fight. If you want growth.


 蒼龍。それは雷と共に生き、雷に住み、雷を喰らう、……そんな伝説の龍だ。それに掛け合わせただけ。


「まぁいいや。そろそろこのグループで3番目に強い奴が出て来るんじゃない?」

「ヒィ!おい!なんとかしろ!」


 リーダーが怯えながら命令する。

 すると、リーダーの横に立っていた清楚系のスーツを着た女が向かって来る。ほう。手慣れだな。


「お前か……。じゃあ……。戦おうか」


 その女は動かない。俺も動かない。ヌンチャクをポッケから出し、構える。その女は直立不動を維持している。

 暫く見つめ合い俺は一気にしゃがんで前進。黒屋組のあの男の戦法だ。この女より俺の方が身長は高い。だから1回目は決まる。そう踏んで立ち上が……れない……。圧迫されている。上を見ると片手で押さえられていた。目が合う……。その目は何の感情も無かった。何だろう、感情が吸い取られるみたいだ……。

 どんどん力が強くなる。押し潰されそうになり間合いを取ろうとする、が、押さえつける力が強過ぎて動けない。もっと深くしゃがんで手から逃れる。そして間合いを取った。女は動かない。強かった。今まで戦ったどんな敵よりも……。それこそ自分よ……ダメだダメだ!弱気になるな!


 すぅ。


 息を吸う。


 はぁ。


 吐く。目線を上げると女は先ほどと寸分違わぬ体制にあった。視界の端で京之助は銃と戦っている。勝てるとは思わなかった、が戦えるとは…思う。

 俺は雷操で女の服に雷を通そうとする。が。


「吸電」


 冷ややかな声に消される。なっ!速い。言魔法の生成が速い、と言うか俺の攻撃の前に魔法を生成している。


「へぇ……。速いな……」


 女は何も言わない。まるで……。

 一気に走り寄りヌンチャクを右手で左脇から右肩に通して左手で掴み振る、が、その着弾点にはすでに手がある。上段蹴りをするもそこも既にブロックされる。軸足を変えて前蹴りをするも手で簡単に方向を変えられ当たらない。さっきから振り続けて速度を上げていたヌンチャクを背中から上に投げて中段付き。その手を掴まれ投げられる。

 俺の投げたヌンチャクは俺に強く当たり落ちる。そして更に地面に叩き付けられた。刹那息が詰まり意識が遠退く。


「海斗君!」


 京之助の声が聞こえる。意識を呼び戻す。呼吸が荒い。ゆっくり立つ。何故か女は攻めて来ない。リーダーはさっきからずっと黙っている。


「はぁ……。おい……。テメェ、ナニモ……ンだ?」


 女は何も言わない。身じろぎひとつしない。


「おい……。テメェ……アンドロイド…か?」


 アンドロイド…。元の意味ははAIを兼ね備えたロボット。自身で学習し行動する人工人間。だがロボットの製造はわからない今、ある技術が作られた。それは、死体の傷ついいていない臓器を組み合わせ脳にAIを打ち込む。だが、そのAIに感情は無く本来のAIにある自ら考えて行動する事はしない。命令されてから自身で考え出す。ある意味じゃ無くても奴隷だ。

 その技術は残酷どうたらこうたらで特秘されている……。だが秘密裏に製造されていてもおかしくない。

 女は答えない。もしアンドロイドなら……。

 俺は女を無視して京之助が戦っている男達を雷操で殺し、リーダーに近づく。京之助は驚いて固まっていた。


「ヒィ!来るな!来るな!」


 俺は無視して近づく。女……。いや、アンドロイドは動かない。


「おい!働け!働け!」


 アンドロイドは全く動かない。当たり前だ。命令が悪い。このアンドロイドは働いている。


「なぁ。鍵はどこだ?檻の鍵だ」


 そこで今まで怯えて黙っていた捕まっていた子供の顔に期待が満ちる。


「ヒィ!こっここにある。だから殺さないでくれ!」


 リーダーはポッケから鍵を取り出した。それを奪い、京之助に投げる。京之助はキャッチして檻に近づいた。


「今俺は非常にムカついている。残虐にいたぶりたい気分だ。でも子供の前だしな。

あとお前は命令が下手くそだな。なんとかしろなんて今のAI…おっと喋りすぎた」


 リーダーはそこでホッとした顔をする。


「だからお前を……。普通に殺してやるよ。感謝しろ。長生きするより罪が減るからな」


 そこで、リーダーに触れ電流を流し、殺す。すぐに絶命した。あっけないな……。なんて言うんだろ……。この空虚感というか焦燥感というか。

 そう思った時、わかった。俺は最初から、数分前に逃げた高い高い壁を見てすらもいないことに……。

 そしてその女は……。ずっと止まったままだった。どこも見ず、ただ、次の指示を待っていた。


====


 康秀さんを呼び、女をどうするかで話し合い、結局海に捨てる事にした。京之助はぼーっとしていた。人質は警察に届け、事後処理は康秀さんに任せた。もう……。何もしたくない……。

 押し黙った空気が立ち込めるタクシーの中、後部座席で頬杖を突き窓の外を眺めていた。右で京之助も同じ事をしていた……。これがずっと先に繋がるとも知らず……。




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