第471話 練習相手は

堀北「と、こんな感じね。分かった?」

説明に速かったなぁ


四季島「ああ、問題ないよ」

あの速度で説明されて理解できるってすごいな……


堀北「良かった。それじゃ、どっかで1人で練習しててね」

うん?


四季島「え?」


堀北「彼に教えるから、相手が欲しいなら自分で探してね」

あ~、俺に教えてる間は俺にかかりっきりになるからだな


四季島「そ、そうか……ここで練習したら」

そうだな、別に居てくれても


堀北「ダメよ。邪魔」

じゃ、邪魔⁉


四季島「じゃ、邪魔……そうか」

なんで四季島は反論とかしないんだろう……


俺「えっと、何かごめん」


四季島「いや、いいんだ……」

そのまま四季島は、別の所で集まっている集団に交ざりに行った


堀北「さて、それじゃ最初の所から確認していきましょう。ゆっくりね」

良かったぁ……四季島みたいな速度で言われたら、絶対に分からなかったからな


俺「うん、よろしく」
















本当に1ヶ所1ヶ所丁寧に、ゆっくり教えてくれて時間はかかったけど

なんとか、全体の流れと修正箇所を把握できた


俺「堀北さん、ありがと」


堀北「いいえ、私がしたくてした事だから気にしないでね」


俺「それでも、助かったよ。後は練習あるのみ、だね」


堀北「ええ、それじゃ練習を」


堀北さんが練習相手をしてくれようとしたタイミングで

パン!パン!

と手を打つ音が教室に響いた


担任「全員注目!今日はここまでだ!」

え?


担任「これから先生は職員会議があるから、ここのカギを閉めないといけないんだ。だから、全員忘れ物に気を付けて解散!」

なるほど……

担任がいないと、こういった空き教室を使うことはできないのか


俺「仕方ない、な」

練習は、どっか別のところでやるか


堀北「ええ……とても残念」

珍しく堀北さんの目が死んでる……


俺「それじゃ、教室に戻ろっか」

鞄とか取りにいかないといけないし


堀北「そうね……」

忘れ物の確認をしてから教室に戻る


そして、教室に戻ると黒板には大きな紙が張り出されていて

色々な図が書かれていた

あれは……小道具の図面?


南城「あ、役者組が帰ってきたよー!」

小道具とかの裏方組は、なぜか南城さんが指揮を執っていた


俺「えっと、南城さん?」

何やってんの?


南城「何かな?」


俺「何してるの?」


南城「何って……う~ん、班長?」

班長?


B「あ~、A!ちょっとコッチ来い!」


俺「なんだよ」


B「いいから、早く来いって。俺が説明してやるから」

なんでBが説明すんだよ……

まぁ、いいか


Bのいる教室の隅へ行くと

首にBの腕が絡められて、顔を近づけさせられる


俺「なんだよ……」


B「もっと声を小さくしろ」

なんでだよ⁉


俺「で?早く説明しろって」


B「南城さんの性格は、お前は良く知ってるだろ?」

良く知ってるって言っても、一面だけだと思うけどな


俺「それなりにはな」


B「俺達の見解はこうだ。『南城さんは、とても頑張り屋さんで何でも挑戦をする人だ』ってな」

そ、そうだな


俺「うん」

間違ってはないな


B「ただし、んだ。頑張っても頑張っても、上手くいかないこともある。……そういうわけで、班長としてまとめ役をやってもらってるんだよ」

な、なるほど……


俺「分かった。確かに、南城さんは器用とは言いづらい。それで、南城さんは納得してるんだよな?」

班長って役割を


B「ああ、できるだけ穏便にオブラートに包んで説得した。だけど、完璧じゃないから……余計なことは言うなよ?」

分かった


俺「大丈夫だ、俺がそんな藪蛇な事言うわけないだろ?」


B「いや、お前の場合……蛇じゃなくてマムシとか熊が出てきそうだから心配なんだよ……」

熊が出てくる藪なんてあるわけないだろ⁉


南城「ねぇ、A君!」


俺「な、何かな⁉」


南城「役者組の方はどうだった?」

あ~、そうだな


俺「それが……読み合わせまでできなくてさ」

台本の修正が多くてなぁ


南城「そうなの?」


俺「うん。だから、まだ全然できてないんだ」


南城「そっか。それなら私手伝おうか?」

え?

