Happiness depends upon ourselves.

・幸せかどうかは、自分次第である。




「はぁ。二つ言いたい事がある。兄さん」




 なんだよ……。




「幸せ…」


「不幸はその不幸を受けた者にしか分からない。自分だけが不幸で当たり前。不幸に種類、度合いをつける事ができるのはその人自身」




 唯の言葉を遮るように言った。これ以上俺の世界を否定されたらもう生きてけねぇよ。




「Happiness depends upon ourselves.……幸せかどうかは自分次第。アリストテレスの言葉」




 そしたら綾が口を開いた。


 じゃあ!




「じゃあどう認識すれば俺の人生は幸せなんだ!」


「は?」




 背筋が凍る思いがした。綾の方を振り返る。そこには仁王立ちした綾がいた。でっかかった。俺よりも小さい綾が大きかった。




「よくわかんないんだけど。なに?じゃあアンタ今人じゃないの?」




 初めて綾の怒声を聞いた。それは怒声と言うには余りにも冷たかった。なんなんだよ…。




「俺は人だ……」


「へぇ。私の事裏切るわけ?」


「は?」




 それこそ「は?」だった。




「幸せじゃないのに私に笑いかけて私にキスとかしてたわけ?」




 声が出ない。




「私と付き合って幸せじゃないの?」
























「幸せだっただ・っ・た・よ」




「っ!____」




 綾は突然駆け出して階段を降りて行った。




「おい!海斗!テメェ!」




 亘が回し蹴りをしてきた。しゃがんで逃げる。




「お前!何言ったの分かってんのか!」


「ああ!幸せだっただ・っ・た・!」




 亘の追撃を何度も躱す。亘の追撃は速い。が、俺には及ばない。


 亘の中断蹴りの足を掴み、引き寄せる。そして組み伏せる。




「幸せだっただ・っ・た・んだよ!でも!こんな風に俺の過去を暴こうとされたら!」


「あたり前でしょ!兄さん!アンタ分かってんの!?綾さんアンタが大会で暴走した時綾さんの行動知らないでしょ!観客席は二階なのに!綾さんは飛び降りようとしたんだよ!


 アンタが雷暴走させてる時!私達が校庭に来た時!私達は閃光から目を守るために止まったんだよ!でも綾さん!最前列の手摺に向かって走り続けて飛び降りようとしたんだよ!高さ6mから!一瞬も躊躇わずにできる?アンタは出来ないのにアンタより身体能力も低い綾さんやろうとしたんだよ!


 勝手に不幸でもなんでもなっとけばいいさ!でも躊躇うくせにアンタのために躊躇わない人に当たってんじゃないわよ!」


「_____っ」


「しかもね!周りの大人に引き止められてても!進もうとして!なんて言ったと思う?アンタなんかにはわかんないでしょうね!自分の努力を盾にして人に当たるクズだもんね!私が行かなきゃ!って私が行ってあげなきゃって行ったんだよ!


 んで!行っても無駄って言われても!綾さん!意味がなくても行く!行くべきだって!この言葉わかる?


 It’s all about the journey, not the outcome.」


「すべては過程だ。結果ではない」




 俺は答える。唯が近づいてくる。




「そうカール・ルイスの言葉。綾さん。アンタが目覚めた時に私が居れば少しはマシになるかもって!それだけのために!私達のように身を守る術も無いのに!どんだけアンタのことが大事なのかわかる?」




 唯が俺を仰向けにして跨る。




「病院の時も!それこそゾンビのように何度も立ち上がってアンタに近付こうとしたんだよ!動けなくなっても進もうとしたんだよ!


 そんなに愛してくれる人に対して何?幸せだった?なめてんのか!今回の事を綾さんの過ちとしたらアンタは綾さんの少しのミスも許さないゴミ人間って事なんだよ!


