第433話 俺で、いいのか?

R「それじゃ、お兄さんにはまずは私たちの実力を見てもらおっか!」

うん?


「いいよー!」

とベースの子が答える


妹「そうだね。それじゃ私と兄さんは1回見学しておくね」

それじゃ、お手並み拝見としますか


俺「それじゃ、見せてもらおうかな」

対して練習時間はなかったはずけど、どのくらい仕上がってるかな


「やりましょう!」

キーボード担当はこの子なんだな

これだけデカい屋敷だし、グランドピアノとかおいてありそうだな


「やるぞーっ!」

ギターの子もやる気十分って感じだな


南城「頑張ってねー!」

堀北「本番のつもりでね」


R「それじゃ、やるよ!T、Y、U」


T「うん!」

Y「ええ」

U「おっけー」


ドラムのRちゃんがスティックで最初のリズムをとって

一斉に音を鳴らし始める

俺がオーダーした曲は、あとるアニメの劇中歌『神のみぞ知る』

曲調としては激しめの方だと思うけど、どう演奏するかな


凄いな!

初っ端のギターの所は、聞いてる感じ完璧だ


本来なら歌が入る部分からはベースのカッコよさが際立つんだけど

それも、いい感じにできてるな


そして、この曲だと大きくは目立たないけどキーボードとドラムが全体の仕上がりを決めている


俺「上手いなぁ」

見くびってたかなぁ


妹「うん!でも、それだけじゃないんだよ!」

それだけじゃ、ない?

って言うと……まさか歯ギターとか?


妹が言った“それだけじゃない”って言葉については、すぐに分かった


俺の知ってる原曲と、少しだけ違う気がする

ちょっとした違和感がある……

きっとこのが、妹の言う“それだけじゃない”部分なんだろうな



あっという間に1曲の演奏が終わり、やり切った感を出すメンバーの子たち

この後、俺参加するんだけど……大丈夫かな……


なんか、予想よりレベル高くて俺の方せいで台無しになったら申し訳ないな



R「どうでしたか⁉」

え?

あ~、俺に聞いてる?


俺「凄い良かったよ」

どうしよ……俺のレベル低すぎないかな?

もういっその事逃げたいなぁ


R「やったね!」

U「これで参加してもらえるね!」

T「そうね」

Y「本番までに間に合って良かったぁ~」

うん?


俺「あれ?」

もとから参加する方向で話進んでたよね?


妹「おにぃ、忘れてるみたいだし言わなかったけど……」

うん?

忘れてる?

何を?


妹「最初におにぃが提示したのは、今の曲を参加してもいいって言ったんだよ?」

そう、だっけ?


俺「そんな事言ったような……言ってないような……」


R「え⁉参加してくれないんですか⁉」

いや、そうじゃないよ!


俺「いやいや、参加させてもらうよ。今更言うのもアレなんだけど、ホントに俺でいいの?」

実力的に他にも誘える人いたんじゃない?


U「いいんです!」

Y「むしろお兄さんじゃなきゃダメなんです!」

え?

なんで?


俺「俺じゃなきゃ、ダメ?」

そんな事ないだろ


T「いいえ、あるんですよ。だって私たちのリーダーがスカウトした人なんですから」

リーダー?

スカウト?


妹「だから、私はリーダーじゃないってば!」

どっちなんだよ⁉


R「ううん。リーダーだよ!バラバラになってた私たちを集めてまとめてくれたんだから!」

Y「そうだよ!」

U「あのままだったら、私たち全員バンドなんて止めちゃってたから」


俺「な、何があったんだ?」

妹は、顔を俯かせて照れてるのを隠してるけど

お前……なんかやらかしたのか?


T「その話は長くなりますから、まずは練習を再開しませんか?」

そうだった……

妹が何やらかしたのかは少し気になるけど、今は練習の方が先だな


俺「そうだな。よし、それじゃ練習参加させてもらうね。と言っても、俺の歌じゃ不釣り合いっぽいけどな」

完全に油断してたからなぁ

まさかこんなにハイクオリティだとは思ってもみなかったし


Y「それは大丈夫ですよ!」

U「私たちは、お兄さんの歌に負けないように練習してきたんですから!」

え?

何それ……変にプレッシャーかけないでよ

緊張すんじゃん!


妹「おにぃ、歌お」

あ、ああ

とりあえず、やれるだけの事をするか


バンドメンバーの前まで行く

すると、天井からスーーっと吊り下げられたマイクが下りてきた⁉


俺「ハイテクだなぁ」

マイクスタンドとか見当たらないと思ったら、天井にマイクがあったとは……

盲点だった


R「お兄さん、準備はいいですか?」


俺「いつでも良いよ」

南城さん達がワクワクしてるのが見て分かる……

そういえば、俺もステージに立つんだよなぁ


どうしよ、本番で緊張してヘマしたら……


R「1、2、1、2、3、4!」

少し近づいただけなのに、感じる圧が一気に上がった気がする⁉

それだけ、真剣なのか……!


俺の為って言ったら語弊があるけど、そんな気分がしてくる!

なんだろ、少し心が跳ねる感じがする

こんなに気分が高揚したのって初めてかもな……


最っっっ高にワクワクしてる!!



イントロが終わりAメロ

歌が入る

俺自身は、大した事ないって

そう思ってたけど……


皆が認めて、褒めてくれたんだ

今くらいは、天狗になって

疑わず自信過剰なくらいに誇ってもいいよな⁉


俺が歌い出し、隣に来ていた妹が俺の声に合わせてコーラスを入れる


そうか!

さっき感じた違和感は、コレの為のアレンジか!!


本当に、予想を遥かに超えてくるな!!

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