超! 次元海賊レトロ・オーダーの日常!

レド(大型獣脚類の一種)

第一章:超次元ユニバース!

第1話 超次元要塞フクロウ!

〜鳥次元だよ! 全員しゅ烏合!〜


 時は慶長8年。

 徳川家康が江戸幕府を開いた日本から遠く離れた銀河系の彼方で……


「私がお前の父親だ!」

「嘘だああああああ!」


 ドラマチックな演出で、やたら制作費の掛かったオーケストラが流れる次元要塞の一角にて、自分が黒き演劇貴公子、ダーク・アクターの息子だと知ったワシミミズクの少年。


 その名をデュランダル・ミシェーラ・ヨルムンガンドッ。

 とても平凡で一般的な名前を持つミミズクが、この物語の主人公である。

(ミドルネームのミシェーラは祖母の旧姓)


 ようやく辿り着いた次元要塞のコア、順調に進んでいた爆破計画。

 しかし、全ては皇帝の罠だったのだ。


 告げられる真実に打ち拉がれるデュランダルの前に、皇帝であるペンギン卿が立ちはだかる。各惑星より捉えた虜囚を奴隷とし、この次元要塞を建設させた悪の皇帝。


「フハハハハ。よくぞここまで辿り着いたな!」


 しかし、その見た目はめちゃくちゃ美人で、クラスの人気者っ! 週末はモデルの仕事もしてるよっ、キラッ!


 夕方に放送されている幼女向けアイドル番組のヒロインみたいな容姿であった。もはや鳥ですらなく、ペンギンのコスプレをした唯の美少女。


「この要塞のコアを見よ!」


 皇帝が指し示す要塞の中央、太陽炉:プロミネンス・リアクターには、特別製の制御装置が組み込まれている。


「このフワフワの羽毛に包まれた、愛らしいフクロウが、次元要塞の制御装置なんだよ!」

「な……なんだと!?」


 どう見ても太陽炉と機械的な接続がされているようには思えないし、どう考えても普通の夜行性猛禽類。しかし工業的な観点から考察すれば、同物質なら如何なる素材でも切削することが可能なのだ。


「ゆえに制御装置を破壊できるのは選ばれしフクロウのみ! だがお前はどうだ? ワシミミズク……このフクロウの成り損ないが!」


 これは皇帝(美少女)によるあからさまな挑発である。

 ご褒美だと称する希有な虜囚もいるらしいが、それは特別な一例。


「うるせぇ! 銀河の支配なんてくだらない理由の為に、こんな馬鹿でかい要塞を建設しやがって、自己愛主義者! 金の亡者! 飛べない鳥!」


 するとデュランダルの暴言が皇帝を襲う。


「ふええええんっ! いま飛べない鳥って言ったああああ!」


 飛べるはずもない。ペンギン卿とは名ばかりで、唯の美少女なのだから。


 怒り狂うペンギン卿は、まるで定価1,499円くらいの自撮り棒を持ち出すと、強烈な電撃を放つ。素材に使われるアルミニウム合金は通電性が高いため、雨天の自撮りには気をつけよう。


「私の息子に何をするぅ〜〜〜〜」


 すると舞台俳優特有のあからさまなビブラートと共に、黒き演劇貴公子ダーク・アクターが電撃に割って入る。


「あ〜↓、あ〜〜〜〜〜〜っ↑」


 謎の抑揚は、本当に痛い証拠だ。

 痛覚を直接駆け抜ける電流は、全身の筋肉を強制的に収縮させ、高電圧による熱量が筋繊維を内側から焼き千切る。爛れ落ちた皮膚は、剥がれた端から周囲の皮膚へと癒着し……などと厳密な表記をするとかなり痛々しいため、やや表現方法を変えると——


 ビリビリして、グワーってして、こんがりした。


 倒れ込むダーク・アクターに、デュランダルが駆け寄る。父親という発言を盲信した訳では無い。しかし身を呈して自分を庇った男を、見捨てて置くことなど出来るはずも無かった。


