第456話 妹おススメの模擬店

母「あんた達は何か食べる?」

何か食べたいけど……


俺「何があるか分からないんだよね」

色々忙しくて、ちゃんとパンフレット見てないからさ


妹「なら、私のおススメのトコ行く?」

そんなのあるなら、最初から言えよ


俺「じゃあ、そこでいいかな」

妹が勧めるってことは、口に全く合わないって事にはならないだろうし


妹「えっと、場所は……アッチかな」

指さした方角の模擬店は、今いる位置から距離がある場所だった


俺「遠いなぁ……」

人混みを抜けて行かないといけないとか、リスキー過ぎるよな


妹「私、買ってくるよ。お姉ちゃんは待ってて」

え?


俺「いいのか?」

助けるけど……


妹「うん。多分今は友達が店番してるから」

そっか

なら、任せちゃおうかな


俺「じゃ、頼むよ。お金は父さんが出してくれるみたいだから」

出さなくていいよな?


父「あ、ああ。もちろんだとも」

そう言って、財布から千円札を2枚妹へ渡す


妹「そんなに高くないよ?」

と、千円だけ受け取りもう千円は返そうとする


俺「貰っておけばいいのに」

他にも買いたいモノがあれば、買えばいいんだから


父「いいから持ってなさい。他に買いたいモノがあれば、その時使えばいい」

ホント、娘に対しては太っ腹だよなぁ


妹「お父さん、ありがと」

よっぽど小遣いが嬉しかったのか、跳ねるように買い出しに行ってくれる


父「さて、それじゃ聞かせてもらおうか」

え?


俺「断じて趣味ではない!」

もう、いい加減にしてくれよ!!


父「それは分かってる……そうじゃない。お前の名前持ち化についてだ」

あ~……その話か

てか、声潜めなきゃいけない内容だって分かってるなら今じゃなくても良くないか?


俺「うん。ごめん」

父さんに話すタイミングが無かっただけなんだよ


父「四季島君が報告書をコッチにも回してくれたんだが、良くわからない部分が多かった。研究者として、気になるんだが」

あー……、はいはい


俺「多分、説明しても無駄じゃないかな?」

あれに関しては……


父「それは、私には理解できないという事か?」

そんな事言ってないよ


俺「違う違う。実は俺自身良く分かってないんだよ。だから、上手く説明できないんだ」

覚えてる内容が、まず信じられない事ばっかだし

それがただの夢だっただけの可能性が高い気もする


父「そうか……お前自身が良く分かってないなら、説明もできないか」

ああ、そうなんだよ

決して説明がメンドクサイとか、そんな事はないんだけどね?


俺「ごめん」


父「なら、あの報告書からある程度推察するしかないか。結論は出ないだろうがな……」

そっか


妹「お待たせ~」

父さんとの会話内容が一区切りついた途端に、妹が帰ってきた


手にはクレープを持って




俺「お帰り」


妹「はい!コレ試食させてくれた時から、絶対に買いに行こうって思ってたんだよね!」

なるほど、だからおススメなのか


俺「ありがと」

クレープを受け取って、一口食べてみる


俺「……っ⁉」

美味っ!!


妹「美味しいよね!」

これは、頷くしかないな


俺「うん、模擬店でこの味が出せるって……」

凄いな……


妹「しかも、コレ今日バージョンアップしたんだよ」

バージョン、アップ?


俺「どういう事?」


妹「“お菓子好きの名前持ち”さんが改良してくれたんだって!」

分かってて言ってるな


俺「それ、絶対に仁科さんだよね」


妹「うん。でも、知り合いだって事は秘密!」

だよね


俺「それが良いよ。多分……やっぱ、なんでもない」

手遅れだと思うけど、きっと何とかなるよ

明日以降、頑張ってくれ


妹「うん?」

いや、それにしても美味いなぁ


俺が食べてるのは、チョコとバナナと生クリームのシンプルな王道クレープ

そして、妹が食べてるのは……色からしてイチゴ系の味だな


俺「そっちのも美味そうね」

イチゴの酸味が欲しいな


妹「食べる?いいよ」

いいのか?


俺「それじゃ、ありがたく」

パクっと1口貰う

うん……うん……美味い!


俺「程よい酸味が、良いアクセントになってるな」

貰うだけってのは悪いし


俺「ほれ、こっちのも1口食べなよ」

こっちのクレープを差し出す


妹「う、うん。貰うね!」

欲張りな妹は大きな1口で、俺のクレープを食べた


俺「食い意地張ってんなぁ」

まぁ、いいけど……


R「見ーちゃった~見ーちゃった~!」

うん⁉


俺「な、何を?」


R「いくら何でも、間接キスは見逃せないですよ~」

間接キスって、兄妹なんだし

そんな問題にならないだろ?


妹「Rちゃん、ちょっといいかな?」


R「あ……ごめん、何でもないよ?」


妹「私は、Rちゃんに用があるから。ちょっと向こうでしよ?」

強制的にRちゃんを連れて離れて行く妹を見送りつつ、残りのクレープを平らげる


さて、この後はどうするかなぁ

そういえば、仁科さん見かけないけど……どこに行ったんだろ?


子供じゃないんだし、1人でも大丈夫だろうけど……少し心配だな

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る