第427話 家庭科室でお昼を

夕飯の後、普通に風呂に入って普通にベッドで横になる

特に変わった事もない、これが日常なんだけど……

やっぱり、自分の家でくつろげるって最高だな


日常に改めて幸せを感じつつ、眠りについた




目覚ましの音で起きると、何の変哲もない朝が来た



普通に制服に着替えて、朝ご飯を食べる


母さんと少し会話をして、朝の一時を過ごす


そこへ、玄関のチャイムが鳴り迎えが来た事を報せる


俺「じゃ、行ってくる」

母「はい、いってらっしゃい」

そういえば妹を見てないけど……どうしたんだろうな

もう学校行ったのかな?


玄関を開けると、そこにはもう見慣れた光景があった

南城「おはよ」


堀北「おはよう」


俺「うん、おはよー」

もう俺にとっては、この2人が迎えに来てくれる事が普通になった

傍から見たら、異常に見えるかもしれないけどな



いつも通り登校し、教室に着くとBとDと軽く挨拶をする

四季島がチラッと1度俺を見るが、特に挨拶を交わすこともない

お互いにアイコンタクトだけで、済ませる距離感だからな


午前中の授業を受けて終えて、昼休みになる


南城「おっ昼~」

堀北「今日はどこで食べる?」

と2人に声をかけられる


俺「あ~、ちょっと待ってね」

仁科さんへ家庭科室を何時から使えるかメッセージを送っておく

少し待てば返事が来ると思って油断していたら、即返信が来た


仁科 もう私はいるからいつでも大丈夫だよ~


へぇ、もう開けてくれてるんだ

なら、いっその事家庭科室で食べるか


俺「それじゃ、場所は家庭科室だな」

弁当を食べるのにも苦労しないしな


堀北「家庭科室?」

南城「豊と約束してたの?」


俺「あ、うん。昨日使わせてほしいってお願いしたんだ」

多めに作って、2人にも分けてあげるかな


俺「2人も来るよね?」

聞くまでもないけどさ


南城「もちろん!」

堀北「ええ」

よし、っと


俺「それじゃ、行こっか」

3人で家庭科室へ移動する




俺が家庭科室へ入ると


仁科「待ってたよー!」

と元気いっぱいな声をかけてくれる


俺「無理言ってごめんね」

ほんと助かったよ


南城「豊、元気だね~」

堀北「そういうトコ、可愛いのよねぇ」

俺の後に続いて南城さんと堀北さんも家庭科室へ入ってくる


仁科「千秋と春香も来てる⁉」

あれ?

ダメだったかな?


堀北「ダメだったかしら?」

南城「2人っきりで、何するつもりだったのかなぁ?」

仁科さんを揶揄って反応を楽しむ2人


仁科「べ、別に⁉ただ一緒にお菓子作ろうと思ってただけだけど⁉」

そうだろうなぁ


堀北「ふふ、そうよね」

うんうん


南城「まさか、お菓子と一緒に自分も……なんて思ってないよね?」

何を言ってるのか、わからないけど

多分良からぬ事なのは、表情と声で分かる


仁科「そんな訳ないでしょ⁉千秋ってばエッチなんだから!!」

うん……2人の間では、意味の分かる話だったんだなぁ

でも、絶対に意味は聞いちゃいけない気がする

藪蛇は勘弁だ


俺「仁科さんも一緒にご飯食べようよ」

早くしないと、作る時間無くなっちゃうし


仁科「うん!」


4人でテーブルを囲み各々の昼飯を広げる

それぞれ大きさの違う弁当箱を開ける


一番大きいのは、もちろん俺だ

これでも一応男子だしな、これくらい食べないと腹が鳴っちゃうと恥ずかしい


次に大きいのは南城さんだ

運動部の助っ人とかしてるからかな?

結構食べるんだよね


3番目の大きさは堀北さんだった

女子の平均的なサイズは、多分これくらいだろうというサイズ

計った事はないけど、教室で弁当を食べてる女子はみんなコレくらいの大きさだった


意外にも一番小さいのは仁科さんだった

お弁当箱が小さい上に、中身もギュウギュウには詰まってない

それで足りるのか不安になるくらいだ



今日の授業の事とか、色々と話しながら

ふと、気になった事を聞いてみた


俺「そういえば、今日は東雲さん来てないんだけど知ってる?」

登校してきてない東雲さんについて、俺は何も知らない

担任が家の『用事で欠席です』とだけ言っていて、それ以上の事は知らなそうだった


南城「ううん、私は知らないけど……春香は?」

堀北「私も聞いてないわ」

そっか、2人とも聞いてないのか


仁科「あ~、多分アレかなぁ」

え?

仁科さん、知ってるの?


俺「何か聞いてるの?」


仁科「あ、うん。今日ね、パーティーあるらしいよ」

パーティー?


俺「何の?」

どういったパーティー?


仁科「さぁ?そこまでは知らないけど、お父さんが主催者ホストだから絶対に出ないとダメなんだって」

あ~……そういえば、東雲さんってお嬢様なんだよなぁ

どうしても、違和感があるんだよな……

まだ、堀北さんの方がお嬢様っぽいんだよね


俺「なんで仁科さんは、その事知ってるの?」

もともと2人とも仲がいいと思ってたけど、予想以上に仲良しだったのかな


仁科「そのパーティーで出すデザートを作ってほしいって依頼されたからね。断ったけど」

え?


俺「断ったの?」

そういう場ってチャンスなんじゃないの?


仁科「え?うん」

さも当たり前のように……


俺「よかったの?」

もしかしたら、スポンサーとか付いたかもしれないのに?


仁科「良いの良いの!だって、私の作りたいモノじゃダメっぽいからね」

どういう事?


俺「何か細かい指定とかがあったの?」

このデザートを作れ的な?


仁科「ううん。指定は招待客ゲストを満足させるモノってだけ」

それが“作りたいモノ”じゃないって事?


俺が首を傾げるいると


仁科「私はね、飽きが来なくて何度でも食べたくなる。そんなお菓子が作りたいんだよ」

あ~、前に聞いたかも


俺「そういえば、そんな事言ってたね」

うん、聞いた覚えがある


仁科「でもパーティーで出すデザートとなると、高級感や1度しか食べれない希少性とか……まぁ、私の作りたいモノから遠いんだよね」

なるほどなぁ


仁科「お手頃な値段で、何度でもいつでも食べれる。それが私の目標だからね」

そっか

ちゃんと、自分の信念があって凄いなぁ


俺「そういう事だったんだね」

納得した!


そんな話しながらでも、もう俺の弁当箱は空になりつつあった




食べ終わったら、謎に評判のいい俺のクッキーを作るかな

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る