Change before you have to.

・変革せよ。変革を求められる前に。



「やぁ。角なし兎」


「やぁ。腰巾着。お前はよくやるなぁ」


「何がだ?」


「腰巾着をだ」


「ふん。利用させてもらっているだけだ」


「利用されているとも知らずに?」


「お互いに礼!構え!」




 白線に立ち、ヌンチャクを構える。栗本は剣を腰から抜いた。剣身は赤く透き通っている。緋色茜。斬れ味、耐久力が高く、魔物狩人が愛用している。俺のヌンチャクと比べていい勝負だろう。何つったてこっちはオーダーメイド品だ。


 栗本と睨み合う事30秒。栗本が動き出す。




「落雷!突風!」




 どちらも瞬間発動される。落雷はこっそり雷操で着地点をずらし、突風は甘んじて受け止めた。勿論体勢を崩される。そこを栗本は切ってきた。


 ヌンチャクの鎖の部分で受け止める。前蹴りをしながらヌンチャクを一気に広げ、剣を押し返す。が、バックステップで躱される。


 袈裟懸けに対し、回し蹴りで剣の腹を蹴ってずらす。右手でヌンチャクを振って栗本の左腕を殴る。そのままヌンチャクの鎖を左手で掴み縦に振って手首を攻撃する。


 剣を落とさずに栗本は横蹴りをかましてきた。油断していたので鳩尾に決まる。


 苦しんでいる所に水平切りをかまされブリッチで避ける。うおぉっ!鼻に熱を感じたぞ熱を!


 一旦栗本は間合いを取った。あれ?今俺が立つ間に切れなかった?




「バインド。レイジング!」




 バインドをヌンチャクで弾いて咄嗟にしゃがむ。その感は正解だった。髪の毛が通を舞う。おい!切れんじゃねぇか!死ぬだろ!しゃがんだまま左手で中段突き。咄嗟にバックステップをされたが、膀胱に直撃したのか栗本の顔は痛みでなく、苦難に満ちていた。ふん!


 しゃがんだ状態からダッシュで駆け寄り膝蹴りを……。




「磔!」




 体が縛られた。まさか……。あの状態から魔法を使うとは……。栗本は今度こそ痛みに耐えていた。




「トラップ!」




 俺の体の周囲に罠が仕掛けられる。磔の魔法は解除されたが、実質貼り付けと同じく動けない。いや、動けるが動いても無駄だ。




「角なし兎。角のない兎の中では強いかもな。でも。お前は俺より弱い」




 ゆっくりと罠が仕掛けられていない右腕に剣を寄せられる。動いても痛みを、動かなくても痛みを味わうのか……。これって意味あんのか?俺がここまでして前世の魔法を使わない意味。


 強がって自分に自分を大きく見せて忍び寄る恐怖に耐える。でも、前世でハニトラを掛けられたトラウマは俺が打ち破るほど癒えていなかった。


 怖い。怖い、怖い。怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ


 その時栗本の顔が変わった。あのアマになる。何でここにいんだよ。弱者は罠にかかる運命?ふざけるな!今の俺は弱くない!




====




「ん?」




 勝手に喋ってくる唯に合いの手を入れつつ俺は海斗の異変に気付いた。今の海斗の顔…既視感を覚える……。何処で見た?何処だ?確か……。


 病院だ。


 俺はこれから起こり得ることに気付いてしまった。多分海斗の両親と綾は気付いても止められない。まず海斗に近付けないから。だとしたら朝康さんは……。今週は出張で沖縄だ。昨日彼女と遊んでる写真が送られて来たからまずここにいない。他に知っている人は居ない。とすれば止められるのは……。




「亘さん。何で立ってるんですか?聞いてます?」




 気づけば唯が俺の服の裾を掴んで首を傾げていた。可愛い……。ってダメだダメだ!唯にはヤンデレ素質がある。それより。




「おい!テレビ見ろ!行くぞ!」




 唯を引っ張って待機室の扉を開ける。




「転移!」




 海斗の異常に気付いたのか魔法を使った。視界が真っ白になる。そして目の前には海斗がいた。刹那辺りを青白い稲妻が横に走る。海斗を包むように広がって行った。唯を抱き締める。も、稲妻はここまで襲ってこなかった。空は快晴だったのが、積乱雲によって覆い尽くされる。




「何だあれ?」




 素で声が出てしまった。今雲の隙間に青いのが…。それをちゃんと覚えておけば良かった。


 その時は俺はすぐにやるべき事を思い出し、ポケットから鉄球を……。




「って!静電気かよ!」




 海斗の雷で鉄球は静電気を帯びていた。迷っている暇は無いので無造作に鉄球を掴み、静電気に耐える。唯はどうやって海斗を止めるか顎に手を当てて考えていた。今することかよ!


 鉄球を放つと海斗に当たる寸前に止まる。これも電気の力か!チートだろ!


 やる事がないので鉄球を放ちながら考える。海斗の右手には電気が押さえ込まれているのかスパークしてた。


 時々、首の後ろを通って左手に電気が流れているのがわかる。観衆は雲が!とか言って意識を向けていたので海斗の力に気付くものは少なかっただろう。まず間違いなく海斗はトラウマを持っている。そしてこの世界のでは無い力を持っている。それは雷についてのもので、多分体の末端の操作だけが可能だろう。


 海斗はこちらを振り向く。その顔は前回の恐怖と違い、憎しみとサイコパスが混ざっていた。ようやく俺たちに気付いた審判が走り寄ってくる。


 海斗の手には雷が湛えられ、こちらに向かって放たれるのがゆっくり見えた。へぇ。「人は死にそうな時に世界がスローモーションに見える」って論文正しいんだ。でも光の速度って秒速30万キロだったよね。あっ。人間も電流で見た物を脳に送ってるからおかしくは無いか。わからんけど。


 雷はちょうど俺の鼻に当たる寸前で消えた。俺たちは雨にずぶ濡れだ。唯が海斗に手刀を下ろしたみたいだ。


 やばい。脳みそが痛い。多分スローで見るために脳を酷使したんだろう。思考がごっちゃになってしまう。そのまま俺の意識は、ブラックアウトした……。




====




 大会は唯私、亘さん、兄さんが失格。噂では専ら兄さんが私達2人を操ったとか脅したとか言われてる。もっとよく考えてよ。援護するにしても、もっとコソコソやるわ。そして大会は雷雨のため延期。


 あと、空に青龍がいたとか何とか。どうせ野次馬の誇張でしょ。突然の雷雨に青龍は現れるって御伽噺は言ってるけど架空生物だから存在しないはず。


 雷雨は未だ発生から8時間経ってもやまない。今は、夜の7時。兄さんは高熱を出し部屋で寝ている。確か今は綾さんが看病しているはずだ。よくイチャイチャとできるわね。


 私は今、スマホで今日の事について調べていた。突発的な雷雨とか、雷を操る術だとか。雷雨に関してはゲリラ豪雨としか検索結果が出なかった。


 まぁそのゲリラ豪雨の原因が、地球温暖化による地球平均気温の上昇で、気温が上昇すると水蒸気の発生量が増加し、大気中の水蒸気量も多くなるから。と。それってヒートアイランド現象じゃん。そう言えばいいのに!時間の無駄!もっと短く!


 くだらない事で胡散バラシをしてベットに寝転ぶ。テレビでは今日の雷雨がニュースになっていた。


 まだ雨は続いている。

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