我が家の魔物は優秀です。

夜月 朔

第1話は、プロローグ。

「君は……?」


 私は傷ついて蹲っている魔物に触れる。魔物は痛々しい鳴き声を上げていた。


「大丈夫……?」


 服の袖を破ると、包帯替わりにして傷ついた部位に巻いた。解けないように強く結ぶ。声にならない悲鳴を上げた。


「大丈夫……大丈夫だから。」


 怪我をしている部位は全て包帯を巻いた。少し汗をかいた。


「治療師さんのところに連れていくからね……!」


 小さな小さな魔物を抱えると、私は小走りで街へ戻った。


「治療師さん!この子を助けてあげて!」


 治療院支院に着くと、私は治療師を呼んだ。年老いた女性が扉から顔を出す。


「どうしたんだい?」

「この子が怪我をしたの……!」

「あらあら、本当だね……。私と一緒に来てくれるかい?」


 私は首を縦に振る。治療師のお婆さんと共に治療室へ向かった。治療室にはベッドがある。


「私は魔物専門ではないが……できることはやってみようじゃないか。」


 腕まくりをすると、治療師のお婆さんは魔物に手をかざした。すると温かな光が魔物を包んだ。何度見てもキレイな魔法。


「うわぁ!!」


 私は見蕩れていた。


「治療師さん!私も治療師になる!」


 幼い私はそう宣言した。しばらくして治療師のお婆さんがふっと息をつく。終わったみたい。


「治ったはずだよ。おっと、ヤンチャな子だね。まだ安静にしてないといけないよ。」


 小さな魔物は怪我していた部位を見ると、確かめるように舐めた。そして、治療師のお婆さんと私を見た。


「治療師さん、ありがとう!」

「いえいえ、お安い御用だよ。」

「私、この子を森に戻してあげます!」

「そうしてあげなさい。この子も喜ぶだろう。」


 治療師のお婆さんは細い目をして、小さな魔物を見た。私も満面の笑みを浮かべた。再び森に向かうと、私が見つけた場所に降ろしてあげる。小さな魔物は周りを伺うように歩き始めた。


「じゃあね。」


 くぅん、と小さな魔物が鳴く。どこか寂しげな声だった。だけど、魔物を街で飼うことはできない。魔物は危険な存在なのだ。私は別れたくない気持ちを抑え込んで、こちらを何度も振り返る小さな魔物を笑顔で見送った。



 ◇◆◇



「本日の依頼はこちらです。」

「はい、ありがとうございます。」


 私はギルドからの依頼書を受け取る。今日は3件。


「では、私はこれで。」


 ギルド員の女性は一礼すると、立ち去った。部屋にいるのは私一人。私も少しして部屋を出た。


「お姉ちゃん!」


 部屋を出ると、私を呼ぶ声が聞こえる。私の弟だ。


「ちょっと待ってね。今、依頼書を部屋に置いて来る。」


 そう言い返すと、私は走って部屋に依頼書を置きに行った。部屋では一匹のネコ、もとい【フタマタ】が寝ていた。


 机の上に依頼書を置くと、弟の所に戻った。


「どうしたの?」

「あいつだよ。また【ユニコーン】をいじめてる。」

「しょうがないわね。行きましょ。」


 私と弟はいじめられている【ユニコーン】の所に行った。そこには一角獣が悲鳴をあげて逃げ惑う姿が。それを追い掛けているのは竜。


「やっぱり【ドラゴン】は気性が荒いわね。あの子を宥めるわよ。」

「うん。」


 弟は一歩下がる。私は一歩出る。【ドラゴン】は未だに【ユニコーン】を追い掛けている。


「いい加減に……しなさい!」


 私の声と共に放たれたのは魔法。氷の魔法だ。それは【ドラゴン】に当たると、その部分を凍らせる。【ドラゴン】は足を止める。


「こっちを向いたわね。【ユニコーン】をお願い!」

「うん、分かった!」


 弟は倒れ込んだ【ユニコーン】に近寄る。治療を始めた。私は【ドラゴン】に向き合う。


「何度も言ったでしょ?他の子を攻撃しちゃダメ。いい?今度破ったらご飯抜きだからね?」


 それを理解したのか、していないのか、【ドラゴン】はくぅん、と犬のような鳴き声をあげる。どの子もいい子なの。でも少しお茶目な子が多いだけ。


「じゃあ、依頼を達成しに行きましょう。」

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