第481話 勧誘失敗

ぞろぞろと俺達が教室に戻り、一瞬クラスメイトから注目を集める

何か聞かれたら、なんて答えよう




言い訳を考えていると……集まってた視線は、すぐになくなり

俺達を気にするやつは居なくなった


俺「え……?」

どういう事?


もしかして、四季島が何か手を回しておいてくれたのか?


俺「なぁ、四季島?」


四季島「なんだ?」


俺「皆になんか言ってあったのか?」


四季島「いや、何も言ってないんだが……どうしたんだろうな、皆」

って事とは……

南城さんと堀北さんを見るが、2人とも首をかしげて


南城「あれ?」

堀北「どうしたのかしら?」

と言ってる


このメンバーの中の誰かが前もって説明してたわけじゃ、ない⁉


こういう時は……Bに聞いてみるに限る


俺「なぁ、B」

ちょっといいか?


B「おかえり」

とだけ言ってくる


俺「なぁ、皆どうしたんだ?」

南城さん、堀北さん、四季島が教室にいなかったのに

誰も理由を聞いたりしてこないんだけど?


B「は?どうしたって、いつも通りだろ?」

ん?


俺「いつも……通り?」


B「ああ、いつも通りだ。いつも通りに、南城さんや堀北さん、四季島とお前が何かトラブってた。そんで、全員帰ってきたって事は無事解決したって事だろ?いい加減、俺達だって慣れたよ」

……いや、ちょっと待て!


俺「慣れたって……」


B「そりゃ、慣れるだろ?だってさ、もう半年以上もこんな事が続いてるんだぜ?それとも、今回は本当に腹壊してたのか?」


俺「いや、まぁ、違うけど……」

至って健康だけど……!!


B「もしかしてお前……騒がれたいのか?そういうの苦手だと思ってたけど」

騒がれるのは苦手だよ!

でもな⁉


俺「そんな、あっさり“慣れた”なんて言われたら、何かモヤモヤすんだよ」

何か、俺がバカみたいじゃんか


B「そうかそうか。分かったから、さっさと次の授業の準備しろって」

流された⁉


俺「はぁ……何か、俺どんどん名前無しmobから遠ざかってる気がする」

本来なら、俺もそっち側のはずなのに……Bとの間に距離を感じるよ


Bからの説明は、まぁ合ってるんだろうな

他のクラスメイトも特に騒ぐ事もなく、本当に日常的な事として気にしてないみたいだ


俺「はぁ、次は何の教科だっけか……」

無事、3時間目以降の授業は受ける事ができた


休み時間の度にあの先輩達が何か仕掛けてこないか警戒してたけど

無駄だったみたいだ



平和だなぁ……















そして、放課後まで何もなく時間は過ぎた


俺「さて、帰るか……」

妹を待たせると、余計な出費が増えるからなぁ


東雲「あ、Aくん!」

うん?


俺「東雲さん、どうしたの?」


東雲「今日は、練習しないの?」

あ~、しないとダメなんだけど……


俺「ごめん。今日は妹と買い物に行く約束してるんだ」


東雲「そっか。それじゃ、ダメだよね」


俺「なんか用事あった?」

時間がそんなにかからないなら、大丈夫だけど


東雲「ほら、部員の勧誘!」

あ、……忘れてた

南城さん達を勧誘しようって言ってたんだっけ

あのドタバタですっかり忘れてたな


俺「そうだね。とりあえず、話してみよっか」

えーっと、南城さん達は……


あ、いたいた

あれ?四季島も一緒にいるな……

少し意外だけど、仲直りできたみたいで良かった


大声で呼ぶような距離でもないし、歩いてくか

何か話してるみたいだし、邪魔しない程度の距離で話し終わるのを待とう


南城「四季島くん、私はまだ完全に許したつもりはないよ?」

近付きすぎて、会話が聞こえちゃった……

あいつ、まだ許してもらえてなかったのか


四季島「ああ、分かってる。だが、アイツの為だ。どうか聞き入れてほしい」

ん?

でも、何の話だ?