いいの?


堀北「千秋、ちょっと待ちなさい。それは私の役目よ」

え?


南城「春香はナレーション役でしょ?別に彼の練習相手を兼任する必要はないんじゃない?」

何か話がマズい方へ向かてないか?


堀北「それを言うなら、千秋だって裏方組の班長なんでしょ?」


南城「班長なんて言っても、私は別に……」

ちょっ、この感じだとBの説得の裏読まれてるだろ⁉


堀北「ちゃんととしての役目をやってからにしなさいよ」


南城「それを言うなら春香だって、まだナレーション全部覚えたわけじゃないでしょ⁉」


堀北「私は、すぐに覚えられるもの」


南城「なら、今すぐ覚えてみてよ!できるんでしょ⁉」

あ~……マズいマズいマズいマズい!!!!!


Bは……もう作業に戻って聞いてない、事にしやがったな⁉

絶対に巻き込まれたくないから逃げただろ!!!


この2人の口喧嘩を止めるなんて、俺に出来るわけないだろ⁉

どうしてくれんだよ!!


東雲「ねぇねぇ、A君。練習なら私とどうかしら?」

え?


俺「東雲さん⁉」

いつから居たの⁉


東雲「実は、学校には来てたんだけど保健室にいたんだよね」

え?


俺「体調悪いの?」

大丈夫?


東雲「ううん、別に体調不良だったわけじゃないよ……元気だから心配はいらないよ」

でも……


俺「どうして保健室なんかに」

放課後までずっと保健室にいたんだよね?


東雲「遅刻しちゃって……サボるわけにもいかないから、保健室でね」

あ~、遅刻か

なるほどね

それで教室に入りづらかったんだ

そんなに気にしなくても大丈夫なのに……

まぁ、入りづらい気持ちは分からなくもないけどさ


俺「そっか。台本は?」

貰えたの?


東雲「バッチリだよ。もう全部覚えたから」

え⁉


俺「もう覚えたの⁉」

嘘でしょ⁉


東雲「うん。これくらいは簡単だよ」

すげぇ……


俺「東雲さんって、役者もやってたの?」

アイドル業しかしてないのかと思ってたけど


東雲「えーっと……、あんまりセリフのある役はやらせてもらえなかったけど役者もやってたんだよね。でもね、いつ役を振られても大丈夫なように台本は全部覚える事にしてたんだ……結局1度もそんな事はなかったけどね」

そ、そっか……


俺「そっか。それなら東雲さんに……って、ちょっと待って」

東雲さんの役割って役者組じゃないから裏方組の方だよね


東雲「何?」


俺「東雲さんは、裏方組の方はいいの?」

こっちの練習に付き合ってくれるって事は、アッチの方から抜けちゃうって事になりそうだけど……


東雲「私、全体のサポートに回る事になってるから大丈夫だよ」

そうなの?


俺「なら、お願いしようかな」


東雲「うん!場所は静かな方がいいと思うから、移動しよ」


俺「あ、ちょっと待って……南城さん!堀北さん!」


南城「何!」

堀北「何かしら?」


俺「東雲さんと練習するから、じゃまた明日ね!」

東雲さんの手を取って教室から逃げる!!!


南城「え⁉なんで⁉」

堀北「抜け駆け禁止よ!!」


2人の声が後ろの方から聞こえたけど、止まってはいられない!


廊下を走って怒られながらも、俺達は静かそうな場所へ向かった

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