角なし兎の転生道  祝3000PV!!

小笠原諸島弟島

1章 〜その幕引きはいつも突然で。〜

叫んだ声は聞こえない。肩に伸ばす手は届かない。

波乱の一日の登校。

 昔々あるところに16歳になって成人式を挙げた平民の男がいました。


 ですが、婚約していた幼馴染は他の男とくっついて。


 絶望していた男を拾ってくれたと勘違いしたジジイには捨て駒にされて。


 何とか生き延びたらギルドからはジジイの連帯保証人として借金の返済を要求され。


 スラム街に落ち、そこで出会った女に誑かされ。


 結局盗賊に刺されて身ぐるみ剥がされてしまいました。


 そうして男は死にました。


 そんなテンプレだらけの男の人生は17年で幕を閉じた…………。


 筈だった。




 ====




 ん?どこだ?目が開かない。何か話している声が聞こえるが言語が分からない。ただ落胆した声なのは分かる。


 助けてくれたのか?御礼を言わなきゃ……。




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「海斗〜。起きなさ〜い」


「は〜い」




 俺はベットから起き上がり、リビングに行く。




「おはよう。母さん」


「おはよう。海斗」


「唯もおはよう」




 唯と呼ばれた少女はこちらを蔑む目を向ける。そのまま無視された。




「あはは。今日も無視されちゃったな。じゃ、お風呂はいってくるよ」


「はいは〜い」






 俺は転生をした。日本という国の、14歳の男の子だ。名前は堂上海斗。13歳の妹がいて、名前が唯だ。


 この世界にも魔法はあった。だが、使える人は少なく、使えても俺の現世よりも弱い。さらに、厳しく国から管理され魔法の強さのランク付けがされ、学校も自由に選べない。就職先も決まっている。法を犯した時の罰の重さも違う。


 だが、彼らは魔法を使える者として、尊敬や、畏敬の眼差しで見られる事が多い。そんな彼らを世間は「魔法を使える人」略して「魔人」と呼ぶ。俺の現世では「魔人」は敵だった。だが、この世界にはないみたいだ。まずそこに安堵する。


 だが、この堂上家は代々、魔法が使える一族として有名だった。しかも、魔法が強く、父も母も魔法使い検定、略して魔定一級だ。魔法が使えるだけでもチヤホヤされ、それが三級なら一生安泰とも言われている。その中の一級だ。妹の唯はその中で一段という、世界に一万人しかいないランクに入ったのだ。だが、その長男の俺は魔法が使えない。だから、唯は俺を蔑む。いや、魔法が使えないのに。同じ学校に通う俺の存在を蔑む。


 なら何故、俺はこの家で生活して行けるか。妹と同じ学校に通えるか。何もこの世界は魔法が全てじゃない。魔法と対等に扱われる能力。それは財力、権力、武力、そして知力。


 中身が17の俺は、転生して言語を習得した後、すぐにそれに気付いた。だから、家にある本を読み、前世で不思議に思った事を実験した、そしてこの家にいる為、と言った下心無しに惚れたのは数学だ。前世でには四則演算しか無かった。でも、この世界には二次関数や、確率論と言った、高度な数学がある。そこから俺は猛勉強した。


 6歳にして因数分解が出来るようになったおかげで、家の中で唯一魔法の使えない俺がこの家で自由に暮らせるようになったのだ。そして、唯と同じ学校に行く事になった。が、唯には嫌われている。魔法の使えない俺が家族である事を恥だと思っているのだろう。




 朝風呂を浴び、ご飯を食べて、家を出る。そして、隣の家のインターフォンを押した。




「おはようございま〜す」




 インターフォンに向かって喋る。




「おはよう、海斗君。ちょっと待っててね。綾〜。海斗君きてるわよ〜」




 数分後、綾と成美さんが出て来る。綾は眠そうな顔をしている。が、これも絵になる程の美形だ。




「おはよう……」


「お早う御座います成美さん。おはよう!綾」


「毎日有難うね〜。ほら、綾。行ってらっしゃい」


「……。行って来ます」




 隣の家は鳩山鳩山くやま家だ。去年引っ越して来た家でお隣同士仲良くしている。が、元からこうやって一緒に登校する中だったわけではない。


 綾は俺と同じ14歳で彼女も知力で俺と同じ学校への入学を認められた生徒だ。だが、そこにもヒエラルキーはある。




「なんで……。毎日迎えに来るの?」


「何でだろうね?ははっ」




 本当は大人びた綾と話すのが楽しいからだが、気は気恥ずかしくて言えない。




「いきなり笑うのやめて。キモい」


「朝から辛辣だね〜。綾ちゃん」




 何故彼女とこうやって歩いているか。きっかけは中一年の二学期だった。




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 同じクラスではあったがあまり気にかけていた訳ではない。イジメが原因だな。


 先ほども言ったがこの学校、名前は「東京都立帝都進学校」にはヒエラルキーが存在する。


 この学校の生徒は7割が魔法の力、面倒いな、魔力と呼ぼう。魔力を認められて入学した。


 そして、2割が武力。と言っても脅しの方ではない。単なる力の強さだ。


 最後に、6分(6%)が知力。3分が財力。1分が権力だ。


 カーストは権力>財力>魔力>武力>知力の順で、虐められるのは当然だ。魔法が使える事を鼻にかけて、知力を馬鹿にしていたやつもいた。


 綾を苛めていたグループはいつも澄まして大人びている姿が気に入らなかった感じだ。






 まぁ、放課後の廊下でイジメは起きていた。偶々忘れ物を取りに来たら遭遇しただけだ。




「あんたウザいのよね。魔法を使えない癖に知力が優れているとか言って澄まし顏をしてんのが」


「……。なら魔法を使ってみたら?」


「はぁ?あんた馬鹿?なけなしの知力もどっか行った?魔法なんて使ったら即退学よ」




 へぇ。スケ番っぽかったからすぐに魔法を使うかと思ったけどそうでも無かったか。




「………魔族。だから何?貴方みたいに人を自分より下に見る人間は、どんな才能が無くても本気で努力している人に劣ってる!」




 怒声を上げる綾。彼女は努力して知力を勝ち得たんだろうな。




「はぁ?とにかくウザいんだよ。その澄まし顔が!」


「……。なら帰る。そしたらウザいこの澄まし顔を見なくて済むんだから」




 罵声に震える事なく淡々と言っている。が、俺には分かる。綾の声は震えている事が。




「ああ?その顔ぶっ壊してやる!」




 体は勝手に動いた。スケ番の拳を止める。綾はしゃがんで頭を抱えている。




「ならさ。知力、武力、を持つ俺はお前よりも上だよなぁ?」


「ああ?テメェ邪魔すんなよ!誰だよ!ああ?テメェ堂上か。殴られたいのか?」


「すまんがお前と殴り合う気はない」




 そう言って綾を抱え逃げた。スケ番は喚いていたが無視した。その後、教師にチクってイジメを辞めさせた。と言っても表向きな物だけだが。






 ====




「どう?僕の知らない所でイジメはない?」


「……ん」


「なら良かった」




 学校が見えて来た。今日も波乱の日かな?








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