2章 〜今日という一日は、明日という日の二日分の値打ちがある。〜 

One today is worth two tomorrow.

There is more to life than increasing its speed.

・人生はスピードを上げる事だけではない





オース。いない奴いるか?居ないなら手ー上げろ〜」




 脳筋発言をしながら入って来たのはうちのクラスの担任かつ国語科教師(24歳、女性。口癖は『あの姉ーちゃんおっぱい大きいな』。見た目ヤンキー)だ。脳筋発言と言うよりかはギャグなのかな?




「今日は特に言うことも無い。体育大会に間に合う様にここ出とけよ〜以上」




 そう言って颯爽と教室を出て行く教師。おいおい。もっと言うべき事あんだろ。まぁいいけどさ。




「海斗〜。行こ行こ行こ〜。」




 亘が綾を引っ張ってくる。俺の席は窓側で綾と亘の席は廊下側なので離れているのだ。




「おう、じゃあ着替…」


「亘さ〜ん。こんにちは!あの……」


「ごめん……。逃げます」




 唯が教室までやって来た。何しに来たんだ?てか着替えるの速くね?亘は硬直した後俺に逃げると宣言した。頑張れ!




「道中車に轢かれないようにね〜。唯。亘は唯と一緒に行きたいけど恥ずかしいそうだ。追いかけてやってくれ」


「了解!」


「了からない!」




亘が走りながら拒否する。


 教室からダッシュで逃げる中三とそれをダッシュで追いかける学校1の中1魔族。さぞ珍妙だな……。




「カイ……」


「♪〜。♬〜まるで魔法のよ〜に。簡単に。広まってく「カイ…」ん?」




 最近ハマっている歌を口ずさむと綾が意味不なことを言ってくる。カイって誰だよ。俺はカイトだぞ?綾の顔が少し赤い。恥ずかしい事したっけ。




「カイ…」


「もしかして俺のこと?」




 こっくり頷く綾。顔が赤くなってる。どうしたんだ?




「うん…」


「俺は海斗だぞ?」


「……読んじゃだめ?」




 小首を傾げる綾。可愛過ぎだろ〜〜!犯罪だよ〜。てか愛称で呼ぼうだなんて嬉しすぎる!ここが教室で無ければ…。




「ダメじゃない!てか嬉し過ぎる!」


「そう……。なら良かった。着替えて来るね……」


「おう!じゃぁ廊下でまた」




 更衣室に向かう綾。う〜む。盗撮機を付けたかった。


 そんな犯罪者的思想を無自覚に持ちつつ着替える。廊下に向かうとまだ綾は居なかった。




====




 ウッチャー!どうも皆さんこんにちは!わたるんですっ!はい!と言う事で今日は学校1の魔族と鬼ごっこをして行きたいと、思います!この動画面白いと……。




「亘さ〜ん!」


「俺の名前は山田太郎だ!」


「違います!」




 唯さん……。追いかけないで下さいな。逃げる俺も俺だけどさぁ。やめようぜ。こう言うの。


 と言う事でね。どう言う事かわかんないけど集中するから実況はしなくなっちゃいますね〜。代わりに解説をしていこうかと思います。では現地の亘レポーター。解説を御願いします!了解です!


 下らない延々と続くジョークを頭の中で流しながら校内を走りまわる。廊下の曲がり角は壁キックで速度を落とさずに走る。ポケットから音楽再生プレイヤーを出し、耳にイヤホンを打っ込む。


 ウチの学校は授業妨害と成績不振で無ければ何をやってもいいのだ。やっぱ走るんだったらこの曲だな。


 1990年台の曲を流す。声に出したいが舌を噛むので鼻歌で我慢だ。この間約5秒。唯は俺に離されずについて来る。仕方ない。


 階段(10段)を一気に飛び降り4階から2階へ。2階は職員室があり、結構空いている。そこで前方倒立回転を全力でやり、一気に差を開く……と思ったら唯ちゃんも同じ事をして来た。凄いな。俺はこれを修得するのに3日も掛かったぞ。


 何を言っても仕方ないので中庭に面する廊下の所で窓を開けて校内を一周する。そして、窓を開けた所に戻って来て窓から飛び降りた。綺麗に着地して、手に付いた土を払いながら窓を見上げる。




「流石にこれなら……」




 それは、フラグであった。私!フラグ建築のプロフェッショナルなんで!




