第2話は、魔物牧場。

 私の名前はエネラ。『魔物牧場』の牧場主。魔物牧場が何かって?名前の通り。魔物を飼い慣らす牧場よ。


 私達が『魔物牧場』を開くまでは、魔物は人間とは相容れない生き物と言われていたの。だから『魔物』という名前。でも本当は魔物は怖い生き物ではなかった。


 魔物使役モンスターテイムと言う特殊なスキルを私は持っている。魔物の気持ちを読み取る事ができるスキル。そのスキルで私は今までたくさんの魔物と触れ合ってきた。


 その中で仲良くなった子を集めて、一緒に生活を始めたのが『魔物牧場』の始まり。偶然にも私の牧場には珍しい魔物がたくさんいる。それに目を付けた冒険者ギルドが、難易度が高い依頼を私達……というより私達の魔物に依頼をしているの。


 それで私と弟は生計を立てている。昔、私は治療師を目指していた。だけど、残念な事に回復魔法が苦手だった。治療師の夢はキッパリ諦めて、今の仕事を始めて良かったって思ってるけどね。


 そして、弟の名前はオーウェン。治療師。私が回復魔法が使えない代わりか、彼は回復魔法に非常に優れた治療師となった。これでも彼は有名人なの。でも、私についてきた。弟と私で『魔物牧場』は経営されている。


「じゃあ、依頼を達成しに行きましょう。」


 私は部屋に戻ると、軽く支度を整えた。一応、私は戦わないけも、冒険者として危険な場所には行くから、準備はしておかないといけない。


「今回はどの魔物を連れて行くの?」

「何がいいかな……近くの村で大量発生スタンピードが起こったみたいなの。森の中だから【ドラゴン】は無理だわ……」

「【フェンリル】を連れて行ったら?」


 弟が提案する。【フェンリル】は狼の魔物。白狼。神々にも匹敵する神獣と言われているわ。


「じゃあ、そうする。【フェンリル】はどこにいるの?」

「向こうの丘の上で寝てるよ。」


 弟が指さした先を見る。確かに小さく狼のような生き物が丸くなって寝ているようにも見える。


「連れてくるわ。」


 私は素早く魔法を発動させる。次の瞬間には【フェンリル】が目の前にいた。白い毛並みが美しい。


『……転移魔法か。』


 頭に声が響いてきた。神獣と謳われる【フェンリル】は人の声を解し、テレパシーのようなもので人の言葉を話すこともできる。その言葉は頭に直接響くのには少し驚いてしまうけど。


「【フェンリル】。依頼手伝ってくれる?」

『エネラの頼みならば聞いてやらんことも無い。』


 回りくどいけど、それが【フェンリル】の特徴。私は【フェンリル】と話せば話すほど、それを感じるようになった。


「じゃあ、私に触れてくれる?転移するから。」


 私は魔法を発動待機状態にする。【フェンリル】はのっそりと起き上がると、前足を私の手のひらに置く。犬みたい。


 体の大きさが私と同じくらいの【フェンリル】。本当は私の何倍も大きいの。私の要望で小さくなってくれてる。


 転移魔法を使って、依頼場所に行った。私は森に立っている。近くの村が魔物の被害を受けたみたい。


「【フェンリル】。ここで待っててくれる?」

『承知した。近くに隠れておる小物と戯れるとする。おい、そこに隠れているの、出てこい。』


 こうやって【フェンリル】と依頼に行った時、帰りには魔物が増えている時がある。仲良くなった魔物が一緒に牧場に来るからなの。意外と【フェンリル】って優しいのよ?


 私は一人、村に入る。村の雰囲気はどこか重かった。大量発生スタンピードが関係しているのかしら。村人に聞いて、村長の家を訪れる。


「お邪魔しまーす……」


 扉を叩いても何も返事なかったので、扉を押してみると開いた。中に入ってみる。中は暗かった。


「そこで何をしている!」

「きゃっ!」


 突然、後ろからの大きい声に驚いてしまう。振り返ると、そこには大きな男性がいた。少し震える体で尋ねる。


「あなたが……村長さんですか?」

「ん?ああ……そうだが。」

「私はエネラと言います。ギルドからの依頼で大量発生スタンピードの対処に来ました。」

「お嬢さん、一人でか?危険だ、辞めておけ。」

「いえ……心配には及びません。一人ではないので。」


 ……1人と1匹です。と言いそうになったが、辞めておく。まだこの世界では、魔物を飼い慣らすことを理解されていない。それどころか罪のない魔物まで殺そうとする人もいる。


「分かりました……大量発生スタンピードはこの村の付近の森にある洞窟で起こっているようです。どうにか魔物達が活発化する夜になる前に対処して下さい。」

「はい、お任せ下さい。」


 そう言うと、私は村長の家を出た。すぐに転移魔法で【フェンリル】の元に戻る。やはりそこには魔物が増えていた。


「【フェンリル】、この子は?」

『【ギンダーペッズ】。キノコの魔物だ。足を持ち、歩行が可能である。』


 いつの間にか私は【ギンダーペッズ】に囲まれていた。何か可愛らしい声で言っているが、言葉が違うのか聞き取れない。


「この子達は何って言ってるの?」

『「ニンゲン、私達食べる?」と言っている。』

「食べないわよ。この子達、どうせ牧場に連れて行くんでしょ?」

『あぁ、そのつもりだ。』

「じゃあ、ここからは危ないから、先に連れて行くわよ。」


 私は小さく呪文を唱える。そして、足元に星と丸の組み合わさった魔方陣を描く。長い呪文を唱え終わると、魔方陣が光り始め、扉が現れる。


「ここは『牧場』に繋がっているの。あなた達の住処を探すのよ。」


 扉を開くと、一匹ずつ【ギンダーペッズ】が扉の中に飛び込む。扉の中には広い草原が広がっている。これも牧場の敷地の中。最後の一匹が中に入ったのを確認すると、私は扉を閉めた。


『準備はできたか?』


 私に【フェンリル】が聞く。


「ええ。この森にある洞窟で起こったそうよ。」

『であれば、そこだな。』


 器用に前足を向けた方向には洞窟があった。確かにそこは魔物で交通渋滞を起こしているようだった。

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