Kites rise highest against the wind – not with it.

・凧が一番高く上がるのは、風に向かっている時である。風に流されている時ではない。




 登校すると一瞬で目を付けられた。当然だ。なぜか学園最強の魔女がその兄貴の試合に加担したからな。あちこちで俺が唯に無理やり手伝わせたとか言われている。何故だろうか?違和感を感じる。なんだろう……。


 後ろ指を指されつつ、教室に入る。みんなの視線が集まり、静かになる。そしてその瞬間を取り繕うかのようにうるさくなった。溜息を吐きつつ、席に座り、スマホでゲームを始める。とその時にクラスメイトが周りに寄ってきた。




「なんだ?」


「おっ俺らは信じてないからな!噂のこと!」


「うん!唯ちゃんを脅すなんてことしなさそうだしね」




 おお。目がウルウルしてきたぜ!




「ええ。海斗ならもう少し狡猾にやりそうだしね」


「おい!」


「てかまず、唯ちゃんを脅すことそのものが不可能でしょ」


「んなァァァぁ!」




 しっ信じてたのに……。




「ほんとは、何があったが聞きたいけど。我慢しておくよ」


「みんな……。感謝する……」




 なんかほっこりしてきたな……。




ーーーー


 今日一日中、綾とも亘とも話さなかった。話しかけようとしてもその瞬間に2人とも他の人に話しかけたし……。


 まさか!村八分!?そっそんな……。




「ちょっと終礼おわったら屋上への階段にこい」


「おっおう」




 いきなり亘に話しかけられて驚く。ん?どうしたんだ?


 まぁ兎も角終礼後、指定された所に向かった。そこには、綾、亘、唯の3人がいる。


 俺は踊り場の手摺に座った。




「どうした?みんな揃って」


「カイ……。分かってるんでしょ。本当の事言って」




 綾が珍しく自ら口を開けた。




「本当のことってなんだ?」


「いや、兄さん。ここまで来てはぐらかせるとでも思ってんの?」


「ん?俺は何で雷が出たのか知らないぞ?」


「はいかかったー!雷の事なんて一言も言ってない〜!」




 亘が急に喋り出す。あっ!くそっ。亘が一言も話さないからカマかけに油断していた!ん?いや、でも。




「それ以外考えられないからな。仕方ないだろ」


「へぇ。んじゃ何であんなの使えんの?」


「そりゃ俺が……。いや、何でも無い」




 危ない。転生者って繋げそうになってしまった。




「無駄だ。そりゃ俺が……何だ?もうお前は引っ掛かってんだよ。普通自分の記憶がない間に大事故が自分によって起こされていたらもっと怖がるはずなんだけどな……」


「はぁ?で?」


「もういいや、こっちから言うより自分で言って欲しかったけどな。んじゃ説明するぞ」




 亘が階段を数段降りて階段の壁に背を預けた。




「まず一つ目」




 人差し指を立てる亘。




「お前の雷はこの世界のどの魔法にも適用しない。雷を操る魔法なんてない。しかもお前にはこの世界の魔法を扱えない。


 あと追い詰めるために言っておくとお前の雷は半径10m以内にしか効かない。自分から離れる程操作が難しくなり、段々と抵抗の小さい物に引き寄せられる。


 そして、自分の末端からしか操れない。更に自分は電気を生成できず、周りから奪うしかない。大会の時の大雨は空気中の酸素とかの分子にあるイオンを操作したからできたものだ」




 そこまで読めたのか!やっぱこいつやばい。




「二つ目」




 次に中指も立てる。




「あの雷、二回とも最初は自分を包むようにして、放電していた。まぁ自己防衛本能かな?兎も角トラウマがお前にはいっぱいある。が、14歳にしてあそこまでのトラウマを受けることはまずない。そもそも、お前この世界で1人になったことないだろ」




 はぁ……。こいつもか……。




「三つ目」




 薬指をたてた。




「お前。生後2年間ずっと言葉を覚えようと指差してたそうだな。お父さんが言ってたぞ。積み木を指差してたから積み木を近くに持って行ってあげたけど触ろうともせずずっと指差して。ガリバー旅行記のガリバーかとも思ったらしいぞ。覚えてるか?」


「ああ」




 覚えている。何度も指を指してようやくこちらの意が通ったからな。




「うん。おかしいな。生後1年の時の記憶なんてあるか?」


「………」


「んで本題だ」




 亘は階段を降りきり俺の目の前に顔を寄せた。




「お前は誰だ?」




 ノゾカレテイル




「堂上海斗。お前は誰だ?」




 ノゾカレテイルミラレタノゾカレタベツニシラナクテモイイダロウノゾカレタノゾカレタノゾカレタノゾカレタノゾカレタノゾカレタノゾカレタノゾカレタノゾカレタノゾカレタノゾカレタノゾカレタ




 ドス黒い何かが込み上げてくる。胃の底から何かが突き上げてくるのを必死に我慢する。ダメだ。ダメだ。傷付けちゃいけない…。いけない……のか?俺の秘密暴こうとし奴を?傷つけちゃ……。




 イケナイノカ?ダメナンダロウ……カ?




 落ち着け。オーケー。落ち…っ!




 ドクンッ




 心臓の音が大きく感じる。視界がおかしい。亘の顔が見えているのに見えない。これは亘なのか?亘……なの……か?




 薄れゆく意識を必死に繫ぎ止める。ここで落ちたら亘だけじゃなくて綾までも……。綾?誰だ?




 ダレダ?ダレナ……




 ん……だ?綾……。綾。綾……。あぁ俺の最愛の……。最愛?なのか……?何で…好き…何だ…




 ッケ……。タシカ…オトナッポ




 くて、人のプライバシーにあまり…干渉しな……




 イノカ?ホントウニカンショウイテイナイ……。




 のか?だったらここに……




 イルハズナイダロ……。




 ここに…傷付けたくない人は…
















































 イナイ。




















































「……っ。」






















































「俺は!お前に操られない!絶対に!お前らなんかに!お・前・ら・絶対に!昔の俺じゃねぇんだよ!」




 視界が戻ってきた。目の前には……亘がいる。聴覚も戻ってきた……。亘が俺を揺さぶっている……。俺はその手を払った。




「俺は……。オルト・クレイズ!ボニギス帝国公爵クレイズ家三男!だ!」




 亘は驚いた顔をした。カッっと目を見開く亘。




「そうか……。それがお前の名前か……」

「ふぅ……。カイ……。いや、オル…。お疲れ様……」




 後ろから綾に抱きつかれた。あれ?俺は壁にもたれていた……。と思ったら知らない間に俺の体はかなり進んでいた。


 そして、その言葉は暖かった……。俺のヒビだらけの心に沁みていくようだった。だからだった。
























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