In the middle of difficulty lies opportunity.

・困難の中に機会がある。



「こんにちは〜ってあれ?亘さんまだ帰って来てないんですか?」




 美味しく弁当を頂いていたら突然堂上の妹が現れた……。




「あっ……えっとまだ帰って来てないよ……」


「そうですか……。失礼しっ。さよならー!」




 いきなり駆けていった。どうしたんだろう。と思っていたら……。数十秒後に……ゲッ。黒屋だ……。肩をいからせ入ってくる。機嫌悪いな……。


 黒屋大河。黒屋組の組長の孫。黒屋組は警察のトップでもある。そして金崎グループと常に張り合う存在である。






「おい!堂上海斗!出てこい!」




 窓の近くにいた奴が窓を開けた。シーンとなるが、直ぐにまた騒がしくなる。堂上…。お前なにをした?唯三知ってそうな鳩山さんと亘は居ない。海斗の妹さんも今いないし……。




「もう一度チャンスをやる。堂上海斗はどこだ?」




 ん?一回目は「出てこい」で2回目は「どこだ?」って話しかけている相手違うのに何故にもう「一度チャンスをやるに変わるんだ?」


 呆れて目を上げてしまった。視線がぶつかる。黒屋はニヤッと笑って俺に近ずいて来た。俺は席を立って黒屋から後ずさる。




「どこにいる?言え」




 木刀を首に当てられる。その木刀は冷たかった。


 ちょっと待った。そう言えばこいつ放送聞いてないのか?堂上は担任に呼ばれてるんだけど……。


 もしここで木刀を掴めても蹴りが飛んでくる……。フィンランドを蹴ってもその前に飛ばされるだろうし……。時間を稼ぐか……。


 俺は膝をつき、頭を垂れる。




「若様。失礼な事を致しました。誠に……」


「どうでもいいからさっさと吐け。テメェを俺の下僕にした覚えは無い」




 あと少しか?うん。来てる来てる。




「………」




 意味もない事を小声で呟く。




「あ?聞こえねぇよ!」


「……」




 もう一度同じ事をする。教室は黒屋が来たと言うのに騒がしいままだ。




「テメェらうっセェよ!」




 テメェが煩いわ!ボケナスがぁ!目線だけ上げてクラスメイトのメッセージを読み取る。3、2、1。




「なっ!この野郎!昨日はよくも!」




 突然の海斗の飛び蹴りを木刀で受け止める黒屋。バカだな……。奇襲が効かないのは分かっている。堂上の妹さんが後ろから玉袋を蹴り上げた。計3秒のことだ。


 黒屋痛みで倒れるのでそこに海斗が手刀で気絶させた。




「イェーイ!勝った勝った!」


「堂上兄妹が勝ったぞー!」


「カッケー!」


「おい!今回の功労者は赤木だろ!」


「それな!俺だ俺だ!」




 俺は自分の存在をアピールした。




「ウンウン。まぁとにかく勝ったしえがったえがった。みんなありがとね」




 まぁいいか。




====




 今回の黒屋討伐は簡単だ。窓を開けたのは唯ちゃんが入ってくる為。教室を出るとき、窓を開けるようにジェスチャーしていた。そのまま教室内に入ってしまうと、黒屋にはバレてしまう。


 何故なら、基本魔族は常に魔力ダダ漏れ状態である。そして、魔族はその魔力をたどることが出来るのだ。だから唯ちゃんは一旦上の階に行き、魔力を隠蔽して、ベランダから侵入。


 クラスのざわめきの中に最初から居たかのようにする為私達はあえて煩くし、唯ちゃんとおしゃべりをする。そうしながら黒屋に近づき、廊下から来た堂上君と息を合わせて奇襲。ナイス奇襲だった。


 よいしょっと。今回の功労者、私の彼氏である赤木君にご褒美かな?




「じゃあ者共!この神輿!保健室まで運ぶぞ!」


「「おー!」」


「セーノ!」


「わっしょいわしょい!」




 ふふふ。堂上君遊び過ぎでしょ。




====




「んじゃ!ここはローリングヒューマン!いけ!」




 俺は黒屋を階段から転がす。あれ?下から「タンタンタンキュ!」って……。テンポ的に三段飛ばし。近づいて来ているしこれもしかして亘か?




