第458話 Yちゃんの事情

あ~、びっくりしたぁ……

堀北さんは何考えてんだよ、もう……


あ、妹とRちゃんが戻ってくる


俺「堀北さん、ごめん。アンコールの打ち合わせしてくるから」

堀北さんの前からとりあえず、逃げる!!


堀北「あっ」

引き留める声を聴かず、一目散に妹達の元へ走る




妹達の元へ駆け寄ると


妹「あ、お姉ちゃん」


俺「堀北さんを頼む!俺はRちゃん達と話してくるから」

堀北さん、1人にするとまた囲まれちゃいそうだからな


R「今度はお姉さまですか……⁉」


俺「Tちゃん達は……いたいた!Tちゃーん!」

ちょっと距離があったらから大きめの声でTちゃんを呼ぶと

びっくりしたのか、その場で少し跳ねて辺りを見回し始めた


俺「脅かしちゃったかな?」

悪いことしたな……

そして、俺が呼んだのに気づいてない


R「あ、私呼んできますよ!」

妹と俺から逃げるように、ダッシュでTちゃん達の所へ向かう


妹「それで、春香先輩がどうしたの?」

どうしたってわけじゃないんだけど


俺「1人でいると、囲まれちゃうみたいだから守ってあげてほしいんだよ」

途中で帰りたいってなった時とか、困るだろ?


妹「あ~……そっか」

どういう事がすぐに察してくれる妹


俺「Rちゃん達と話し終わったらすぐ戻るから、頼むよ」


妹「その話の内容は?」


俺「ああ、最後のステージの事をちょっとね」

そろそろ決めたいと、俺としても困るからね


妹「それなら私だって」


俺「ちゃんと後で話すよ」

それじゃ、頼んだぞ


Rちゃんが中々戻ってこないから、合流しに向かう







RちゃんとTちゃんが話してる所へ着く


俺「Rちゃん、Tちゃん」

あと、Uちゃん

T「あ、お姉さま!」

R「お姉さま⁉」


俺「Yちゃんは?」

さっき一緒に居なかった?


U「両親の代理?の人達と向こう行っちゃった」

指さしたのは、人気の少なそうな場所だった


俺「向こうって何かあるの?」

もしかして隠れ家的な模擬店でもあったりする?


R「何もないですよ?」

何にも?


T「今日に限った話じゃなくて、普段から人が寄り付かない場所なんですよ」

そんな場所があるのか……


俺「大丈夫かな?」

まぁ、両親の代理で来た人達だし

危害を加えてはこないだろうけど……


R「ちょっと心配です」

だよな


T「何か、Yちゃんも警戒してたもんね」

Yちゃん本人が?


U「うん、話なんてしたくない……でも逆らえないって感じだったよ」

それは……良くないな


俺「心配だし、私が様子を見に行ってくるよ」

皆は待っててね


R「それなら私も行きます!」

T「私も!」

U「もちろん、私だって!」

ん~~~……

まぁ、学校の敷地内だし大丈夫……かな?


俺「分かった、一緒に行こう。でも、まずは様子見だけだよ?」

勝手に飛び出しちゃダメだよ?


R「はい!」


よし、それじゃ行ってみようか








校舎の隅の一角

背の高い大きな木が1本と、背の低い木が周囲を囲んで植えられている

1か所、低木の植えられてない所が入口だな



そーっと入口から中を覗くと、Yちゃんの背中が見えた

Yちゃんの前には大人の男性と女性が、1人づつ威圧的に立っている


Y「私は、まだ帰れません」


男性「お嬢様、ワガママを言われては困ります」


Y「わがままですって⁉どっちが⁉いきなり連絡もなく来て、すぐに帰れという貴方たちの方がよっぽどわがままでしょう⁉」


女性「ご理解ください。わたくし共は、お嬢様をお連れするように申し使ってるだけなのです」


Y「だから、いつも言ってるでしょう?私はお父様の言いなりの人形ではないのよ!!」

あんなに声を荒げる子だったんだな……

意外だな


男性「そう申されましても……はぁ、私達だって仕事なんですよ。聞き分けてください」

仕事、か……

未成年でただの学生である俺達には言えない事だよな


Y「そんなことは分かってるわよ!でも、仕事だからって、私の自由を奪わないで!私はまだ帰りたくないの!まだやる事があるの!!だから、お願いよ……今日だけは私の言い分も聞いてよ……」

肩を震わせて、手をグッと握るYちゃんの必死さに対して

大人たちは……


女性「お嬢様、涙は確かに武器になります。ですが、今の私達には通用しません。泣いても無駄です」

冷たい一言で突き放した


Y「無駄とか、そんなの関係ないわよ!私は悲しいから、悔しいから泣いているの!!これは私の為の私の涙よ!!アンタ何かの為に泣くわけ、ないじゃない」

震える涙声で虚勢を張るYちゃんは、涙を拭う事もせず堂々と言い放つ


男性「はぁ~~~~……なんでこんな面倒な事をしなきゃならないんだ。俺は子守りの為に雇われたんじゃないってのに」

苛立ちを隠さない独り言は、酷く冷たく感じた


女性「しょうがないでしょ?業務命令なんだら」

どことなくYちゃんに嫌悪感を抱いてそうな言い方をする女性



R「お姉さま……」

どうしよう、困った

そんな感情を乗せた声で問いかけられてもな……


俺「まだ、様子を見るしかできないよ」

下手に飛び出して、Yちゃんの立場をより悪くしたら本末転倒だからね




Y「せめてお父様と話しをさせて!私がお父様を説得するわ!!」

直談判か

親子喧嘩に発展したら、俺達の出番は一切なくなるな……


男性「それは出来ません」


Y「なんでよ⁉」


女性「お忙しいでしょうから、電話しても繋がりませんよ」


Y「そんなのやってみないと分からないじゃない!!」


男性「はぁ……いいですか?今、アナタが電話した場合…私達の立場はどうなると思ってるんですか?」

立場って……


女性「お嬢様をお連れするという業務を遂行できず、雇い主の手を煩わせたら私達は解雇されてしまいます。その責任を、貴方は取ってくれるんでしょうか?」

責任……?


Y「そんなの……そんなの……」

顔を下に向けて、どうすればいいか考えを巡らせるYちゃん



でも、本来ならきっと何も考えなくていいんだ

だから……


俺「話は聞かせてもらったわ」

もう黙って聞いてられない


この無な連中を俺は許さない!!

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