幕が引く前に明日になる。

 マジでよく分からん。これって言う意味あんのか?若干教師も儀式のように思ってるのでは?


 と思っているのは望学園の引率の約束。何故か自習時間が終わって家に帰る時に復唱させられる。




「「「階段は静かに降ります。ふざけずきちんと二列でついていきます。ホームや車内では騒いだり、走り回ったりしません」」」




 車内で走るの?鬼ごっこするにも逃げる側不利すぎでしょ。ってそんな事が言いたいわけでは無い。俺らは電車を使わない。そして家に帰るには裏路地を通る必要がある……。うむ。危険だな。


 鞄からアレを取り出して帰路についた。勿論綾は隣にいる。


 アレとはヌンチャクの事だ。鞄に放り込んだ物の事だ。


 この世界の法律では、刃の付いた……つまり剣や刀やチャクラムなどの武器や、殺人を極めて簡単に行える銃などの武器、そして遠距離攻撃となる弓や、手裏剣といった武器の保持は禁止されている。しかし、「魔族」の犯罪者に対抗する為、鈍器の保持が認められることもある。


 未成年は日の入りから日の出までは武器の保持が許可されている。


 一般成人者は「魔族」で無ければ日の入りから日の出までの間、「鈍器の保持及び使用免許」略して「武器免」を取得した者のみ武器の保持を認められるのだ。


 これは、「一般武器保持法」に明記されており、この法を破った者は未成年ならば少年院に、成人者は犯罪奴隷として、日の目を見る事が出来なくなるのだ。


 同じく、「魔族」も「魔族の魔法使用及び生活管理法」によって制限されているものが多い。


 どんな場合でも、魔法を一般市民に向けて「魔族魔法使用管理委員会」の許可なく使用する事は極刑にも値し、毎年多くの「魔族」が死刑を受けている。それほど危険視されているのだ。


 学校で魔法の使用許可があるのは、「魔族魔法使用管理委員会」の権限を決められた教員は持つ事ができるからである。そして、魔法の使用許可は毎回記録され、誰が何を誰に向けて打ったか、というところまで記録される。




 まぁ、法律の話はいいとしよう。それよりも目の前にチンピラがいる事の方が大事だ。近道をしようとして裏路地に入ったのが失敗だった。




「よう嬢ちゃん。俺らと遊ばない?」




 黄色く染まった歯を見せて笑いかけてくる男。




「そこの男といるよりも気持ちい思いさせてあげるよ〜」


「まぁ、最初は痛いかもしんないけど。ギャハハハハ」




 ダミ声で笑うクズ。綾を俺の後ろに下がらせる。




「あれれ?坊ちゃんそこを退かないと痛い思いしちゃうよ〜」


「早く帰った方がいいんじゃない?」


「俺ら優しいから今なら何もせずに返してあげるよ?」




 こいつらを見ていると前世を思い出す。何だっけ。そうだ。幼馴染はこんな奴らに自主的に付いてって強姦されたら俺のせいだって言ってきやがったんだ。ああ。ムシャクシャする……。こんな奴サッサと死ねばいいのに……。




