第374話 デザートの味は

ティラミスにフォークを入れる


クリームとサクッとしたパイ生地を割りながら一口サイズに切り分ける


スプーンへ乗せて口へ運ぶ

クリームのスッキリした甘さと、サクサクの生地の食感が合わさる


今まで食べた事のないけど、きっとこれが“本格的”なティラミスなんだろうな

美味い!!!

クリームにはレモンが含まれてるっぽいかな?

爽やかな酸味が良い感じに味を調和してる


パイ生地っぽいのは、凄いサクサクしてて軽い食感だ

これ単体では、そこまで美味しくはないだろうけど

このクリームと合わさると、完璧なバランスになるな


ほんと、美味い


もしかしたら、仁科さんに匹敵するくらい美味いんじゃないか?


仁科「う~ん……イマイチかなぁ」

え?

これ、イマイチなの?

って、もうティラミス食べ終わってる⁉


俺「そうなの?」

充分美味しいと思うけど……


仁科「あ、ごめんね。うん、美味しいよ」

普通に……そっか

特別美味しいわけじゃないって事か……


俺「次は何食べるの?」

えっと、なんだっけ?

アフォガードとパンナコッタだっけ?


仁科「次はコレ、アッフォガート」

それがアッフォガート?なんだね

見た目からはどんなスイーツなのか全く分からないんだけど……


俺「それって、どんなお菓子なの?」

何かアイスに液体かかってるけど


仁科「これはね、アイスにエスプレッソをかけたデザートだよ。バリエーション違いで紅茶とかリキュールをかけた物もあるけど。このお店は基本のエスプレッソだね」

えっと……エスプレッソはコーヒーだよね?

アイス乗せコーヒーコーヒーフロートの逆版?


俺「そうなんだ」

あ、食べてる……

アイスの方が多いから、甘いんだよね?

でも、溶けてる混ざったのは少し苦いのかな


仁科「うん、コレは美味しいかな」

お、仁科さんが美味しいって言った!

店主さん自ら、おススメするだけはあるってことか


仁科「後はパンナコッタだね」

白いプリンっぽいのに、赤いソースがかかってるな

食べる瞬間を隣で見つめる

スプーンを入れて弾力あるソレをすくい、赤いソースを少し付けて口に運んだ

ゴクリと、食べてない俺の喉が鳴る

仁科さんは、口の中でしっかりと味わってから飲み込む


仁科「……普通、かな」

そっか

何か表情が硬かったからマズかったのかと思ったけど、気のせいだったか



さて、仁科さん曰く普通に美味しいイマイチなティラミスを完食するか



俺なんかには、これ美味しいと思うんだけどなぁ……


そういえば、東雲さんが頼んだプリンはどんなだったんだ?

仁科さんを挟んだ先にいるから、よく見えなかったんだけど


もう、食べ終わってるな


後で感想でも聞いてみるか





サク、甘~い

もぐもぐ


サク、甘~い

もぐもぐ


数口で食べ終わると、皆も最後の一口を食べた所だった

俺「美味しかったね」

妹「うん!」

南城「そうだね!」

堀北「そうね」

東雲「私もティラミスにすればよかったかなぁ」

感想、聞くまでもなかったな……



店主「どうでしたか?」

食べ終わったのを見計らって店主が感想を聞いてきた


東雲「パスタは美味しかったけど、プリンはイマイチかなって」

ストレートに言い過ぎだよ⁉


店主「ははは、手厳しい」

あ、パスタが美味しかったら良いんだ?

まぁ、それなら仁科さんが何か言っても平気かな


店主「他の皆さんはどうでしたか?」


俺「美味しかったですよ」

妹「はい」

南城「美味しかったです」

堀北「また来たいです」

さて、仁科さんは何言うかなぁ


仁科「2、3良いですか?」

あ~……お菓子の事だと妥協しないもんね


店主「はい、勿論です。どんな忌憚無き意見をくれるのでしょう?」

一切警戒しないまま、そんな……


仁科「アッフォガートは、エスプレッソが少し薄いです」

あ~、アイスと合わさって薄まったのかな?


店主「そうでしょうか?」

そりゃ、認めないよなぁ

店主のおススメだもんな


仁科「絶対に薄いです。アレじゃアイスの甘さが引き立ちきってません」

アイスみたいに冷たい言い方⁉


店主「は、はぁ。それは失礼しました」


仁科「後、ティラミスのクリームの酸味が強いです。最後にパンナコッタはソースが酸っぱいだけで美味しくないです」

怒涛のダメ出し⁉


店主「そ、そうでしょうか……私なりに考えて作っているんですが?」

おお、めげてない⁉


仁科「このレシピを作った時、試作は沢山されましたか?」


店主「そんな事、当たり前じゃないですか」


仁科「試作する度に口を洗いましたか?」


店主「口を、洗う?」


仁科「はい、直前に食べた甘味の影響は案外強く残るんです。だから、一旦口の中の甘味を正常値に戻すんです。じゃないと次に作ったモノから甘味のバランスが崩れやすいんです」


店主「あ、貴方は何なんですか?」


仁科「私、普段からお菓子を作ってるんです。将来はパティシエになるつもりです」


店主「パ、パティシエ。そうですか、道理で……」


仁科「今言った所を直せば、ドルチェだけでも人を呼べるくらいのお店になると思いますよ」

それって、パスタは要らないってこと?


店主「ウチはパスタ専門店なんですよ。なので、ドルチェを目当てに来られても」

困るってか


仁科「そうですか。余計なことでしたね。それじゃ、食べ終わったのでお会計お願いします」







仁科さんVS店主さん

勝負はつかなかったけど……多分、もう来れないなぁ


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