第4話は、ひと休み。

 私が【フェンリル】と共に牧場へ戻ると、弟が待っていた。


「おかえり。」

「ただいま。」


 私が冒険者ギルドからの依頼を受けるようになった当初は依頼の度に心配してくれていたの。でも、今は私達の牧場の子達を信頼してくれているみたい。心配してくれないのは少し悲しいけど、信頼してくれるのなら万事オッケーよ。


「【フェンリル】、元の場所へ戻っていいわよ。今日はありがとね。」

『ふん、造作もない事だ。』


 振り向きざまにそう言うと、【フェンリル】は颯爽とした様子で去って行った。私は弟の方を見る。


「何も無かったわよね?」

「うん、何も。それよりまだ依頼はあるんでしょ?どうするの?」


 今日は冒険者ギルドから三つの依頼を預かっている。今日までとは言われていないけど、ギルドからの信用を獲得する為にも毎日ノルマは達成しておきたいの。


「昼ごはんを食べてからにするわ。」


 なんと言ってもまずは腹ごしらえ。家に入ると、キッチンへ向かった。弟は料理が出来ない。私は一応できる。だから、料理担当は私。慣れた手つきで野菜を切り、肉を切る。


 そうこうしているうちに料理はできあがっている。しかも五品ほどある。薄々感じてきてはいるけど、私って【魔物使役モンスターテイム】以外にも【料理クッキング】って言うスキルでもあるんじゃないかなって思ってる。


「美味しい!」


 出来上がった料理を机の上に置き、調理を続けていると、そんな声が聞こえた。


「また、あなたね……」


 摘み食いをしているのは【デミハーピィー】。羽を持った少女。果たして魔物なのかと思うが、れっきとした魔物である。


「良いじゃない、ちょっと食べたって。」


 ぷすーっとした顔をして【デミハーピィー】は不満を表す。そんな様子は可愛らしいけど、摘み食いはダメ。


「後でいっぱい食べさせてあげるから、ちょっと待っててくれる?」

「うー!うー!うー、う……分かった。」


 うん、わかってくれて何より。この子も素直になったことだし、今のうちに完成させてないとね。数分後、昼食が完成した。


「出来上がりよ。」

「やったー!食べていい?」


 目を輝かせて待ち焦がれていた【デミハーピィー】はこちらを見る。懲りないわね。


「良いわ。たんまりと食べてね。」


 羽で丁寧にサンドイッチを持つと、口に咥える。


「美味しい!」

「それは良かったわ。まだたくさんあるから、お代わりは言ってね。私は他の子達も呼んでくるわ。」


 既に匂いに釣られた魔物たちがたくさんいる。私は大きなお皿を片手ずつに持って、牧場へ出た。大きな机にそれらを置く。


「みんな、食事の時間よ!オーウェン。遠くの子を呼んでくるから、この子達をお願いね。」

「分かったよ。」


 弟はニコニコしながら魔物たちが食事をしているのを見ている。魔物たちと言っても、人間に近い魔物から、スライムのようなよく分からない姿をしている魔物までいる。見ているだけで楽しい。


 私は転移魔法で遠くの魔物たちを呼びにいく。全てを集めると、100は簡単に超えてしまう。辺りは祭りのような大騒ぎ。別世界じゃなかったら、怒られてるわね。


 家の中からあくびをしながら【フタマタ】が出てくる。のんきなものね。近くにある牛乳瓶に寄ると、瓶ごと飲み込む。そんなことが出来るのは【フタマタ】だけ。あの子はあの子で特殊ね……。


 騒がしい昼食の中心となっているのはオーウェン。男の子なのに少し可愛らしい風貌のオーウェンは人にも魔物にも好かれてる。私は……オバチャンね。魔物たちも「はいはい」とでも言いたそうな顔をして従うもの。


 そんな私の元に【デミハーピィー】がやって来る。


「エ~ネラっ!」

「どうしたの?」

「このサンドイッチ美味しいよ、エネラは食べないの?」


 そのサンドイッチを見せ付けるように食べながら【デミハーピィー】は言う。いい度胸ね。


「私はいいわ。お腹空いてないし。」

「ううん。ダメだよ、食べないと大きくなれないよ!」


 悲しそうな顔をして【デミハーピィー】は言った。この子の目は私の胸を見て言っていた。


「サンドイッチ食べさせないわよ?」

「ごめんなさい。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

我が家の魔物は優秀です。 夜月 朔 @yoduki_saku

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