「どうして、俺なんかを護ったんだ!」

「皇帝の野望を……打ち砕くのだ……お前ならば」

「でも俺はワシミミズクだ。それに生きたフクロウである制御装置を破壊するなんて残酷な真似は……俺には出来ない」


 その魂の高潔さを痛感したダーク・アクターは、息子へと助言する。


「ならば直接コアを砕くのだ。制御装置と接続されている影響で、リアクターにもフクロウのインシデント、つまりフクロウ因子が書き込まれている。内側と外側からフクロウ因子を共鳴させればコアを崩壊されることも可能なハズだ」

「くっ、その情報を知ったところで俺に出来る事なんて無い。もしも力があったら……もしも俺がフクロウだったら!」


 息子の悲痛な表情を見兼ねたダーク・アクターは、ついに真実を口にする。


「可能なハズだ。フクロウである私の、息子であるお前ならば……」

「っ、父さんはフクロウだったのか! しかし何故、ミミズクなんて嘘を!?」

「お前の母さんが……耳みたいな羽角がある……ミミズクの方が可愛いって言うから……」


 デュランダルは溢れ出す涙を、止められなかった。


(もしもフクロウである事実が明るみになれば、皇帝から狙われるであろう俺の身を案じて、そんな嘘を……くっ)


 デュランダルは苦心の末、自分にとって都合が良い解釈を信じ込もうと粘りに粘った。余りにも受け入れ難い真実だった為、二次聴覚野が誤作動を起こしたのだ。


「では私は一足先に母さんの元へ逝くよ……」

「父さんっ、父さあああああん!」


 消え逝く命、また一人の演劇貴公子が星となった。

 しかし泣いている暇は無いぞ少年! 頑張れ!

 (↑通称、無責任ガンバレ)


「くっそおおおおおお!」


 迸る超次元エネルギーを纏い、少年は奮い立つ。

 もはや皇帝の目論見など関係無い。

 この悲しみの連鎖を喰い止めるには、次元要塞のコアを破壊する必要がある。


 そして握り締めた翼は、奇跡の光を放った。


「ゴッド・バード・ブレイカーッ!」


 きっとオウル・パンチは格好悪いと、少年の本能が告げる。

 制御装置であるフクロウを無視し、無謀とも言えるコアへの突入。

 すると眩い拳突は光子の翼を広げ、見事に次元要塞のコアを打ち砕いた!


「ああああああっ、私の野望がああああ!」


 プロミネンス・リアクターは砕け散り、結晶の内側からは多様な鳥達のエレメントが解き放たれる。フクロウの少年は命が尽き果てる間近、その光を見た。


 父と母。一つのつがいが銀河の海を飛び去る姿を……

 今に自分も追いつくと翼を羽ばたかせるも、みるみる距離は開いていく。


「っ、待ってくれ!」


 飛び起き、頬を撫でた涙の筋は、未だに暖かい。


(俺は死んだのでは無いのか)


 未だ吞み込めぬ状況に辺りを見回すと、一羽のフクロウが少年の傍で寄り添っていた。それは制御装置として囚われていたフクロウ。ふと視線が交わると、そのフクロウはパッと笑顔を浮かべた。


「ようやく助けに来てくれたんだね。お兄ちゃん!」

「え……えっ!? つまりお前……妹だったのか!?」

「いや僕、弟ですけど……」


 生き別れの弟は、しばらく口を利いてくれなかった。

 斯くして鳥次元銀河は平和を取り戻したのだ——


 そして砕け散った次元要塞のコアより飛び立った鳥達のエレメントの内、一羽のホトトギスが地球へと降り立った。すると鳴くまで待とう派だった徳川家康の前にて、ピイと一声鳴いたのだった。


 時は慶長8年。

 徳川家康が江戸幕府を開いた頃の出来事である。


※この作品はコメディーです。

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