「えいっ」


「ハァァァァアアア!?」




 唯ちゃんが窓から飛び降りてきた。驚きの声が止まらない。だが走らなければ追い付かれる。よって近くの階段を駆け上がった。今度は最上階の5階に向かう。そこは屋上に繋がるところだ。図にしてみるとこんな感じ。








 ド


 ア 俺 壁


 ー床ーー


      _踊場_


   唯 」


    」階段


   」


  」




 唯ちゃんが階段を登りきる直前に壁を飛び越え階段を下る。が、4階には人が大量に居た。立ち止まらず人混みを掻き分けながら考える。いったん体操着に着替えるか。と。




====




 俺は今を走る亘に応援メッセージとして歌を捧げながら着替えを始める。




「走る〜走る〜俺たち。流れる汗もそのま…」


「お兄さんトレンディだね。うん!僕紅月亘!」




 亘が教室に入って来た。上裸、ズボンはベルトとチャック全開で。




「いや〜ん。亘さんのバカ〜ン」


「何やってんだ?犯罪者」


「お〜う。君もとうとう目覚めたかいYO。上裸の気分はマジ最高!キモがる奴はマジサイコ(サイコパスの略)!今日から君は上裸族!そして俺様常裸族!」




 我等が知能系男子の声を受けて手を振り返しながら亘は体操着を鞄から取り出しすぐに教室を出る。俺は呆れた目でそれらを見つめる。その後に唯が入って来た。




「ギャッ!?」


「まさか!痴女!通報するべき!?」


「Oh NO エッチな女性は大歓迎!貢ごう女性を代官兒(代官の子と言う意味)!捜索対象誰ですか!?けれども君は指名手配!」




 むっ!ゴブリンがこの中教室に居るのか!?てかラップ上手くないか?即興でそのクオリティならラップで生活出来んじゃないの?


  唯は誰にも応える事なく亘の軌跡を辿って教室から出て行く。何故ショートカットをしないんだ。唯よ。




====




「ではでは御着替えターイム」




 教師がエレベーターに乗り込もうとしていた。エレベーターは閉まりかける。スライディングの要領で閉まり掛けるエレベーターに乗り込んだ。唯ちゃんは間一髪間に合わず。エレベーターの中で御着替えをする。


 教師は唖然としていた。仕方ないじゃん。


 三階で降りて階段を駆け上がる。勿論五階まで。屋上に出て迷わず柵を越えクラスのベランダに着地。




====




 俺は亘の乱入後に、着替えを済まし水筒の水を飲んでいたら。




「ハーゲルや!ハーゲルや!ハゲるや!ハゲるや!ハゲールーやっ!」




 音低ぴったりのハレルヤの替え歌がベランダから聞こえる。目線を向けると体育着に着替えた亘がいた。窓からこちら側に制服を投げ込む。丁度俺の顔に当たりかけた。そしたら亘はベランダの手すりを乗り越えて飛び降りた。


 唯が後に続いている。ここ4階だぞ?




====




 亘さんの足は速い。逃げるルートもちゃんと考えられている。凄い!流石私が惚れた男。


 亘さんは歌詞以外完璧な「ハレルヤ」を歌っている。声音も綺麗だ。


 ベランダの手すりを越え、下の階のベランダに降りる。亘さんは目の前を走っている。教室に窓から入っていった。私もそれに続く。亘さんは机の上を翔けて、廊下側の黒板の上にある窓から出て行った。寸分の狂いもなく軌跡を辿って追いかけ続ける。亘さんの歌が変わった。




====




 これは何曲目だろう。「ト短調、小フーガ」が耳に流れてくる。声に出して歌えないのが辛い。脳内で替え歌を流すことにして我慢する。壁キックで人混みを回避し、階段を3段飛ばしで上がる。そこには海斗がいた。




====




「あーなーた〜に髪の毛有りますか〜有りますか〜有りますか〜有りますか」




 何だこの無駄にエコーのかかった歌は。亘かな?




「ハーゲ、パーゲそんなのやーだ。髪の毛〜消え去って行く」




 階下から亘の美声がどんどん大きく聞こえてくる。「ト短調、小フーガ」か。何曲目なんだろ?




「ハゲパゲハゲパ…」


「ウワッ!」




 亘にぶつかってぶっ倒れた。何故避けないんだ。




「ツッカまーえた!」




 更に衝撃が加わる。唯よ。お兄ちゃんは苦しいぞ。


 辛うじて自由な左手で退くように会図する。そしたら退いてくれた。




「「何で避けなかった!?」」




 亘と俺の声が同時に響く。




「どうしたの……?」




 そしたら綾がやって来た。なぁ、察しろよ。説明したく無いわ。




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