 なんでこうやってアンタの前世のこと聞こうとしてるかわかる?アンタのこと守る為だよ!それとも情報0で守って貰おうとでも!?」




 唯は泣いていた。ボロボロと涙を零していた。ドロドロした感情も怒りも憎しみも悲しみも、全部無くなった。


 そして感情が無くなった事で空虚感を感じて……。頬に涙が伝った。




「こんなんじゃ返せないし綾さんはしないけど!」




 そう言って手を振り上げる唯。




「最初は私達の分!」




 俺を殴る唯。その拳は、痛かった。




「次に迷惑掛けた私達の家族の分!」




 また殴られる。




「こっちはアンタの影響を受けた人の分!」




 痛い。今受けている拳はこれまでの人生の中で一番痛かった。金崎に殴られた時よりも。




「最後に!綾さんの分!」




 手を振り上げられる。これからくるであろう痛みに怯えて目を瞑った。が、衝撃はこない。目を開けると唯の手を綾が掴んでいた。その顔はぐちゃぐちゃだった。目は充血していた。




「私がする……」




 唯は俺の上からどいて綾に場所を空けた。怖い。唯から殴られる方が良かった。まだ拷問を受ける方がマシだとも思った……。


 綾の手が上がる。怖い。けど、綾はその手を振り下さずに俺を抱き起こした。驚く。が、次の瞬間胸に何かが満ち溢れるような気分がした。そして、決壊した。


 まだ、殴られる方が良かった。バカにされる方が良かった。侮蔑される方が良かった。




「カイ……。私は今も今・も・幸せ。」


「綾……。ごめん……」


「いい……。カイは……幸せ?」


「ああ……。幸せだ……。」








====




 抱き合っている2人を尻目に立ち上がる。




「なあ。唯」


「はい……。亘さん」


「俺と付き合ってくれないか?」


「っ!……は」


「お前!鳩山先輩に何してんだ!」




 そこにきたのは……。163cmぐらいの黒髪、光沢のある黒髪の男だった。


 2人はまだ抱き合っている。




「俺の嫁3号に……。このやろう!」




 海斗に殴りかかるそいつ。海斗は飛ばされた。


 こいつは……。黒屋大河。黒屋組のドンの孫。中一。魔定一級だ。




「鳩山先輩を泣かせるなんて!鳩山先輩!安心してください!俺が殴っときます!」




 あまりの事に声が出ない。思い込みが……。




「激しすぎる…」


「右に同じくです……」




 海斗を殴る黒屋……。区切りが付いたのか、海斗から離れて綾に近ずく黒屋。




「やわいな。マジで痛い拳を受けた事ないだろ」




 海斗が立ち上がって首をカクカクと振った。




「くそ!こいつ中ボスなのか!鳩山先輩!逃げてください!」




 キザに言う黒屋。




「なぁ。ここだけ異世界にあるんじゃないのか?あいつ……。勇者様?」


「うんん。違うと思う」




 唯が俺の呟きに答えてくれる。




「だよな……」


「おい!さっさとくたばれ!」




 黒屋が再び海斗に近ずく。




「遅いんだよな……」


「なっ!」




 海斗が簡単に黒屋の拳を避け、殴り返す。別に黒屋が遅いわけじゃない。海斗が早いのだ。




「うぐっ!でも!バインド!」


「転移!転移!転移!」




 唯が俺の手を握って転移して海斗の手も繋ぎ、もう一回転移して綾の手を掴み教室に戻った。




====




 あのバインドはダメだ。


 私は転移しながら思った。当たったらやばい気がする。だから帰ろう。家に。




「私すぐ戻りますんで荷物まとめてて下さい!帰りましょう!転移!」




 私は自分の教室を思い浮かべて転移する。そのあと、荷物を回収して転移。亘さんのところに戻る。


 苦しさに思わず服の胸元を強く掴む。魔力切れが近い。でも……。




「大丈夫か?」




 亘さんが声をかけてくる。この大丈夫?はまだ転移ができるか?って意味だろう。




「ええ。大丈夫です。では亘さん。自分の家の近くでhとが少ないところを思い浮かべて下さい。強くです。変なところに飛ばされないように気をつけて下さい。行きますよ。転送!」




====




 家の裏に転移した。すげぇ。しっかし……黒屋のバインドを見て唯は動き出した。あのバインド…、何がやばいんだろう……。


 俺はエントランスに入って、エレベーターに入り、カードを当て、最上階を選択する。ドアが開いたので、考え込みながら歩く。でっかい扉にカードをもう一回あて、家の中に入った。




「おかえりなさいませ。亘様」




 メイドが頭を下げた。俺の家は80階建ての高層マンションの最上階。100坪の家だ。まぁつまり、金持ちだ。




「ああ。ただいま小春さん」




 制服を預け、シャワーを浴びに洗面所に向かった。






















































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