「あぁ?黙ってんじゃねぇよ!さっさと退けっつてんだろ!」




 黙っている俺らを見てキレ出すチンピラ。綾が俺のリュックの裾を申し訳無さそうに掴む。




「綾。ちょっとこれ持っててね。大丈夫だから」




 綾にリュックを渡し優しく声を掛ける。チンピラはキョトンとした後笑い出した。




「ギャハハハハ!大丈夫だからだって」


「笑わせんなよ。俺らは全員魔定4級だぜ?」


「ママを呼んで来なくてもいいのかい?」


「……」


「黙ってんじゃねぇよ!死にてぇのか?」


「さっさと退けよゴラァ!」


「折角お前らチンピラとエンカウントして綾にカッコいいとこ見せれんのに退く馬鹿がいるのか?」




 相手は5人。全員魔定4級は嘘でないだろう。正直20歳の男5人に14歳がヌンチャク一本で勝てるとは到底思えない。でも……。やるしか無いからな。




「フハハハハ!カッコいいところだって。20の俺ら5人に中学生が勝てんのか?」




 むっ。これはトンチだな……。




「20の5人に14歳は勝てない。でも総年齢で戦えば100歳VS14歳だ」


「は?もうお前らさっさとやれ!」




 リーダーっぽい男が命令すると同時に飛びかかって来る男達。ヌンチャクの左側を持って右手で振ってまず1人目の男の頬を打つ。


 左脇に左側を挟んで肩を通して右手で右側を掴み2人目の男の頭を打つ。


 左の腰の後ろに回し左側を左手で掴んで横振り。3人目の脇腹にヒット。


 右足で横蹴りをして4人目の股を潰す。


 左足を軸に回転して、5人目の男の脇腹に蹴りを入れる。


 左肩から右肩と首の間に右側を回し右手で掴んで斜め振り。起きて来た1人目2人目同時に撃破。


 ヌンチャクをその遠心力に任せて空に投げ、3人目の側頭部に飛び回し蹴り。


 4人目に右足を掴まれたが落ちて来たヌンチャクに当たり気絶。


 頭の上で跳ねたヌンチャクの右側を右手で掴み縦振りで1人目の男失神。


 1人目の首にヌンチャクを巻き付け縛って2人目の男の雑な蹴りをガード。近づいたお返しにヌンチャクの縛りを解いて横振りで2人目の頭を打って失神。


 5人目の男が後ろから襲って来たが後ろ蹴りで対処。吹っ飛んだ後、素早く寄ってカカト落としで気絶。


 3人目は失禁していたので行くり歩み寄る。




「もっ、もうやめてくれ!一緒に遊ぼうぜ」




 リーダーの男、3人目の男が悲痛な声を上げる。




「はぁ?俺は”ピーッ”が嫌いなんだ。イチャラブ”ピーッ”で童貞卒業が夢なんだ。だからお前みたいな感性の持ち主は嫌いだ!」


「バインド!」




 男が近づいて来た俺を見てニヤッと笑って魔法を打って来た。こいつ正気か?


 それよりも避けていいのか?これを避けたら俺の後ろの綾に当たる……。綾は後向きに倒れるだろう。綾は後ずさりをしていたから頭の着地点には割れた瓶があるはずだ。避けて、その後一瞬、約秒速25mの速度で走り綾を助けられるか?無理だ。加速がこの距離だと出来ないしまず台風による追風があっても秒速25mは無理だ。


 だから……。俺はそれを受けた。油断していたのが失敗だった。


 縛られて動けない。何てこった。パンナコッタ。ここは騒がしいく、事なかれ主義の人が多い町。叫んでも誰も来ないだろう。折角だから惚れポイント上げとくか。




「綾……。早く、逃げろ……」




 綾の方向を見ると誰も居なかった。おい!綾は俺のリュックを置いてどこかへ逃げたようだ。別に裏切られたとは思わない。あそこで傍観されても困るから。一言言えよ、とも思わない。こいつらの狙いは綾だ。なら逃げようと分かったら追うはずだ。でもなぁ。




「テメェひどい目に合わせやがって!この野郎!」


「金崎さん……」




 1人目の男が話しかける。金崎?




「あ?ボスって呼べっつたよなぁ」


「すっ、すいません」


「でなんだ?」


「あのあま。逃げやがりました」


「チッ、マジかよ。なんだよ!フザケンナ!」




 腹いせに俺の伊勢エビの詰まった腹を蹴る金崎。すまん。くだらんダジャレだった。




「うっ!き、金崎のあに……。金崎誠……?」




 金崎には兄がいる。名前は金崎誠。誠じゃなくね?金崎家は名前のチョイスがとてつもなく下手だな。




「ああ?クッソ。身がバレちまった。テメェのせいだろ!」


「うっ」




 腰巾着のせいなのに俺が蹴られる。おかしいだろ!幾ら何でも理不尽だ!




「もう殺すわ。こいつに魔法使ったのバレたし」


「でもボスの家は……」


「うちのクソオヤジはそこまで出来ねぇんだよ!まぁそれでも使えてるから殺さねぇけど」




 そう言ってドスを抜く金崎。マジかよ……。




「安心しろ。簡単には死ねない」




 ドスで腹を1突き。2突き。




「ウゴッ!グェっ」




 本日二回目のゲロを吐く。今度もやっぱり足にかける。同じ日に兄弟の足にゲロを掛けるって世界で俺が初めてじゃね?




「汚ねぇっ!最悪だわ、この野郎!」


「グエッ」


「魔族魔法管理委員会東京支部長、荒山新!荒山新に魔法使用の許可を下す!バインド!聖域!」




 あらやましん?あらやまし?山嵐?


 あぁ。助けが来たか……。




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