「っ!あー!」




 気付いて声を上げた瞬間亘が姿を現す。当然ぶつかる。こける。立ち上がる。




「わっ、亘!別にお前に当てるつもりは無かった!」


「でも当たったよな?なぁ海斗……」


「知ってるだろ!カール・ルイスの言葉!


 It’s all about the journey, not the outcome.


 すべては過程だ。結果ではない。って!」


「ああ。そうだな……。でもこれは傷害沙汰になるからやめろって言わなかったけ?」




 Ooh.やっべ。どうしましょう……。




「あっ!亘さ〜ん!教室に居なくて心配しましたよ!」


「あっ!唯!昨日の返事は?」


「あっ!」




 「あっ!」が多くないですか?昨日の返事?なんか唯がモジモジしてる。はは〜ん。




「隊長!敵はほだされています!今のうちに!」




 赤城が進言してくる。そうだな。逃げるか。




「セーノ!」


「わっしょいわっしょい!」




====




 そろそろお昼休みも終わりね。ほんと保健室の教員も楽じゃないわ。時計を見ると13:05を指していた。




「ん〜!今日は学食何にしましょうかな〜」


「私カレーにして来ましたよ」




 もう1人の保健室の教員が話しかけてくる。




「そう。じゃあ昼休み終わったら学食行かせてもらうわ」


「はい!それよりも外から神輿の掛け声しません?」




 確かに耳を澄ませば聞こえて来る。




「どうせ生徒のおふざけでしょ」


「そうですね。いいですねぇ青春って」


「そうね。私もそろそろ三十路に入ってくるしなぁ」




 掛け声は段々近くなって突然止んだ。




「田中先生なんてどうです?」


「ダメよ。雪音っちが彼の事好きなのよ」


「ああ。そうか。先輩は原本先生と同級生でしたね。でもなんで?性格が真反対なのに……」


「ん?そうかしら?髪の色ならあれは雪音っちのお祖父さんがロシア人なだけよ」


「えっ!そうだったんですか!」




 そこでチャイムが鳴った。さてと。学食に行こっと。扉を開けると……。そこには1人の男子生徒が横たわっていた。




====




「う〜し、ここなここ!アダムスミスの神の見えざる手!中二病っぽいけど「神の」って部分は後になってつけたと言われている」




 いや、「神の」が無くても普通に厨二だろ。




「これは自由競争でお互いに自分の利益を求め続ければ経済は活発になるって言う事。その反対が江戸時代の株仲間!約1200年前の事だな。こっちは幕府に冥加金を上納する代わりに独占販売ができるってやつ……」


「はぁ……眠……」




 頑張って受けないとなぁ。高校は全国テストで上位から順に指定される。だからクラスメイトと一緒の学校に行くのは狙ってできるものではない。が、一つだけ方法がある。トップを取ればいいのだ。そうしたら綾や亘と同じ学校に行ける。しかも魔族と混合だ。


 高校がこんなシステムなのは表向きには人材の効率的な育成とあるが、その実、魔族のストレスの捌け口となるためだ。魔法の力は脅威だ。もしグレられて暴走されたら困る。だからこそ脅威にならない魔族の下が必要なのだ。


 しっかし歴史はむずいな……。電子辞書でネットサーフィンもどきをやっている。うん。駄目だとは分かっているんだ。でも集中出来ないんだ。仕方ないだろう!


 そんな事を考えていたら見覚えのある名前にぶつかった。




●堂上真也堂上真也どうじょうしんや


 [生物研究家] 2304年〜2345年


 堂上家に生まれ、2328年に帝都大理Ⅱを卒業後、大学院で遺伝子組み換えの研究を行い、哺乳類全般のDNAをほぼ全て解析し、27歳の若さでノーベル生理学賞受賞。その後も研究に励み、遺伝子の組み替えによって大きさ、形、毛色などほぼ自由自在に作る方法を発見。現在その方法は不明である。41歳の若さで自殺が確認された。




 これはダウトだ。堂上家の人間しか知らない情報だが、本当は73年に死亡した。だが、世間が嫌いで注目されないようにする為のカモフラージュだ。しかも文献では遺伝子組み換えの方法も残っている。獣……。




「おい!堂上!起きろ!」


「はい!すいません!」




 はぁ怒られちまった。あれ?何の話だっけ?


 席に座って後ろを振り返ると亘は居なかった。あれれ?


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます