いつだって幕は開いているんだ。

「結局クビになったよ」




 電話の向こうから長所する声が聞こえる。




「わかってましたよね」


「ああ。でもこんなにも叩きのめされるとは思わなかったよ」


「ええ。ですから堂上家に来て下さい。こちらで雇うと父も母も言っております」


「ああ。頼らせてもらうよ……。あれから発作はないかい?」


「ええ。大丈夫です。綾とは仲良くやってすね。童貞の卒業が待ち遠しいです」


「気遣いは無用だ。あぁ避妊はしろよ」


「そこまで獣ではありません」


「では。失礼するよ」


「はい。入社試験にコネは無いので全力でやって下さい」


「そんなぁ」




 康秀さんとの電話を切る。本名忘れそう。あの日から3ヶ月。学校では俺がチンピラに襲われたと言う事だけだった。そしてあの場にいた人の中で俺の暴走を発作と名付けた。金崎は相変わらずだ。


 康秀さんは金崎の魔法の使用や、武器の保持を公表したが揉み消され魔法の使用はしていないとされた。つまり、康秀さんの魔法の攻撃魔法攻撃魔法バインドの使用は不正として免職処分を受けた。実質的な損失は金崎家には無い。


 だが、無駄ではなかった。康秀さんを慕っていた部下が魔会を一斉辞職して混乱が起き、噂も広まり金崎家は世間の批評を受けた。マスコミは今まで報道する前に揉み消された情報を一斉に報道し、海外まで情報は広まり金崎家の財閥グループは信用ならないとレッテルを貼られ、窮地に陥っていた。


 金崎静哉はイライラしていて俺に当たる事もあったがカメラを構えると退散した。カメラを取られた時もクラスの女子がカメラを構えてくれた。


 唯はあの日から一緒に登校するようになった。ただ、亘が目当てな様で話しかけようとしている。亘はめんどくさそうにしているが……。成就するといいなと思う。




「海斗。荒山さんか?」


「荒山さん?ああ。康秀さんって呼び過ぎて忘れていた。ああ。その人。堂上家の会社に就職するって」


「そうか……。他の人より厳しく見よう」


「父さん。荒山さんが哀れ」


「仕方ない。それよりこのスライドどう思う?」


「うん。原稿は?」


「同じファイルに入っている」


「うん。ウンウン。言いたい事が分かりにくいね。強調したい事だけ書くだけでいいと思うよ」


「有難うな」


「いえいえ。母さんの為ですから」




 父さんはかなり忙しい。だから本当に母さんの手伝いが出来なかったのだ。だから、スピーチのスライドのアドバイスをする事で時間短縮を図り、母さんを手伝って貰っているのだ。お陰で堂上家は暖かい家庭だ。




 ====




「イェーーーい。おんなじクラスだーー」


「亘。当たり前だ。頭脳派は少ないから同じクラスになる」


「まぁね。でも嬉しいじゃん」


「私も……嬉しい」




 新学年。俺たちは中学三年になった。クラスは同じクラスになった。金崎とは一番物理的に離れたクラスだ。気分の悪くなる様な生徒も居ない。いいクラスだ。


 綾と亘と俺との三人でクラスに向かう。いや、唯が亘にくっ付いているが。階段で唯とは別れるが唯は亘を離さない。だからほっといて教室に入る。




「は〜い。おっは〜。海斗様のおなり〜」


「「はぁ?」」




 望学園で同じクラスの女子に睨まれる。怖いな……。




「綾ちゃん怖いよ〜」


「どーでもいい。でも悲しいならっ」




 綾が振り返り頭を押さえられて唇を奪われる。クラスのあちこちから囃し立てる声や罵倒する声が聞こえる。




「おお〜積極的〜」


「どっちが男かな?」


「からかうな!俺だって……え?」




 綾は俺の手をすり抜けて席に座る。




「価値が減るよ?」




 最近綾はよく話す様になって時々艶やかになる。理性が無くなりそうで怖い。




「綾ちゃん言うねぇ〜」




 綾にも友達が出来たからよしとするか。




「おいっ!逃げるな!裏切り者!」


「しょ〜が無いでしょ?最愛の妹の恋は成就させてあげたいし」




 後ろに反り返って逆さまに亘を見て、唇に人差し指を当てて言う。ちょっとはカッコいいかな?




「気持ちわる!」


「ひっど!」










 俺は幸せもんだな。


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