堀北「彼の為、それは分かるわ。でも、四季島君…アナタに指示されるのは、納得いかないのだけど?」

もしかして、俺関係の話?

どうしよ、これ聞いちゃマズい話かな?


四季島「俺の指示、というわけじゃないんだがな……研究所からの要請だからな」

研究所……やっぱり俺の話なのか


堀北「同じことよ。四季島君が持ってきた話ってだけでね」


四季島「頼む、この結果次第でアイツにどんな変化があるか調べる必要があるんだ」

結果次第?変化?調べる?

一体、何を話してんだ?


南城「ホントにそれって必要なの?」

四季島「ああ、どうしても必要なんだ」

なんか、四季島が必死なのって久しぶりに見たな……


南城「それをすれば、彼の事が守れるの?」

俺を守る……?


堀北「千秋⁉」

四季島「そうだ」

どういう事だ?


南城「分かった、けど1カ月は無理。せめて期間を短くして」

1カ月?期間?


四季島「分かった。最低限のデータが取れたら即終了してもらえるように、父さんに掛け合うよ」


堀北「もうっ……分かったわ。私も協力するわよ」


四季島「2人とも、ありがとう」


南城「四季島君くんのためじゃないよ!」

堀北「こんな事、ほんとは協力したくないんだからね?」


四季島「ああ、分かってる。今回限りだ」


やっと話は終わったみたいだけど……

俺抜きで、俺の話をしてるって事は

俺には秘密にしておかないとダメなのかな?


隠してる事は、無理に聞き出しちゃダメだよな

俺だって、ちゃんと学習したんだ

ここは聞かなかった事にしよう



そろそろいいかな?


俺「南城さん!堀北さん!」


南城「え⁉」

そんなあからさまに動揺しないでよ……


堀北「どうしたのかしら?」


俺「ちょっとお願いがあるんだけど、聞いてくれないかな?」


南城「なに?なに?」

堀北「ごめんなさい。私これから千秋と大事な用事があるの!」

あ、そっか

まだ、四季島と相談する事があるのか


俺「そ、そっか。分かったよ。また今度にするね」

今日は日が悪かったんだ

諦めよう


東雲「あっ……うん、そっか」

後ろにいた東雲さんが残念そうにしてるのを見ると

心苦しいけど……仕方ないよな


俺「って訳だから、東雲さん…また明日ね」


東雲「うん、また明日」




皆と別れて、俺は1人家に急いだ


















帰宅すると、既に普段着に着替えた妹が玄関で仁王立ちで待っていた


妹「おにぃ、遅いよ!!!」

やっぱり先に帰ってきてたか……


俺「悪い悪い」


妹「ほら、行くよ!」

え?

もう行くのか?


俺「せめて着替えてから」


妹「そんなのどうでもいいよ!早くしないと間に合わないよ!」

え?

その店、そんなに早く閉店するの?


俺「わ、分かった。案内よろしくな」

駅の方にあるって事は予想できるんだけど

正確な場所までは知らないからなぁ


妹「うん!それじゃ、しゅっぱーつ!!」

ホッ……

遅くなったからって、何か奢れって言ってこなかったな


妹「それはそうと、遅れた分ちゃんと後でしてよね」

あ~……やっぱりか……


俺「何をご所望で?」

ただでさえ買い物するんで懐が心配なんだが……


妹「パンケーキ!」

即答かよ……さては、もう決めてあったな?


俺「分かったよ。買い物終わったらな」


妹「ダメ!早くしないと売り切れちゃうじゃん!!」

……もしかして、間に合わないって


俺「最初からそのつもりだったな?」


妹「えへへ、おにぃは優しいから…ご馳走してくれるよね?」

コイツ……


俺「はぁ……しょうがねーな」

帰ってくるのが遅れた分と、プレゼントの相談料として

奢ってやるか


妹「やった!おにぃ、ありがと!へへへ、パンケーキ♪パンケーキ♪」

無邪気に笑ってるなぁ





羨ましいな……

今日も今日とて、俺は大変な思いをしたってのに

お気楽なもんだな、妹さまは

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る