第445話 3-4(休憩スペース)

ヒョイっと覗き込もうととすると、バッと隠れられる


何か、全然見えないな……悔しい!


そんな無駄な攻防を繰り返していると、妹達が教室から出てきた


妹「お姉ちゃん、何してるの?」

見て分かるだろ?


俺「堀北さんの事を見ようと」

頑張ってるんだよ


妹「春香先輩?なんで?」

なんでって、なんとなく見たいから


俺「堀北さんが、ここの制服着てるのよ」

見たいだろ?


妹「え?春香先輩が?」

そうそう


堀北「妹ちゃん、助けてくれないかしら?」


妹「なんでですか?」


堀北「なんでって、恥ずかしいのよ⁉」


妹「恥ずかしがる春香先輩って、なんか可愛いですよね」

ナイス、妹!


堀北「裏切るの⁉」


妹「裏切るとか、そもそも私は味方じゃないですよ?」


俺「いい加減、見せてくれません?」

見たいんだけど⁉


堀北「千秋、絶対に見られないようにしてね。絶っっっ対に!!」

南城さんに圧をかける堀北さん


南城「春香、別によくない?」

よし、南城さんが折れた!


堀北「千秋、アナタも裏切るっていうの⁉」


南城「だって、何で見られたくないのか私分かんないし」

まぁ、南城さん的にはそうだよね!


堀北「恥ずかしいの!死ぬほど!!」

倒置法?


南城「私だって、で今すっごくドキドキしてるんだよ?」

ん?


堀北「私のせいって何よ⁉」


南城「春香が私の後ろに隠れるせいで、すっごく近いんだよ⁉」

近いって……俺か⁉


俺「あ、ごめん!」


堀北「ほら、もう大丈夫よね。このまま後ろに下がって離れるのよ」

う~ん……

見たかったけど、諦めるか


俺「それじゃ、また後でね」


南城「うん、後でね~」

ずるずると後ろに引きずられていく着ぐるみを見送る



俺「さて、これからどこ行くか決まった?」


妹「うん、いくつか友達のトコ見に行く予定だよ」

そうか


俺「一緒に行っていい?」

1人でいるのはリスクが高いからな


妹「もちろん、いいよ」

さて、それじゃ移動しようか


妹「うん!」


他のメンバーと合流して、また6人で行動する



3年4組の教室へ行くと、妹の元へ3人の女子が駆け寄ってきた


「ねぇねぇ!聞いた⁉」

「凄いんだよ!」

「ほんと信じらんない!」

何を盛り上がってるんだ?


妹「な、何を?」


「名前持ちの先輩が遊びにきてるんだって!」

「誰の知り合いか、全然わからないみたい!」

「なんか、騒ぎになってたよ!」

あ~……ははは

それは南城さん達だな……


妹「そ、そーなんだー。大変だねー」

もっと自然に言えないのか……?


「それと、アイツが女の人に負けたんだって!」

アイツ?


妹「アイツって誰?」


「ほら、いつも威張ってる腰巾着くん!」

それ、絶対に悪口だよね⁉


妹「あ~、5組の?」

伝わってる⁉


「そう!彼女が名前持ちだからって、名前無しの癖に威張り散らしてるやつ!」

へぇ、そんな奴がいるのかぁ


「なんでも、どっかの模擬店で騒いだ所で!」

迷惑な奴だなぁ


「ここの生徒じゃない名前無しの女子に負けて逃げたんだって!」

へぇ、そりゃ面白い事がおきたもんだ


「しかも、勝った女子はめっちゃ綺麗で身長も高くて!」

「モデル的な人らしいよ!」

そんな子がいるのかぁ……会ってみたいな


妹「……ソレワ、スゴイネ!」

うん?

どうしたんだ?


「ちょうど、そこの人みたい……に?」

俺を指さして固まる女の子


俺「私?」

わなわなしてるけど、どうしたんだろう?


妹「お姉ちゃん……」

なんだ?


俺「何かしら?」

あんまりお前の友達の前で話しかけないでほしいんだけど……


妹「さっきの話、身に覚えない?」

う~ん……?


俺「ないわ」

あの時は、あの男子が勝手に居なくなっただけだし


「もしかして、貴方が……噂の⁉」

「ねぇ、Aちゃん⁉」


妹「多分、そうかも……」


「わぁ~!!」

「なんでAちゃんはいっつも凄い人と知り合いなの⁉」

「前は、校門の所ですっごい綺麗な名前持ちの先輩と話してたって聞いたし!」


妹「ははは……なんでだろうね……」


「あれ?そういえば……名前持ちの先輩と知り合いって言えば」

「もしかして……あの方達もAちゃんの知り合いだったりして⁉」

「あるかもー!」

どうなの⁉

と妹に視線が集まる


妹「そ、そんな訳ないじゃん……ハハハハハ」

笑って誤魔化せる状況か⁉


「だよねー」

「流石に出来過ぎだよね!」

「ないよね!」

え?

誤魔化せるの⁉


R「ちょっと失礼!」


「えっと……Rちゃんだっけ?」

一応は面識があるのか


R「そう!話の途中で申し訳ないけど、ここには用事があってきたんだよね!」

そういえば、友達に会いに来たって言ってたけど


「用事って……ここは休憩スペースだよ?」


R「そうだけど、私たちの用事はお話しながら休憩する事じゃなくてね!」


妹「今日、3時くらいに私たちステージに立つから……良かったら」

なるほど、友達に宣伝に来たのか


「そっか!」

「おっけー!見に行く!」

「何するんだっけ?」


T「バンドだよ」


「えっと……?」

あれ?

Tちゃんとは面識ないの?


T「バンドメンバーのTだよ。よろしくね!」

U「同じくUだよ」


「そうなんだ!よろしくね!」

「UちゃんとTちゃんね」


Y「私は」


「知ってるよ!のYちゃんでしょ⁉」

せ、接客の鬼⁉


Y「その不名誉な称号は、いらないわよ……」

鬼呼ばわりは、いやだろうなぁ


Y「私たちのバンド、見に来てくれるかしら?」


「もちろん!」

「Aちゃんが出るんだもん!」

「絶対に見に行くよ!」


何だかんだ、妹には人望があるんだなぁ

ちょっと、誇らしいな……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る